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埼玉県教育委員会が障害児の親に求める“ご協力”とは

 私たち夫婦が仕事を続けながら、2012年4月で小学2年の年齢になる二男を県立特別支援学校に就学させるには、a)配置済みの看護師による医療的ケアの実施、b)放課後や夏休みなどの学童保育の整備、c)医療的ケアを要する児童はスクールバスに乗せない送迎方法の改善、という3つの課題(=3課題)の解消が最低限必要です。
 埼玉県教育委員会は、3課題の解消に向けて、私たち夫婦に協力を求めること(=“ご協力”)の具体的内容とは、「話し合いを継続して進めさせていただきたい、また個別の課題の解決に向けて一緒に考えましょう」だと述べていました(2011年8月17日付け書簡)。※ここまでの経緯と詳細は、第467号「埼玉県教育委員会の言動におもうこと」をご覧下さい。

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 しかし、私と県教委が会ったのは2011年7月13日が最後。それから本日(※2012年1月6日)まで、話し合いの席は設けられていません。8月に願い出た2012年度の就学猶予の結論も出ないまま師走を迎るや、県教委から、3課題への対応をすべて保護者に求める書簡が送られてきました。県教委が求める“ご協力”の具体的内容(本音)の一部が明記されていますので、ここに全文を公表します。8月の書簡と比べてみてください。

 2011年11月30日付け書簡 (pdf:139.1KB)

 私たち夫婦は、就労維持のため、県教委に対し、県教委が求めている“ご協力”の要請には応じられないと何度も伝えてきました。それなのに、依然として同じ内容の協力要請を繰り返すということは、もはや「協力」ではなく、保護者に断る自由のない「強制」ではないのでしょうか。そこで、私は、県教委に、以下2項目のお尋ねをしました。
 (1)11月30日付けの書簡に書かれていた様々な協力依頼事項のすべては、任意ですか、それとも強制(保護者の義務)ですか?
 (2)上記(1)の答えが強制ではないという場合、11月30日付けの書簡に書かれていた様々な協力依頼事項のすべてに保護者が対応できないとしたら、保護者に協力依頼していた事項は、誰が誰の責任で措置するのか具体的に教えてください。

 上記2項目のお尋ねをした手紙も、全文を公表しておきます。
 2011年12月6日付け手紙 (pdf:103.7KB)

 このお尋ねに対して、本日現在、お答えいただいておりません。すぐに任意だと答えられないのですから、やはり事実上の強制なのでしょう。

 特別支援学校の英訳は、「Special support school」です。supportをneedsに代える場合もあります。どちらにしても、支援を必要としている人や物に対し、必要とする物や人を提供して支えるという意味があります。
 なのに、県教委は、支援を必要としている人に対し、逆に支援をするよう求めているのです。障害のある子どもを特別支援学校に行かせる親に、普通学校に行かせる以上の負担を求めてどうするんだ、保育所でできるケアがなぜ特別支援学校ではできないんだ、何のための特別支援学校なんだ、という思いが私には強くあります。これは見過ごせない社会問題です。

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 なお、2011年中に県教委と私との間でやりとりされた文書(メール及び個人情報開示請求関連を除く)も、ここにすべて公開することにします。(※便宜、私が差し出した文書を「手紙」、県教委が発した文書を「書簡」と区別しました。)

7月14日付け手紙 (pdf:81.1KB)
 協力依頼事項の明文化を求める~7月28日付け書簡 (pdf:62.5KB)
8月1日付け手紙 (pdf:68.0KB)
 再度、協力依頼事項の明文化を求める~8月17日付け書簡 (pdf:112.9KB)
8月22日付け手紙 (pdf:104.5KB)
 3課題解消に向けた県対応の事実関係を尋ねる~9月22日付け書簡 (pdf:140.0KB)
9月27日付け手紙 (pdf:142.2KB)
 再度、3課題への県対応を尋ね、情報開示を求める~10月14日付け書簡 (pdf:64.0KB)
10月20日付け手紙 (pdf:67.2KB)
 質問等に一切答えないので、回答意思を尋ねる~11月10日付け書簡 (pdf:58.5KB)
11月14日付け手紙 (pdf:113.3KB)
 不誠実対応に抗議し、法律に沿った対応を求める~11月30日付け書簡 (pdf:139.1KB)
12月6日付け手紙 (pdf:103.7KB)
 1130書簡での協力依頼の任意性や法的根拠を尋ねる~ ※返事なし(=無視)

 こうした県教委の書簡から、県教委は、県教委の法律上の義務である「必要な支援」や「合理的配慮」を提供できていると読み取れるでしょうか――。私は、法律専門職でもある当事者として、自らはもちろん、すべての障害のある児童及びその保護者のために、行政には法律に沿った対応を引き続き求めていきます。その決意は不退転です。

【参考】
特別支援学校等における医療的ケアの今後の対応について(通知) ※文科省HPに移動
(平成23年12月20日付け23文科初第1344号 文部科学省初等中等教育局長通知)

【関連記事】
埼玉県立の特別支援学校に関する報道の整理(第433号)
埼玉県教育委員会の言動におもうこと(第467号)

【追加関連記事】
埼玉県で行っている医療的ケアの概念?ナニソレ(第505号)
障害児の親に“配慮”を要求する埼玉県教育委員会(第532号)

(第500号)

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コメント

本記事に関し、重要情報を追記しました。記事の末尾をご参照下さい。

なお、本記事で取り上げた「3課題」については、本日現在においても、依然として状況は何も変わっていません(変わる見込みもありません)。

投稿: 広田博志 | 2012年1月20日 (金) 17時38分

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