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東京電力の株主責任とは

 東京電力による福島第一原発事故をめぐり、同社の経営責任と株主責任が論じられています。このうち「株主責任」について、会社法制の観点から雑感を綴ってみたいと思います。

 株式会社の法制度における大前提として、まず、「株主有限責任の原則」があります。ある会社の株主となるには株式を購入=出資するわけですが、株主はその出資金額以上の責任を負わないという大原則です。会社が破綻した場合には、会社財産から第三者への債務弁済や損害賠償などが優先され、株主は残った財産から分配を受けるのみ、という効果(間接責任)として現れることになります。
 つぎに、「所有と経営の分離原則」です。株主は会社のオーナーですが、株主は経営者を選び会社の運営を任せるだけであって、経営者による経営の失敗について責任を問われることはありません。あくまで持ち出しのカネが目減りするか、最悪ゼロになることを甘受するにとどまる責任なのです。これが「株主責任」というものです。

 では、「東京電力の株主責任」といった場合はどうなるでしょうか。東電株を購入した人が東電の株主で、一般的に株の購入時に全額を出資(決済)済みですから、東電の株主としての責任はすでに果たしてしまっているわけです。
 しかしながら、「東京電力の株主責任」が語られるとき、原発設置や運用の妥当性をろくにチェックもせず、のうのうと配当金を受けてきた株主にも福島原発事故の道義的責任ありやなしやといった議論が“専門家”の間でもなされてしまっているのが現状です。でも、東電の~という枕詞を付けたって本質は同じ。東電の株主だけに特別な株主責任などあり得ません。原発事故の処理や東電の処遇をめぐっては、こうした感情論を排したうえで、経営責任と株主責任を区別した議論がなされるべきだと思います。

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 ところで、私は、東電の株主の1人です。来週6月28日(火)には定時株主総会が開催され、先日その招集通知が届きました。決議事項たる議案は3件で次のとおり。
 ・第1号議案 取締役全員の任期満了に伴う17名選任の件。
 ・第2号議案 監査役の任期満了に伴う2名選任の件。
 ・第3号議案 定款一部変更(原子力発電からの撤退)の件。

 第1、第2の各議案は会社提案で、取締役候補者は1名を除き全員が留任、監査役候補者の1名は現在の取締役という人選で、しかも新役員候補者19名のうち18名が東電の既存の幹部らです。一方、第3号議案は株主402名の提案で、「古い原子力発電所から順に停止・廃炉とする」「原子力発電所の新設・増設は行わない」ことを定款に明記しようというものです。
 これに対し現経営陣による取締役会は、第3号議案には反対の立場を明確にしています。理由として、「会社法では、合理的、機動的な事業運営を確保する観点から、業務執行に関する事項については取締役会の決定に委ねることを基本として」いるから、「提案のような業務執行に関する内容を定款で定めることは適当でない」のだそうです――。

 福島原発事故は、その取締役会に業務執行を委ねてきた結果の地球規模に及ぶ大惨事だというのが私の理解です。ここに至っては、現経営陣を全員排除のうえ、「原子力発電からの撤退」を定款に明記しておくことに合理性があると考えますから、以下のとおり議決権を行使した次第です。なお、これは株主責任の履行ではありません。??と思ったら、最初から読み直して下さい。

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議決権数わずか「2」。発行済株式総数に占める議決権割合は、パーセントで示せばミリだのマイクロだのを付けて表示するレベル。けれど、小さい数字だって積算していけば、いずれ“限度”に達するでしょう。

*関連記事 尾瀬と東京電力(第447号)

(第451号)

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