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私たちの望む医療的ケア緊急全国集会に行く

 障害児者や筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者らの団体の主催で2010年12月26日、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷において、「私たちの望む医療的ケア~法制化目前、緊急全国集会~」が開催されました。30分ほど遅刻して到着した250人収容の会場は、入りきれない人が外に溢れるほどの盛況ぶりでした。(→ライブ中継録画映像
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 在宅ALS患者及びそれ以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引、特別支援学校における教員によるたんの吸引等などの医療的ケアについては、2003年以降、非医療従事者(介護ヘルパーや教員など)によって手当てできるようになりました。医師以外の者による医療行為を禁止する現行法制(医師法17条、保健師助産師看護師法31条など)のもと、厚生労働省が通知によって、当面のやむを得ない措置として順次許容してきたからです(難しい言葉ですが、「実質的違法性阻却」という考え方で法律学的整理がなされました)。

 しかし、こうした運用による「~しても仕方ない」対応では、介護や教育の現場における医療的ケアは普及せず、逆に、厚労省通知の内容に限定する解釈や運用を生み出してしまうなど、弊害ともいえる状況が現れるようになりました。もはや継ぎ接ぎ対応では限界で、「~してはならない」→「~しても仕方ない」という枠組みから一段あげて、「~してもよい」という仕組みが求められるようになってきたわけです。
 こうしたことから厚労省は今年7月、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」を設置。利用者と介護職員等の双方が安心できる法制度の在り方などについて検討を重ね、12月13日、「中間まとめ」を取りまとめました。国は、これを踏まえて、来年の通常国会での法制化(2012年度実施)を目指しています。とにかく大事なのは、医療的ケアをいま必要としている人がいて、その人に必要なケアを、はやく、確実に提供できるようにすることなのです。

 先週このブログで、「合理的配慮」と「必要な支援」という障害者基本法改正の方向性についてご紹介しました(→前号参照)。今号で取り上げたことと密接に関係しています。医療的ケアをめぐっても日本はいま、大きな転換点に立っているのでしょう。将来における拡充も視野に入れた、普遍性をもった法制度設計を希求する次第です。

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 ところで、「中間まとめ」では、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアを実施できる「介護職員等」の範囲を明記。「介護福祉士」に加え、条件付きで「介護福祉士以外の介護職員等(訪問介護職員等の介護職員とし、保育所にあっては保育士、特別支援学校等にあっては教職員を含む。)」を担い手として位置付けています。詳細はこれからですが、いずれにせよ、すべては非医療従事者についての議論です。
 国を含めた世の中の議論はその段階にあるのに、では、埼玉県教育委員会が県立の特別支援学校で、医療従事者である看護師によるケアを厳しく制限している現状は、一体どう理解したらいいのでしょう――。
 医療的ケアの担い手を実態に合わせ広めていくと同時に、行政による医療的ケア提供責務みたいなものの法制化も必要ではないでしょうか。でないと、私たちのような家族は制度の網からこぼれ落ちつづけ、いつまで経っても救われません。そんな思いを一言だけ会場から発言し、帰宅しました。がんばっているたくさんの人たちからパワーをもらい、貴重な情報も得られ、大変意義深い集会参加でした。

 ちなみに、当事者の望み、願いを国に届けるべく開かれたこの集会には、厚労省障害福祉課の職員や各党の国会議員も参加していました。その模様は当日、ニッポン放送のラジオを通じて紹介。NHK総合テレビによるニュース報道もありました。最前列にいた私も、ほんの一瞬、頭だけが映っていました。

【参考】
集会の開催案内下川和洋氏「医療的ケアが必要な子どもと学校教育」に移動)

(第418号)

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