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法律新聞アンケートにみる司法書士の憲法感覚

 週刊法律新聞は2010年6月、全国の司法書士500人を対象に、司法書士をめぐる現状についての意見を聞くアンケートを実施しました。アンケート用紙には、実名掲載にて回答を紙面に掲載すると明記されており、58人から回答を得た旨報じられていました(→同紙2010年7月23日付け第1861号)。回答の具体的内容は、同号より12回にわたって分載。直近2011年1月14日付け第1881号をもって、連載がようやく完結しました。

 私が注目していたのは、アンケート項目の5番目。「強制加入団体である司法書士会と司法書士政治連盟の関係を問題視する見方があります。現在の関係が不透明だと感じていますか。」との問いが設けられていました。これに対し、27人が「全く感じない」という回答をしています。

 アンケートで問われた両者の関係に関して私は、2009年7月以降何度も、具体的な事実を示し違法性にも言及する意見を公表してきました。アンケート実施の約3カ月前には、同紙論壇欄に、『司法書士会と政治団体、関係の「峻別」求める』と題する拙稿も掲載していただきました(→同紙2010年3月12日付け第1844号)。この論文記事は、当ブログ(→第317号)のほか、日本司法書士会連合会が運営する司法書士会員限定のネット掲示板「nsr2」にも転載しています。
 それでも、「全く感じない」と、自ら進んで名乗りを上げた方が27人もいらっしゃるということです……。そこで参考までに、掲載された27人のお名前と所属会、そして各自の意見を引用のうえ、まとめて紹介しておくことにしましょう。なお、※「 」内が、各自の意見として紙面に掲載されていた文章です(明らかな誤記を含め原文ママ引用しました)。

 以下、引用始め――。

(1)粟野幹次氏(茨城会)
(2)池田政弘氏(東京会)
(3)石山彰雄氏(富山県会) ※「政治連盟は必要不可欠」
(4)市村忠男氏(栃木県会) ※「政治連盟単独での活動は困難。制度推進活動が中心であり、司法書士全員に何らかの利害が発生することを考えれば、司法書士全員が政治連盟の会員の位置付けはやむを得ない」
(5)神田章太郎氏(大阪会) ※「司法書士会は会員強制加入で情報の伝達や研修にも必要である。政治連盟は各人の意見表明の場として必要である」
(6)黒河貴司氏(大阪会) ※「政治資金規制法(ママ)は、政治家の団体を規制するために出来たものである。政治連盟を思想、政治信条の自由という抽象的な概念で攻撃するのは不当です」
(7)小泉努氏(東京会) ※「それぞれの団体は全く別の組織原理で活動している。むしろ、そのために政治力が弱い現状が問題である」
(8)小松良則氏(東京会) ※「組織が政治力を持たなければ崩壊の道を歩む事は、歴史が証明しているでしょう」
(9)佐々木大助氏(東京会)
(10)坂本正道氏(大阪会)
(11)佐藤正一氏(東京会)
(12)佐藤文雄氏(福島県会)
 ※「司法書士会員として、求めるところは全く同じである。それを両会の関係をまったく絶つことなどありえない。ただし組織である以上、その目的の範囲内で行動することは当然である。そのことを混同してはならない」
(13)眞田実氏(千葉会) ※「家賃が低すぎる等、枝葉末節を攻撃するのはよろしくない」
(14)佐野秀和氏(兵庫県会) ※「もっと密接にするべき」
(15)津田和紀氏(東京会)
(16)堂前元良氏(札幌会)
(17)富樫孝次郎氏(岐阜県会)
 ※「政治連盟は司法書士の自主的判断により入会し組織されているものであり、活動も司法書士の利益、国民の利益のため、独自の判断にもとづき行なわれている。計理面的で誤解を生じないよう気をつける必要はある」
(18)村田君代氏(東京会)
(19)中井周治氏(大阪会)
 ※「総会等はオープンに行なわれており、執行部の案が否決される場合もあり、会員の意見や意思が反映されている」
(20)樋口庫造氏(東京会) ※「司法書士会と政治連盟は車の両輪です。司法書士会は強制会で行動に限界があります。法改正をするにも不登法および商法、会社法を改正するにしても政治連盟がなければどうにもなりません。もしこの関係を問題視するならば民主主義の否定になります」
(21)藤田仁氏(京都会) ※「会費徴収方法は全体に改善され、不透明経費に付いても改善が見られる」
(22)八幡春三氏(秋田県会) ※「自分達の存在意義をわきまえている間は、間違った路線に入ることはないと思っているが?」
(23)湯川京孝氏(大阪会)
(24)吉田省三氏(長崎県会)
 ※「金銭面においては透明にすべきことは当然である。しかし司法書士業務の推進については協力して発展を計るべきだ」
(25)吉田博氏(兵庫県会)
(26)米田誠氏(大阪会)
 ※「会は必要と考えるが会員への指導力不足は否めない。補助者に仕事をさせている事務所に対する積極的な指導力は皆無」
(27)若林茂氏(東京会) ※「政治連盟は任意加入であるから、問題にすることがおかしい。不満なら加入しなければいい」

 なお、以下2名は「やや感じる」という回答ですが、念のため引用します。
(28)前堂正進氏(沖縄県会) ※「統一にすべきである」
(29)三浦秀樹氏(東京会) ※「政治連盟も強制加入にすれば感じなくなるが、あいまいである。判例でも政連の強制は違憲となっているから仕方ないかもしれないが、司法書士政連は、政権交代前から民主党はもちろん、公明・共産等の議員も顧問にしていたので、我々も、あまり支持政党が違うから加入できないとは言えないとは思うけど」

――以上、引用終わり。

 司法書士(というよりは、その方々)の憲法感覚を推し量る1つの材料にはなったでしょうか――。くれぐれも誤解なきよう申し添えておきますが、(1)~(29)はすべて紙面からの引用です。けして、私の意見や事実認定ではありませんので、念のため。

*関連記事は、カテゴリ「司法書士政治連盟問題」をクリックしてご覧下さい。

*【出典】 週刊法律新聞。(1)~(4)は7月30日付け第1862号、(5)(6)は8月27日付け第1864号、(7)~(9)は9月3日付け第1865号、(10)~(14)は9月10日付け第1866号、(15)~(18)は10月1日付け第1868号、(19)(20)は11月5日付け第1873号、(21)(28)(29)は11月19日付け第1875号、(22)は11月26日付け第1876号、(23)(24)は12月10日付け第1878号、(25)~(27)は1月14日付け第1881号。第1881号のみ2011年、ほかすべて2010年。 

(第425号)

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コメント

司法書士さんの憲法感覚について、まさかこの27名の方々が代表しているとは思いたくありません。しかし、滑稽な回答の続出に失笑してしまいました。法律家の方々なので「南九州税理士会政治献金事件」は当然ご存じでしょうが、その上での意見なんでしょうか?

投稿: miya | 2011年1月21日 (金) 09時49分

 miyaさん、コメントありがとうございます。
 27人。司法書士の総数は約2万人。そのうちのわずか500人へのアンケートで、回答は1割程度、そのさらに約半分という数字です。なので、これだけをもって司法書士全体を判断することはできません。
 それでも、実名が公刊物に載ることを前提にした「27」という数字には驚きます。両者の関係の不透明さを「全く感じない」ことの、司法書士界内での居心地の良さを物語っていると感じます。同時にそれは、「感じる」人たちへの圧力でもあります。

 彼らが「南九州税理士会政治献金事件」を認識して意見表明したかどうかは分かりません。ただ、その認識の有無は、本記事の趣旨である「憲法感覚の推量」に影響を与えません。どちらにしても結論は同じになるはずだからです。

          *          *          *
 以下、余談になりますが、続けます。
 意見を表明することは、表現の自由として、憲法によって保障されています(憲法21条)。民主主義の根幹をなす必要不可欠な権利とされる一方、その濫用によって他人の人権を侵害してはならないとされています。
 この表現の自由が“オモテ”であるならば、これを“ウラ”で支えるのが思想及び良心の自由です。これもまた憲法によって保障されています(憲法19条)。人がどのようなことを考えようとも、それが内心に留まる限りは絶対的な保障が認められ、あらゆる自由の中で最も重要な権利だとされています。思想及び良心の自由なくして表現の自由なし、という関係です。

 彼らが意見を述べることは表現の自由であり、最大限に尊重されるべきは当然です。しかし、表明された『意見』の多くは、他人の思想及び良心の自由を侵しても構わない(それが言い過ぎだとしても、考慮はしていない)という点において共通しています。
 現れた数字は27にすぎませんが、こうした『意見』が特異な27ではなく、司法書士界内の多数によって容認されていることは現状を見れば明らかでしょう。これこそが、『司法書士政治連盟問題』の本質なのです。

投稿: 鉄まんアトム | 2011年1月22日 (土) 12時15分

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