比留間さん、日司連総会への代議員としての出席、質疑おつかれさまでした。
 
比留間さんは、政治資金規正法違反の疑義のみならず、憲法の保障する思想良心の自由の観点から「法人の目的の範囲外」の行為として民事上も違法無効になるという疑義を示された上で、民事上の違法性を疑われるような行為についても避けるべきではないか、という趣旨で質問をされており、この点は私も全く同意するものです。
 
しかし、連合会里村専務理事の答弁(以下「里村答弁」と記します)は、「政治資金規正法違反とは考えていない」という結論にすぎず、民事上の違法性の疑いの点については、何も触れていません。里村答弁には大きな問題があると考えますので、以下、論点を大きく分けて指摘します。
 
1.総論
以前投稿したとおり(2010年6月2日付投稿:後記引用参照)、政治資金規正法違反は刑事罰の対象ですから、「疑わしきは罰せず」の原則が適用され、グレーゾーンは「無罪」となります。政治資金規正法違反でない、というのは、出資法違反ではない、というレベルと同じです。司法書士が「法律家」であるか否かは別としても、少なくとも「法律実務家」であるならば、「処罰には至らないので問題ない」で「検討終わり」ではなく、自らの組織において「憲法の理念を実現する」ためにいかなる実践が必要か、という観点からの検討が必要ではないかと考えます。
 
2.各論
政治資金規正法の観点からも、里村答弁には、次の点で問題があります。
 
(1)「賃貸か否か」はそもそも規正法上、論点とはならない。
 
政治資金規正法において禁止されている、各種団体から政治団体への「寄附」とは、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のもの」全てを含みます(政治資金規正法第4条3項)。事務室の利用形態が賃貸であろうとなかろうと、政治団体の金銭的負担を通常より軽減することは、「財産上の利益の供与」であり、違法です。 
 
(2)「賃料の収益を目的とした賃貸物件ではない」ことは、格安な利用料金設定が利益供与でないことの理由にはならない。
 
日司連会館が「賃料収益目的の物件ではない」ことは、「利益が出るほどの対価を得る必要性がない」という理由付けにはなるかもしれません。確かに、利益まで出なくても、損失が出ない水準の対価を仮に得ているとすれば、日司連は何も経済的負担をしていないことになって、政治団体への経済的利益供与もない、といえる可能性はあるでしょう。
しかし、以前投稿したとおり(2010年3月5日付投稿:後記引用参照)、日司連会館の事務室や会議室等の「収益事業」部分は、毎年3、4千万円の赤字を計上しており、損失が出ない水準の対価は得ていないといえます。赤字分は、日司連会費で補填されていますから、日司連の経済的負担を以て、関連諸団体や政治団体は利益を得ていることになります。なお、日司連会館は収益目的物件としては経済効率が悪すぎるという指摘もありますから、仮に赤字にならない対価設定をすれば、周辺の賃料相場よりはるかに高くなって現実的でない可能性はあります。その場合には、周辺賃料相場を上限として対価設定をするしかないでしょう。
 
(3)「他の関連団体と同じ扱いだから問題ない」のではなく、政治団体を社団法人などの他の関連団体と「同一に優遇している」ことが問題。
 
比留間さんも質問で指摘されているとおり、公嘱協会、国民年金基金、リーガルサポートなどの団体は政治団体ではないので、これらの団体に対し日司連が事務室の利用や会議室の利用に関して経済的な優遇を行っても、政治資金規正法には全く違反しません。里村答弁は、日司政連について他の関連団体と同一の扱いをしていることに触れ、会議室等の利用料については一般より安い「別表1の2」を適用していることを述べていますが、これは「同一に優遇している」ことを自認しているにほかならず、政治資金規正法違反の疑いの根拠とはなっても、同法違反でないことの根拠とはなりえません。
 
(4)「今年度からの値上後の具体的金額」について、検討した結果、社会通念上相当な範囲を逸脱していないと答弁しているが、仮にそうであるとしても、少なくとも値上前の金額については、社会的相当な範囲とはいえないと認識していることになる。少なくとも値上げ前の金額との差額は利益供与に相当する。
 
比留間さんの質問通告書を読んで、「今年度から値上げ」という表現があったので、NSR2の「日司連関係法規集」第6篇(pdfの51ページ)にある「日司連会館管理運営規則」を改めて確認しました。すると、附則に「改正後の別表第2の金額については、平成23年7月1日から施行する」と定められ、「別表第2」が改正されたことが判明しました。
 
改正後の「別表第2」によると、日本司法書士政治連盟の入居している4階事務室(2)の「会館維持協力金(月額)」は「135,000円」となっています。従前は、月額「88,000円」でしたから、月額47,000円、53%の値上げがされたことがわかります。
 
里村答弁は、この値上げ後の「月額135,000円」について、検討した結果、社会通念上相当な範囲を逸脱していない、としています。
日司連会館の収益事業部分が多額の赤字を生じている状況や周辺賃料相場を念頭においた上でも、果たして値上げ後の「月額135,000円」が、利益供与とならない額であるかどうかは私は非常に疑問です。しかし、その点を別としても、53%値上げ後の「月額135,000円」ならば「社会通念上相当な範囲を逸脱していない」という結論が「昨年検討チームを2回開催した上で、検討内容を総務省選挙委員会にお尋ねして情報交換を行い」検討した結果である、というのであれば、値上げ前の「月額88,000円」との差額「月額47,000円」については「社会通念上相当な範囲」との差額といえますから、過去において少なくとも毎月47,000円の利益供与があったことになります。
日司連会館管理運営規則が施行されたのは平成17年7月1日ですから、利益供与の累計は少なくとも6年間分、47,000円×12ヶ月×6年=3,384,000円となるはずです。
これは違法な利益供与であり、日司政連の不当利得ですから、日司連は直ちに不当利得返還請求権を行使すべきです。万一、請求権の放棄などを行えば、その時点で故意による確定的な利益供与として政治資金規正法違反となるのはもちろんのこと、背任という問題も生じる恐れがあります。
 
 
投稿日時: 2010-6-2 13:27:43
引用:
 
別のスレッド(https://www.nsr2.net/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=5786&forum=17&post_id=33369#forumpost33369)でも触れましたが、政治連盟などの政治団体と日司連の関係の問題は、政治資金規正法上だけのものではありません。規正法とは別の次元で、憲法上の「思想・良心(信条)の自由」の問題があります。
 
折りしも、昨日届いた月報司法書士5月号の特集は「憲法の理念を実現するために」でした。
浦部法穂神戸大学名誉教授は、巻頭の論考で、『日本の実務法律家は、人権や憲法というものに積極的な関心をもたない人が多い。』と、司法書士を含む法律実務家の現状を批判された上、『「人権」理念の実現・定着のために法律家が果たすべき役割は、人権や憲法を掲げて何か特別なことをするというよりも、日常業務のなかで、「個人の尊重」を基底とする「正義」の実現ということをつねに意識的に追求し、その「正義」感覚を不断に磨いていくことではないかと思うのである。』と結ばれています。
 
政治資金規正法違反は、刑事罰の対象ですから、「疑わしきは罰せず」が原則です。グレーならば無罪です。しかし、「憲法の理念を実現する」という観点から民事上の問題として考えると、どうでしょうか。
日司連監事の方々には、そうした観点からのご判断を期待したいと思います。
 
 
 
投稿日時:2010-3-5 16:51:40
引用:
 
東京・四ツ谷(新宿区本塩町)の司法書士会館のうち、事務室や会議室、駐車場などの部分の賃貸及び有償貸出については、「収益事業」となるので、日司連の定時総会資料の決算書の一部として収益事業損益計算書が公開されています。(公益法人であっても、収益事業は課税対象となるので、税務上、公益事業とは区別した損益計算が必要です。)
 
平成17年度から20年度までの4年間の収益事業損益決算書は添付のとおりです。
これによると、次のとおり、毎年度3300万円~4200万円の赤字を計上しています。
平成17年度:3327万2140円の赤字
平成18年度:3973万448円の赤字
平成19年度:4232万7410円の赤字
平成20年度:4223万3470円の赤字
 
この赤字の一部は、日司連から政治団体への違法な利益供与(賃料差額の負担)によって生じたものです。
過去の日司政連事務室の賃料が現在と同額以下であるとすれば、過去10年分の利益供与額は、累計1200万円以上になると推計されます。(平成17年以前の日司政連事務室の賃料情報は不明。)
 
ところが、収益事業における大きな赤字は、会館関係の特別会計の予算計上段階で予め見込まれているため、最終的な「会館建設等特別会計」および「会館管理運営合同会計」の収支計算書上では、支出が予算を超えず、黒字になる仕組みになっています。収益事業の赤字分は、会費で補填される仕組みです。つまり、政治団体への違法な利益供与による損失分も、会費により補填されているのです。
 
日司連監査規則第6条2項は、「監査は、資産及び会計の状況に関連しておおむね次の事項について行う。」とし、「(1) 法令、会則及び諸規則等の遵守」と規定しています。政治団体へ違法な利益供与がなされ、それによる損失が会費により補填されている事実は、監査において重大な問題点として指摘されるべき事項となるでしょう。また財務諸表に決算時までの不当利得返還請求権が計上されているかどうかも問題となるでしょう。
 
そもそも、収益事業決算が毎年3000万円を超える赤字を計上をしていること自体、会計上不健全といえ、監事から何らかの指摘があって然るべきですが、なぜか毎年何の指摘もありません。あるいは、会館の収益事業損益決算書は、「そもそも赤字になるように」計上してあるのかもしれませんが、その場合は、課税逃れと疑われる可能性もあります。
 
会館管理運営収益事業損益計算書H17-20.pdf