初秋の気配漂う尾瀬ヶ原にて(後編)
――前編からのつづき
前夜は満天の星、ペルセウス座流星群の流れ星もチラホラ見えました。星空見物はほどほどに、午後9時の消灯時間を前に、床につきました。
翌朝4時に目覚ましをかけ、長男らを起こしつつ薄明の中を小屋の外に出てみました。4時半を過ぎ、空に色が付き始めたので朝焼けを予感しましたが、やや期待外れに。いちばんの色づきがこの状態で、この赤みもわずか3~4分程度で消えてしまいました。
尾瀬ヶ原下田代にて燧ヶ岳を臨む、午前4時42分。
Panasonic LUMIX DMC-LX3,絞り優先AE,1/5,F4.0,ISO80,-1.33補正,24mm,一脚使用
やがてこの雲の色が黄金色に変わり、背中を振り返ると、至仏山の上部にだけ朝日が当たっていました。この色も10分ほどで消え、見物していた人たちもいなくなりました。
見晴より尾瀬ヶ原下田代、そして至仏山を臨む、午前5時11分。
感動的な朝焼けには巡り会えなかったものの、夜明け、そして早朝の情景は十分に楽しめました。尾瀬で狙いどおりの自然現象に出会うのは思いのほか大変なんだなあと、風景写真家の苦労に思いを致しました。
* * *
それでは前編と同様、以下、ほんの一部ながら写真を中心にご紹介します。よろしければお付き合いください。――
小屋に戻り朝6時の朝食を済ませ、7時には出発します。当時の天気はこのとおり、前夜確認した予報どおりの晴れでした。弥四郎小屋前にて。
この時期、湿原によく見られるコバギボウシ。きれいに咲いているのは案外と簡単には見つけられません。油断していたら、結局こんな写真しか残っていませんでした。尾瀬ヶ原下田代、東電小屋分岐近くにて。
* * *
さて、東電小屋分岐を北に赤田代へと進み、元湯山荘の先にある無料休憩所に荷物を預け、平滑ノ滝を経由して三条ノ滝をめざします(母親は平滑ノ滝にて折り返し、一足早く東電小屋へ先回りさせます)。
平滑ノ滝
三条ノ滝
こうして2つの滝を見物したところまでは良かったのですが…。
三条ノ滝へは11年前に行ったことがあるのに、記憶していた以上にハードな道程でした(加齢のせい?)。しかも、途中の鎖を使うハシゴ階段は雨に濡れたら危険と考え、某ガイドブックで安全快適と謳われた段吉新道経由で戻ったのが結果として判断ミスに。
三条ノ滝から段吉新道までの燧裏林道は急な斜面の直登で、段吉新道に出れば濡れた木道は滑りやすく、加えて距離も長いため、時間と体力をロスしたように思います。東電小屋に着いたのは正午を回ってしまいました。
私見ですが、尾瀬ヶ原方面から三条ノ滝を往復する場合は、赤田代を起点に最低3時間、三条ノ滝からは来た道を素直に戻った方が良さそうです。ご参考まで。
* * *
それでも東電小屋では余裕のコーヒーブレイク。昼食を取っているあいだ雨も止んでいて、至仏山は見えたり隠れたり。1時間以上しっかり休んで13時すぎ、山ノ鼻に向けて出発しました。
楽しい木道歩きもヨッピ橋まで。中田代に入ってから再び雨が降り始め、ヨッピ道の“1本シラカバ”辺りで空が暗くなって天候は急変します。あっという間に至仏山が見えなくなったかと思うと、暴風雨に見舞われました。レンズが雨滴で濡れてしまい撮影は困難に(…といいながら、しっかり撮っていますが)。
ここまで来たら引き返す方が危険なので、とにかく山ノ鼻へと向かいます。滑って転ばぬよう、風で吹き飛ばされないよう、年寄りと子どものペースに合わせゆっくり慎重に進みます。
振り返ると、もう後ろから来る人も見えなくなり…
雨や風は強まるばかり…
* * *
16時前、山ノ鼻に到着。このときが雨のピークでした。いつもなら研究見本園を散策してから下山するのですが、時間も遅く休憩所も閉じられているため、シャッターを数回だけ切って鳩待峠に登り返しました。カメラの濡れも限界で、撮影はあきらめザックに仕舞い込みました。
そうして17時過ぎ、なんとか鳩待峠まで全員無事に到着。が、しかし、屋根のある休憩所に入るや、「もう終わりで〜す、カギ締めますから出て下さ〜い」と追い出されてしまいました。仕方なくそのまま駐車場に向かい、雨の中、ズブ濡れのカッパを脱ぎながら車に乗り込みました。
もしも鳩待峠に車がなかったら、最終のバスにも乗り遅れたわけで、エラいことになっていたかも知れません。
母親や長男は、悪天候も貴重な体験として楽しんでくれていたようですが、ガイド役としては失格。1つの判断ミスが次の判断を誤らせるといった“負の連鎖”をもたらしてしまっていました。経験の浅さ、計画や見通しの甘さ、そして何より山の怖さを痛感した次第です。
ふだんは鏡のように静かな水面もこのとおり、いくら雨滴の輪の描写が絵になるといっても限度というものがある。尾瀬ヶ原山ノ鼻、尾瀬植物研究見本園にて。
前編にもどる――
*本記事で使用した写真は、すべて2010年8月12日にPanasonic LUMIX DMC-LX3で撮影したものです。画像クリックで少しだけ拡大表示されます。
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(第373号)
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