« 谷川連峰 万太郎山、錦繍の坂道をあるく | トップページ | 谷川連峰 白毛門、錦繍の稜線をあるく »

新聞投稿掲載、尾瀬の「再整備」再考を

Dscf1397

 尾瀬沼で「再整備」の名の下に行われている自然破壊についての拙稿が、2016年10月6日付け東京新聞ミラー欄に載りました。掲載された文章は以下のとおりです(表題は新聞社が付けました)。いま以上の破壊が進む前に工事が止むよう願ってやみません。

  ★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

  尾瀬の「再整備」再考を  2016年10月6日付け東京新聞ミラー欄(朝刊5面)

 先月中旬、三時間歩いて尾瀬沼に行くと、なんと重機が入って森を伐採しているではないか。環境省のビジターセンター建て替えなど「再整備」の工事だという。
 現在、尾瀬を訪れる人の約六割が群馬県側の鳩待峠に集中している。福島県側の入山者は原発事故の影響か、減少傾向にある。そこで、福島県側へ登山者を分散増加させようと、森を切り開き造成した場所にセンターを新築する。現センターは取り壊し、跡地に中央広場を整備、新たに湖畔にテラスを設けるなどの計画だ。外国人旅行者も当て込み東京五輪前の完成を目指すという。
 しかし、尾瀬の魅力は手付かずの自然にこそある。ハコモノ整備で人が来るだろうか。伐採された森は新緑や黄葉が美しく、尾瀬を代表する景色の一部だった。二次林だが、野鳥や小動物のすみかでもあった。計画どおり工事が続けば破壊はさらに進むだろう。
 一方で、尾瀬沼南岸や群馬県側の大清水から尾瀬沼への登山道は修繕が追いついていない。到る所で木道は朽ち、階段の脱落も激しく、危険で非常に歩きづらい。荒天時に避難できた沼尻休憩所も焼失したままだ。人を呼ぶには登山者の安全にかかわる施設を維持・整備するのが先ではないのか。
 尾瀬の今の姿は、先人たちが命を賭して守り継いできたものだ。環境省が三年前に定めた尾瀬国立公園管理計画書では、管理の基本方針として「自然景観の保全を優先事項として、現在の規模を超える利用のための施設整備は原則行わない」と明記されている。大きな現状変更は許しがたい。工事を中断し、計画の再考を求めたい。

  ★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

160911img_6485
 写真は2016年9月11日の再整備工事中の尾瀬沼東岸での一場面です。この時点で、むき出しになっている土壌の流出対策は何も施されていませんでした。周囲の湿原や尾瀬沼への影響も懸念されます。

【関連記事】 尾瀬にて草紅葉とユンボと (第903号)

(第906号)

|

« 谷川連峰 万太郎山、錦繍の坂道をあるく | トップページ | 谷川連峰 白毛門、錦繍の稜線をあるく »

コメント

工事が始まってずいぶんたつので整地も終わり基礎工事にはいっているかもしれませんね・・・そうなると次の遊歩道整備でしょうか、手作業ではやらないでしょうからユンボが入るスペースも余計に伐採されるかもしれません。別館前のダケカンバをヘリの荷揚げ作業に邪魔だというだけで切ったようですから・・・ 

投稿: てばまる | 2016年10月 9日 (日) 16時56分

鉄まんアトムさん、こんにちは。
記事の内容さすがです、限られた字数のなかで的確に問題点を指摘されていてお見事です。
新聞に取り上げられたということは、それだけ説得力があるということ。中止に向かう新たな新たなパワーが生まれるのを期待したいです。
ダメ元で、私も書いてみようかな。

投稿: youic | 2016年10月 9日 (日) 16時57分

てばまるさん、貴ブログで拙稿をご紹介いただき、ありがとうございます。

現地を見て感じたのは、作業に優しさや自然への慈しみが全く感じられないことです。影響を最小限に留めようという思想も見受けられません。
長蔵小屋別館入口のダケカンバが切られたのはショックです。あの大きさになるまで何年かかると思っているのか・・・きっと無造作に作業したのでしょう、周りも踏み荒らされていました。

投稿: 鉄まんアトム | 2016年10月 9日 (日) 20時04分

youicさん、拙稿をお読み下さり、ありがとうございます。
東京新聞ミラー欄は上限660字あるので主要な問題点は盛り込めました。ただ、これが伝えるべきすべてではありませんね。
福島県側の入山者減少は本当に原発事故の風評被害によるのか、その克服に今般の工事が不可欠なのか、ビジターセンター移転新築の手続きは適正なのか、などなど疑問だらけです。いろんな立場から異論を上げるのは大事だと思います。

投稿: 鉄まんアトム | 2016年10月 9日 (日) 20時04分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 谷川連峰 万太郎山、錦繍の坂道をあるく | トップページ | 谷川連峰 白毛門、錦繍の稜線をあるく »