沢音ゆかしき旧沼田街道をあるく
福島県檜枝岐村から尾瀬沼に行くには、七入(なないり)から御池(みいけ)を経て、沼山峠の直下まで通じるバスを利用するのが一般的です。車道終点のバス停から歩いて1時間で尾瀬沼に達せられます。
この車道が開通するまでは、七入が尾瀬の入山口で、道行沢(みちぎさわ)沿いの旧沼田街道を歩いていました。沼田と会津若松を結んで古くから人々が行き交っていた道でもあります。せっかく檜枝岐に回っているので、今回初めてこの古道を通って下山してみました。
▲沼山峠展望台から尾瀬沼を俯瞰。かつては大江湿原をも一望できた場所ですけれども、手前の針葉樹の伸長により年々展望は悪くなる一方です。近いうち完全に見えなくなるでしょうが、こればかりは仕方ありません。
▲旧沼田街道は、沼山峠休憩所と公衆トイレの建物の間から下っていきます。沼山峠から七入までは標高差約600m、道行沢経由だと5.6kmです。
▲沼山峠バス停からおよそ30分で抱返ノ滝(だきかえりのたき)に至ります。三条ノ滝、平滑ノ滝、そして渋沢大滝に次ぐ尾瀬第4の滝で、雪解けの6月は水量豊か、新緑に包まれて何とも気持ちの良いところでした。(※倒木等で写真的に美しくないのは割り引いて見てください。)
▲抱返ノ滝から10分弱で道行沢を初めて渡ります。七入に下る場合は最初が「五番橋」で以後5回渡り返していきます。
▲道は沢に沿っていて沢音ゆかしき渓流歩きが続きます。熊除けの鈴は沢音にかき消され、たぶん気休め程度の意味合いしかありません。
▲尾瀬にあるたくさんの道の中で、これほど沢に近く、距離が長く、そして美しい渓流歩きのできる道はないと思います。紅葉の時期はさぞかし素晴らしいプロムナードになることでしょう。
▲一番橋を越えると道行沢と別れ、次は赤法華沢橋で、ようやく沢音が静かになる頃、突如見晴らしの利く高台に出ます。
▲赤法華といわれる広場のようなところを歩いて行くと、下る階段の先に再び大きな沢が見えてきます。硫黄沢といわれる沢で、橋を渡るとき、ほんのり硫黄の香りを感じました。
▲硫黄沢橋を渡ると車も走れるカラマツの林道が現れます。ここは七入山荘の裏手でゴールはもう間近です。
▲七入バス停に到着して旧沼田街道歩きも無事終了。バスに乗って車を置いてある御池に向かいます。バスの本数が少ないので、ご利用は計画的に。
▲七入から御池はバスで約20分。ちょうど昼時で「山の駅御池」の食堂にてオススメの「けんちんきのこそば」(800円也)を頂きました。全然期待しなかったのですが、予想外に美味でした。
なお、このコースを歩く人はほとんどいないようです。途中1組2人とすれ違ったのみで、他はニョロニョロ数匹と出会っただけです。下り2時間、登り3時間、ぬかるみも多く見受けられ、抜け道もありませんから、軽い気持ちで入り込むのは全くオススメできません。申し添えます。
*撮影日/2013年6月16・17日 尾瀬国立公園、道行沢沿いの旧沼田街道にて
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<おまけ>
かつて、旧沼田街道を車道でつなぐ計画がありました。福島県側は御池から沼山峠下までが完成し、群馬県側も三平峠近くまで工事が進みましたが、そこで計画は中止されました。現在、群馬福島両県を車で直接行き来することはできません。
群馬県側の大清水から福島県側の七入までは約16kmで歩いて7時間。一方で同じ区間を車で往来するには約200km、高速道路を使っても5時間はかかります。このはるかさこそが檜枝岐の魅力なんじゃないかと思います。
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以上盛り沢山になってしまいましたので、尾瀬沼東岸の様子、アプローチに使った国道352号線その他少々については、また日を改めて紹介します。
【今回の尾瀬に関する記事】
オサバグサ咲く帝釈山田代山へ(第607号)
沼山峠を越えて尾瀬沼へ(第609号)
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(第608号)
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コメント
旧沼田街道は気になっているルートですが、写真を見ると、沢沿いの道はなかなか気持ちがよさそうですね。ニョロニョロやぬかるみはあまりうれしくありませんが・・・。
投稿: Suekichi | 2013年6月23日 (日) 20時32分
Suekichiさん、こんにちは。
旧沼田街道は、ぜひとも紅葉期に、大清水~七入を歩きたいと思っています。尾瀬沼を挟んで十二曲がりと道行沢と、上級の錦繍プロムナードが楽しめるでしょう(ただし、どちらも登りで歩くにはそれ相応に大変ですが)。
ぬかるみは、雨上がり後とかでなければ、スパッツ無しで歩けるレベルでした。調子に乗って早足で下っていて、逃げ遅れのニョロニョロを踏みそうになったのが今回最大の危機だったと思います。
投稿: 鉄まんアトム | 2013年6月24日 (月) 12時55分
七入山荘は私の定宿なので帝釈山、会津駒ヶ岳、11月には七入から旧沼田街道経由で長蔵小屋も歩きました。七入山荘には山川せいこうさんの写真展示は必見です、私の名前を言えば案内してもらえます。
旧沼田街道には熊目撃情報はありませんので心配ありません、紅葉時もお勧めです。
投稿: pulsar | 2013年6月24日 (月) 21時25分
七入山荘を通りすがりに見ましたが、森の中のお宿で雰囲気に惹かれました。
山川せいこうさんの「路傍の小さい花のシベの花粉の一粒をマクロレンズで写し止めると言ったような撮影スタイルは私にはどうも合っていない」のは私も同じで、興味を持ちました。教えて頂き、ありがとうございます。
旧沼田街道は熊の心配ないのですか?? いかにも“♪ある日森の中くまさんに出会っ”てしまうような気配でしたので、歩いていてニョロニョロたちに次いで気掛かりでした。
投稿: 鉄まんアトム | 2013年6月25日 (火) 12時32分