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改正障害者基本法の成立におもうこと

 障害者施策の基本原則を定めた障害者基本法の改正案が2011年7月29日、参院本会議において全会一致で可決、成立しました。同法の改正は、06年に国連総会で採択された障害者権利条約(以下、条約)の批准に必要な国内法整備の第一歩、と位置づけられています。

 しかし、成立した改正法は、各府省の意向(=抵抗)を受けて、10年6月の閣議決定「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」や、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議が同年12月に取りまとめた「障害者制度改革推進のための第二次意見」から大きく後退。現行基本法から前進しつつも、条約が示す国際標準には到底届かぬ内容に留まってしまいました。

 端的に示すとすれば、障害者の権利保障について、条約では「他の者と平等に」と規定しているのに対し、本改正法では「可能な限り」と規定してしまったことです。

 日本国憲法が障害者を含むすべての国民に保障している基本的人権は、「侵すことのできない永久の権利」であって、「可能な限り」において保障されるといったものではありません。今回各府省が示した、「現下の財政状況や人材養成の現状を踏まえた現実的な議論」の帰趨に左右されるような不安定で偏狭的なものでもありません。ましてや、障害者だけに「国民的な合意」を必要とすることなど絶対にあり得ません。障害の有無に関係なく、誰もが「他の者と平等に」享有している普遍的なものなのです。

 条約では、「すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進すること」が締結国の義務とされています。そのために、「条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること」や、「条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの条約に従って行動すること」は、条約に署名した日本の国際公約でもあります(条約4条外務省仮訳、ウィーン条約法条約18条を参照)。

 今後の課題は、本改正法に基づき内閣府に新設される「障害者政策委員会」に引き継がれます。基本法の再度の見直し、障害者自立支援法に代わる「障害者総合福祉法」「障害者差別禁止法」(いずれも仮称)づくりなど、重要案件が山積もりです。
 各府省が四の五の言っても、いずれはすべて、条約に沿った政策を実施していかなければなりません。今回のように各府省の“できない言い訳”を真に受けていたら、いつになっても条約批准は実現しません。各府省の官僚たちにはこの現実を受け止めてもらい、これ以上問題を先送りせず、条約に沿った国内環境を1日も早く整えていってほしいと希求しています。障害者とその家族は、命を削りながら、その実現を待っているのです。

【関連記事】 障害者施策における“合理的配慮”という視点(第417号)

(第462号)

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