« 少しだけ川越まつりを楽しむ | トップページ | 川越夕景(38) »

旧樺太の戸籍証明について

 弊ブログ、いちおう司法書士の日記を副題に据えているので、久しぶりに司法書士お仕事の話題を書いてみたいと思います。ネタは、相続を原因とする所有権移転登記(相続登記)に関してです。なお、珍しい事案事例ではありません。

     *   *   *

 相続登記を申請する場合、原則として、亡くなった人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等を添付しなければなりません。では、終戦時に樺太や千島列島を本籍としていた人たちの戸籍はどうなっているのでしょう――。
 結論から言うと、旧樺太分は外務省外地整理室が、千島列島分は釧路地方法務局根室支局が、それぞれ保管を続けていて、戸籍謄本に準じた証明書の取り寄せが可能です(手数料は無料)。ただし、戦乱のさなかに簿冊を持ち出した関係上、保管されているものはごく一部に過ぎません。旧樺太については特定6か村分の一部しか残されていません

旧樺太の戸籍に関する証明について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/sosiki/gaichi/kosekisyoumei.html

北方領土の戸籍などに関する証明について
http://houmukyoku.moj.go.jp/kushiro/static/kouhuseikyuusyohtmljtd.htm

 というわけで、旧樺太のうち保管6か村分以外については、必ず「保管していない旨の証明」になります
 ですが、請求方法は一律で、請求書には「請求者と被請求者との親族関係が明らかになる戸籍謄本」及び「旧樺太に戸籍が置かれていたことが記載されている戸籍謄本」「請求日より半年以内に発行された原本」を添えなければなりません。通常の戸籍請求に比べると、かなり厳格で面倒なことを求められているのです。

 で、保管6か村分以外の証明書はどうなっているかというと、「先般、貴殿より請求のありました○○△△を戸主又は戸籍の筆頭者とする旧樺太の戸籍簿等の原本は、外務省に保管されていません」と書かれています。
 しかし、ちょっと待った、これって、ものすごく無駄な事務作業ではないでしょうか。だって、本籍地が保管6か村でなければ、戸主○○△△に関係なく、そもそも保管されていないのが明らかなのですから。もっと簡便な請求方法と事実証明で済むはずだし、済ますべきなのです。

     *   *   *

 で、話を戻して、この場合の相続登記の申請には、この外務省発行の「保管していない旨の証明書」に加えて、相続人全員による「他に相続人は存在しない旨の上申書」も添えなければなりません。
 だけれども、外務省のホームページでは、保管している6か村を明記して公表しています。登記官なら誰でも知っている事実です。ならば、いっそ、法務省がこの場合の「保管していない旨の証明書」は添付不要と扱ってくれさえすれば、関係するすべての当事者(とくに外務省)の負担軽減に寄与するのではないでしょうか。行政の無駄を省くというのは、こういうのに手を付けないと意味がない、と私は思います。

(第641号)

|

« 少しだけ川越まつりを楽しむ | トップページ | 川越夕景(38) »

コメント

ブログ興味深く読ませていただきました。
本文中の「本籍地が保管6か村でなければ、戸主○○△△に関係なく、そもそも何一つ保管されていないのが明らかなのですから」につきましては、平成18年6月19日付け北海道新聞をご参照いただければ、戸主名を特定して証明してもらう必要があることがお分かりいただけると思います。
旧樺太の豊原市及び落合町の日本人戸籍簿2万人分がサハリンで発見されたという記事です(その後ロシアから日本に何らかの形で情報提供された可能性が高いと思われます)。
何らご参考まで。

投稿: 旧樺太戸籍研究者 | 2013年11月22日 (金) 16時47分

 旧樺太戸籍研究者さん、はじめまして。情報提供ありがとうございます。
 ご指摘の新聞記事は直近のものでないため容易に確認できませんが、同年の同様のニュースは、共同通信の下記HPで確認できますね。

*数万人の日本人戸籍簿発見 サハリンの公文書館 2006/11/15 01:16 【共同通信】
 http://www.47news.jp/CN/200611/CN2006111501000196.html

 ただ、現在でも、外務省が戸籍簿の保管を公表しているのは、あくまで、従前どおり「6ケ村の一部」に限っています。この「6ケ村の一部」以外については、すべて「保管していない証明」での対応です。
 報道で発見されたとされる戸籍簿について、「その後ロシアから日本に何らかの形で情報提供された」事実については、現時点において、外務省が公表していませんし、裏付けもとれませんので、推測は差し控えたいと存じます。

投稿: 鉄まんアトム | 2013年11月22日 (金) 17時55分

昨年、豊原市戸籍簿の写しを外務省から入手した人がいます。その証明書には「なお、戸(除)籍複写本の保管がありましたので、その写しを参考までに別添(全○ページ)送付いたします(注:本文書は原本を複写したものではありません)。」と追記されていたそうです。公表はされていませんが、外務省(外地整理室)に電話で照会すると親切に教えてくれます。

投稿: 旧樺太戸籍研究者 | 2013年11月22日 (金) 22時47分

旧樺太戸籍研究者さん
本稿で取り上げたのは、不動産登記手続きにおける添付書面としての、「戸籍情報」そのものではなく、「戸籍簿の原本保管」の有無に左右される「行政証明」についてです。原本の保管がなければ、行政証明としては、あくまで「保管していない旨の証明書」になるはずです。

ところで、仮にご指摘の内容が事実だとしても、当該入手の複写本と2006年発見の戸籍簿との関係性についての確認ができませんし、本稿の論点とは別のものになってしまいますので、言及は差し控えたいと存じます。(なお、ご指摘の内容どおりだとして、冒頭部分を正確に書くとすれば、お知り合いの方が昨年入手したとされるものは、「戸籍簿の写し」ではなく、「戸籍簿(と思われるものの)の写しの写し」ですね。)

投稿: 鉄まんアトム | 2013年11月24日 (日) 16時37分

鉄まんアトム様

1.サハリン公文書館に保管してある日本人の戸籍簿返還につきましては、発見された直後に社会党の五十嵐議員(当時)が国会で取り上げております。その複写本がロシアから返還され現在外務省に保管されているものと思われます。

2.行政証明に関しましては、昭和31年12月4日戸籍を所掌する法務省民事局長から全国の法務局長宛に通達(民事甲第2742号「樺太・・・に本籍を有していたものの戸籍原本等の保管について」)が出されています。この通達に戸籍原本の一部が現存する5ケ村が特定されています(富内村はその後発見)ので、これ以外の旧樺太市町村に本籍を有している場合には「戸籍が保管されていない証明」は必要ないのではないでしょうか(相続登記を受理する法務省が戸籍簿の原本が存在しないことを認めているため)。

3.また、外務省のホームページに旧樺太47市町村のうち戸籍簿原本を保管していない市町村名も明示して公表しています。その写しを添付して相続登記が問題なく行われた例もあると聞いております。

投稿: 旧樺太戸籍研究者 | 2013年11月28日 (木) 17時22分

旧樺太戸籍研究者さん
重ねての情報提供にまずは御礼申し上げます。

ところで、本稿の事案で「戸籍が保管されていない証明」は不要ではないか、とのご意見につきましては、消極に解します。不動産登記において当該証明書を添付不要とする法令又は通達が不見当ですから、原則どおり、取得可能な証明書類はすべて取得して申請するほかない、と考えられるからです。

そのほかのご提供の情報については、通達を含めて当方にて確認できない事柄が多いため、コメントは差し控えたく存じます。何とぞご容赦下さいませ。

投稿: 鉄まんアトム | 2013年11月29日 (金) 09時33分

確認させてください。
鉄まんアトムさんは、旧樺太地域に本籍があった人が亡くなった場合の相続登記に当たり、外務省から「保管していない」旨の証明を取得する必要がある実務の運用については、止むを得ない(登記官が要求するから)と考えているが、外務省の要求する内容が煩雑というか、必要ないものまで要求していると批判されているのでしょうか。
だとしたら、どういう要求が過剰と考えられるのでしょうか。
なお、(旧樺太戸籍研究者さんが言われたように)登記官によっては、証明書がなくても、外務省のHPのコピーを見せただけで諒解する人もいるんでしょうか?  

投稿: 宇田新二 | 2013年12月12日 (木) 12時26分

 宇田新二さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

 宇田新二さんのコメントは、以下の3点についてのお尋ねであると受け止めました。
【1】「外務省の要求する内容が煩雑というか、必要ないものまで要求していると批判されているのでしょうか」とのお尋ね
【2】「どういう要求が過剰と考えられるのでしょうか」とのお尋ね(要求が過剰だと私が批判していることを前提にて)
【3】「登記官によっては、証明書がなくても、外務省のHPのコピーを見せただけで諒解する人もいるんでしょうか?」とのお尋ね

 よって、以上を前提に、以下、これらにお答え致します。
 【1】については、そのような批判はしておりません。記事本文で『通常の戸籍請求に比べると、かなり厳格で面倒なことを求められている』と書きましたが、これは批判ではなく感想に過ぎません。
 【2】については、上記のとおり、前提を欠いているのでお答え致しかねます。そもそも私は、記事本文で何かが過剰だとは申し上げておりません。省ける無駄があるのではないですか、との意見です。
 【3】については、すでに『通達を含めて当方にて確認できない』と申し上げております(11月29日09時33分コメント参照)ので、お答え致しかねますこと、ご理解下さい。

 なお、お尋ね【1】の前提として、宇田新二さんは、私が「外務省から「保管していない」旨の証明を取得する必要がある実務の運用については、止むを得ない(登記官が要求するから)と考えている」とお読み取りのようです。
 けれども、私は、記事本文において「登記官が要求するからやむを得ない」との見地に立った話は全くしておりませんので、この時点で前提の取り違えが生じているようにお見受けします。趣旨は最後の段落のとおりです。念のため、申し添えます。

 以上、ご確認いただければ幸いです。

投稿: 鉄まんアトム | 2013年12月12日 (木) 17時27分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 少しだけ川越まつりを楽しむ | トップページ | 川越夕景(38) »