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川越市統合保育35年のあゆみに続く新たな1ページ

 川越市保育課は2010年10月、『統合保育35年のあゆみ』という小冊子を発行しました。1975(昭和50)年以降の川越市における障害児保育の経過や実践報告などがまとめられており、親の願いや現場の熱意が伝わってくる資料集です。副題には、「共に学び 育ち合い 豊かな発達を」と記されています=写真=。
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 冊子のなかには、「受け入れ状況の変化」に関する記述があって、1)ダウン症児の受け入れ、2)肢体不自由児の受け入れ、そして、3)就労保障・重度障がい児の受け入れ、の3項目について事実経過が書かれています。この最後を締めくくる形で、じつは私の二男のことが「B児童」として触れられています。
 ここで詳細は省略しますが、まず、2000年のA児童に対する保育実施不可決定をめぐって川越市が敗訴した国家賠償請求訴訟の判決(※1)を一部引用。つぎに、2006年のB児童に対する保育実施不可決定で行政不服審査法に基づく異議申立てが出され、結果「その後」の到達点として次のように結んでいます――。
『これを受け、市では「重度障害児保育実施検討プロジェクト」をつくり検討をかさねた結果、…(中略)…医療的ケアを必要とする2歳児の子どもの受け入れを実施することとなった。』

 1975年4月、全国的にも実践例が少ないなか始まったとされる川越市の統合保育。冊子によれば、「その後、川越市の障がい児保育制度に共感する保護者が川越市に転入してくる等障がい児保育の受け入れ率が年々増加し」ていったのだそうです。
 35年の間に残念な歴史があろうとも、川越市では現在、二男のような障害(※2)をもつ児童も保育所で受け入れていることは事実なのです。必要に応じて看護師が配置され、保育所ですから、もちろん親の付き添いも不要です。このことは高く評価しておきたいと思います。

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 さて、前置きが大変長くなったわけですが、「35年のあゆみに続く新たな1ページ」の話はここからが本題です(このあと1400字ほど続きます)。

 二男は現在6歳、通常であればこの4月から小学1年生です。ただ、二男には障害があるため、現在の制度及び地域状況では、県立の特別支援学校に就学することになります。
 しかし、埼玉県立の特別支援学校では、看護師を配置しながら、二男のような児童の親に毎日学校で待機するよう求めています。要するに、仕事を辞めろと。埼玉県教育委員会及び埼玉県は、働く親のことを全く考えず、県立の特別支援学校において「合理的配慮」も「必要な支援」も提供していないということです(※3)。この問題については、これまで重ねて紹介してきたところでもあります(→第333号第361号第378号ほか参照)。

 結論から先に述べますと、二男は、今年4月からの2011年度、「就学猶予の上保育所で保育するのが妥当」とする主治医の診断書どおり、特別支援学校にも小学校にも行かず、保育所に行くことが決まりました。川越市教育委員会及び川越市がそれを認めてくれたのです。
 いまの仕事を辞めず共働きを続けていくことは、私たち家族が生活していくうえで不可欠です。そのためには、ほかに道が残されていなかった私たち家族にとって、言わば緊急避難的な措置ともいえます。

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 ここで関係する法律を簡単に整理しておきましょう。
(1) 学校教育法18条では、「病弱、発育不完全その他やむを得ない事由」あるときに市町村の教育委員会は、保護者に対する就学義務を猶予又は免除できる、と定めています。この猶予等を受けるためには、保護者が、学校教育法施行規則34条に基づき、「市町村の教育委員会の指定する医師その他の者の証明書等その事由を証するに足る書類」を添えて市町村教委に願い出る必要があります。つまり、就学猶予等には、a)医師等の証明書、b)保護者による願い出、c)市町村教委による判断、という3つの要素があります。
(2) この3つをすべて乗り越えて、次に検討するのは児童福祉法です。
 児童福祉法39条1項では、「保育所は…保育に欠ける…乳児又は幼児を保育することを目的とする施設」だとしつつ、同条2項で「保育所は、前項の規定にかかわらず…保育に欠けるその他の児童を保育することができる」と定めています。就学猶予等児童は、同項の「その他の児童」にあたります。
 そのうえで、同法24条では、「市町村は…乳児、幼児又は第三十九条第二項に規定する児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあつたときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない」と規定しているのです。以上が法律の原則です。

 けれど実際には、学齢に達した児童が保育所で保育を受けたという前例は見当たらず、公表直近となる2000年国勢調査(※4)においても数字がありません。文部科学省が毎年実施している学校基本調査(※5)によれば、2010年度に就学猶予等を受けた児童は全国に3686人もいます。こうした現状に鑑みると、川越市による今回の二男に対する措置は、全国に先駆ける「新たな1ページ」だといえるのかもしれません。いずれにせよ、画期的なことです。

 冒頭で紹介した冊子は、「障がいのある子もない子も共に育ち合ってゆくための一助になれば幸いです。」との一文で結ばれていました――。私も同じ思いから、二男の実例を公表することにしました。この記事が、全国にいる同じ立場の家族への希望の橋渡しとなれば幸いです。なお、私は、引き続き、県に改善を求めていきます。

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(※1) さいたま地裁2004(平成16)年1月28日判決(確定)。ぎょうせい『判例地方自治』255号p78~、同260号p114~に所収。
(※2) 脳性麻痺による四肢体幹機能障害(肢体不自由)(身体障害者手帳1級1種・療育手帳マルA、2005年認定、2010年再認定)。
(※3) 「合理的配慮」や「必要な支援」という考え方は、国連総会で2006(平成18)年12月採択された『障害者の権利に関する条約』に明記された障害者施策おける基本概念である。日本でも、条約批准に向けた取り組みとして、2010(平成22)年12月に障がい者制度改革推進会議がまとめた第二次意見などに明記されている(→第417号参照)。
(※4) 2000(平成12)年国勢調査の結果報告のうち、第2次基本集計の全国結果の報告書掲載表の第14表「在学学校・未就学の種類(7区分),年齢(各歳),男女別在学者数及び未就学者数-全国」(→政府統計の窓口「e-Stat」参照)。なお、当該調査は10年おきで、直近2010年国勢調査分は現在集計中である。
(※5) 学校基本調査のうち、2010年度の「不就学学齢児童生徒調査」による(→政府統計の窓口「e-Stat」参照)。

(第431号)

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コメント

私は、保育園の待機児童について川越市の保育課と半年戦ったことがあります。保護者の署名運動や市議会議員との折衝などを重ね、議会に保護者の声をあげるところまではできました。すこしづつ改善の兆しはありますが、まだまだ保護者の望むところまではきていません。それに比べたら大変な努力をされたことと思います。我が子を思う親心が行政に届く道があまりにも遠すぎますよね。全国には歯がゆいながらも耐えている方がたくさんいらっしゃると思います。長い道程かとは思いますが、あきらめずに戦い続けて下さい。陰ながら応援しています。

投稿: icchan | 2011年2月23日 (水) 12時03分

 icchanさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
 保育所待機児童の問題は、大きな社会問題だと私も認識しています。私の長男は、じっさい一度も保育所に入れず、無認可保育園で過ごしました。施設1つ取ってみても両者の違いは歴然ですから、親の思いも切実です。それを愚痴で終わらせず、icchanさんのように、当事者が声を出す活動をするのは重要なことです。敬意を表します。

 本記事は、基本的に、川越市の取り組みを称える意思を持って書きました。でも、このブログは「是是非非主義」。川越市の子育て環境全般については、どうかと思うこともあります。以前に書いた次の記事で触れた問題も先送りされたままです。各々できる範囲で、これからも行政に声を送り続けていきましょう。

・子育て世代が住みづらいまち川越(第404号)
 http://hirotahiroshi.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-c416.html

投稿: 鉄まんアトム | 2011年2月23日 (水) 21時21分

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