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ふたたび、埼玉県立特別支援学校について報道

13/3/7追記 【続報】みたび、埼玉県立特別支援学校について報道(第585号)

 東日本大震災が起こる直前の2011年3月はじめ、障害のある二男(当時6歳)について、県立特別支援学校への入学を断念し、就学猶予のうえ市立保育所で保育を受けることになった事実がテレビや新聞で報道されました(→第433号参照)。入学断念の一因となった問題については、“県「改善へ向け対応」”とも報道されたのですが、1年かけて事態は正反対に向かいました。これが異例だとして新聞2紙に再び取り上げられましたので、紹介します。

 まずは、東京新聞から――。
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20120306/CK2012030602000054.html

川越の障害児 また就学猶予 異例2年連続
2012年3月6日東京新聞朝刊24面(埼玉中央版)


 重度障害で鼻から挿入したチューブで栄養・水分補給が必要な川越市の七歳男児について、同市教育委員会は保護者の申請に基づき二年連続で就学義務猶予を決定し、男児は新年度も市立保育所で保育を受けることが決まった。学齢期の児童が二年連続で就学猶予となるのは異例。
 父親の司法書士広田博志さん(40)によると、就学を勧められている県立特別支援学校ではチューブが外れた場合に再挿入を行わないため、両親のいずれかの学校待機を求められ「夫婦ともフルタイムで働いており、学校待機は無理」と就学猶予を申請したという。
 県教育局では特別支援学校での医療的ケアのガイドラインで、鼻から管を通す「経鼻経管栄養」のチューブについて「再挿入は行わない」としている。広田さんは「特別支援学校には医師の指示で再挿入ができる看護師がいるのに、医療の素人の親を待機させて再挿入をさせようというのはおかしい」と批判。同局特別支援教育課は「ガイドラインについては検討を行ったが、再挿入を行わないことに変化はない。引き続き就学について相談を続けていきたい」としている。 (中里宏)

 つぎに、埼玉新聞――。
 http://www.saitama-np.co.jp/news03/07/03.html

2年連続保育通園へ 川越の重度身障児
2012年3月7日埼玉新聞18面


 川越市の共稼ぎ夫婦が身体に障害のある男児(7)の県立特別支援学校への入学を、県から常時親の付き添いを求められたため断念し、就学義務猶予により市立保育園に通園させている問題で、男児は2012年度も就学義務猶予が認められ、同保育園に通園することが6日分かった。県によると、特別支援学校への入学を希望する障害児が2年連続で就学猶予措置となるのは県内では異例という。 (毛利伸一)

 男児は同市、司法書士広田博志さん(41)の次男。先天性の脳性まひによる重度の身体障害で、1日3、4回、鼻からチューブを入れての水分や栄養補給が必要。保育園では看護師がチューブの再挿入などを行っているが、県教委のガイドラインでは、特別支援学校の看護師に緊急時以外のチューブ再挿入を認めていない。
(*1)
 広田さんは次男の就学年次から、特別支援学校の看護師によるチューブの再挿入を県側に要望しているが、双方の意見は平行線のまま。次男が2年連続で保育園に通園することについて、広田さんは「保育園でできるケアが、なぜ県立学校でできないのか分からない」と訴えている。
 広田さんによると、昨年の就学時に特別支援学校への入学を希望。しかし、就学相談で毎日の付き添いを求められた。夫婦とも仕事を辞めるわけにはいかず、入学を断念し、市教委に就学義務の猶予措置を申請。市立保育園で1年間、保育することが決まった。
 その後も、広田さんは県に「チューブの再挿入の実施」などを要望しているが、県は「重症障害児は一人一人の障害状態の差が大きく、栄養チューブ挿入の過誤や位置異常、姿勢の不適切などに起因するトラブルなどが生じやすい」などを理由に難色を示しているという。
 県特別支援教育課は「ガイドラインは現行通りだが、昨年、対象児童を保育園で見学した際、チューブを抜いて再挿入するような場面は見られなかった。こうした状況を前提すれば、親の付き添いは必要なくなる。今後も体験就学などをしながら、両親と相談したい」と話している。

 「改善へ向け対応」するはずだったのが、1年後に「ガイドラインは現行通り」「再挿入を行わないことに変化はない」とはどういうつもりなのでしょう。その前提で「今後も相談したい」を口にするのは、“ちからづくで捻じ伏せてやる”も同然です。実際この1年間そんな対応の連続でしたから。……恐ろしい人たちです。

 埼玉県教育委員会(県教育局)は、県立特別支援学校の運営にあたり、要約するに「一人一人の障害の状態の差が大きく特別な対応が必要となるが、一人一人に特別な対応をしていくことは困難である」と主張しています(→第505号参照)。
 だったら、いったい何のため誰のための特別支援学校なのでしょう。県の特別支援学校が一人一人に特別な対応をしないせいで、市の小学校が一人一人に特別な対応をするしかないというのなら、特別支援学校なんぞ隔離のためのハコモノに過ぎず存在意義が全くありません。埼玉県の特別支援学校運営は、現行の医事法制や障害者基本法に照らし違法又は不当です。近いうちに必ずや破綻するでしょう。

 法律をよりどころとせず、何もしない言い訳を捻り出そうと「精一杯努力」(*2)して「精一杯知恵を出す」(*3)ようなスカタン行政は、どうか私たちを最後にもう止めにして下さい。

          *          *          *

(*1) 県のガイドラインでは、緊急時には親を呼び出すのであって、県教委は緊急時でさえ看護師によるチューブ再挿入を認めていません(ガイドラインp38、p46)。 →第361号参照
(*2) 埼玉県教育局特別支援教育課長2011年9月22日付け書簡「我々も解決に向けて精一杯努力いたします」
(*3) 同課長2011年10月14日付け書簡「我々としましては…解決に向けて精一杯知恵を出していきたい」 ※以上2件を含む同課長による書簡は、第500号「埼玉県教育委員会が障害児の親に求める“ご協力”とは」において、すべて公開しております。

(第510号)

【追加関連記事】 障害児の親に“配慮”を要求する埼玉県教育委員会(第532号) 

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コメント

 県教育局における本件についての責任者2名が、問題をより悪化させた状態のままで、2012年4月1日付けにて異動しました。新聞報道より引用します。

・佐藤裕之 氏
(旧)県立学校部特別支援教育課長→(新)市町村支援部スポーツ振興課長

・金子功 氏
(旧)県立学校部特別支援教育課主幹兼主任指導主事→(新)県立学校部県立学校人事課主幹兼主任管理主事

投稿: 鉄まんアトム | 2012年4月 2日 (月) 11時54分

 県教育局における本件についての関与者3名の2014年4月1日付け異動情報を、新聞報道より引用しておきます。

・宇田川和久 氏
(旧)県立学校部特別支援教育課主席指導主事→(新)県立学校部特別支援教育課長

・佐藤裕之 氏
(旧)市町村支援部スポーツ振興課長→(新)市町村支援部生涯学習文化財課長

・炭谷渉 氏
(旧)県立学校部特別支援教育課指導主事→(新)毛呂山特別支援学校教頭

投稿: 鉄まんアトム | 2014年4月14日 (月) 11時18分

 県教育局における本件についての関与者1名の2016年4月1日付け異動情報を、新聞報道より引用しておきます。

・金子功 氏
(旧)県立学校部県立学校人事課主幹兼主任管理主事→(新)特別支援学校さいたま桜高等学園校長

 なお、同日をもって、私が有していた、彼らの不法行為による損害賠償の請求権が、時効によって消滅したとする一つの考え方が成り立ち得ます。また、同日より施行された障害者差別解消法により、彼らがしてきたような教育行政が今後は明確に禁止されるものと受け止めています。これをもって一区切り付けたいと思います。

投稿: 鉄まんアトム | 2016年4月 4日 (月) 16時30分

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