ワタスゲそよぐ初夏の尾瀬ヶ原(後編)
――前編からのつづき
この時期のもう1つの主役格は、紫色をしたカキツバタにヒオウギアヤメ。たった2本あるだけで、緑一色の写真がキリッと引き締まります。
両者の区別はそれほど難しくなく、茎の枝分かれと花の模様で見分けられます。カキツバタは枝分かれせず、1本の茎に1本の花を咲かせます。また、ヒオウギアヤメの花びらには虎斑模様があるのに対し、カキツバタには1本の筋があるだけです。
ちなみに、この写真の紫はカキツバタです(奥の白みはワタスゲ群落、手前の白い点はタテヤマリンドウ、尾瀬ケ原上田代にて午前9時前)。
梅雨時ということで、最大の悩みは天気。予報が当てにならない上に変化も激しく、雷発生の確率も高まります。この日の予報は「曇り時々雨、午後は雷雨に注意」。雨具着用の散策を覚悟しつつ鳩待峠に上がりましたが、朝のうちだけは青空が見え、日が差す時間帯もありました。
行きに立ち寄った山ノ鼻の尾瀬植物研究見本園は、そんな日差しの中にあって清々しい空気に包まれていました。こうして写真を見ていると、森の方から響き渡っていたカッコウの鳴き声が聞こえてくるようです(手前はミツガシワの葉と花)。
研究見本園にもワタスゲの群落があるので、帰りにもう一度立ち寄りました。白い綿の玉が午後のそよ吹く風に揺れていました。意外と見過ごされがちな見本園ですが、花の種類は多く、尾瀬ヶ原方面と比べ人も少なく静かな散策が楽しめます。
* * *
雨に降られはしましたが、本降りにはならず“好天”の部類でした。ふわふわのワタスゲを見納めて、尾瀬ヶ原をあとにすることにしました。途中の森林内で、一度は見たいと思っていたギンリョウソウを見つけました。ギンリョウソウは腐生植物とよばれ、菌類に寄生しているのだそうです。葉緑素を持たぬ白色透明の姿は神秘的でした。
このあとは鳩待峠まで一気に登りきりました。それからバスで戸倉に戻って一安心したところで、問題が顕在化。同行の友人が疲れ果て、頭痛を起こしてしまっていました。なのにこの私、休んでいるからいいよ、という友人の言葉に甘え、なおも暴走。一人で「尾瀬ぷらり館」にてお風呂を頂いてしまいました。
…風呂から上がると、その間に友人は少し落ち着いたようで、私の運転する車で家路につきました。沼田に着く頃には復調したようで、よかったよかった。以上、これにて一件落着(終りよければすべてよし、ということで許してくれるかな?)。
p.s. 尾瀬は約20年ぶりというその友人。彼は、とても聡明かつ博識で、私の尊敬する人物の一人です。酒が飲めないという既出の弱点?のほか、さらに今回もう2つの弱点が判明しました。梅干し、かき氷もダメなのだそうです。っていうことは、アイスクリームの誘い連発も酷だったかな…。休息のたび、あんパンを食べまくっていた姿がじつに印象的でした(o^^o)
尾瀬の盛夏を代表するニッコウキスゲ。ところどころの木道脇で、こうして1輪2輪と咲き始めています。見頃はまだ先ですが、ワタスゲとのコラボはいまだけ!
――前編にもどる
*本記事で使用した写真は、すべて2010年7月3日にPanasonic LUMIX DMC-LX3で撮影したものです。
*参考文献 猪狩貴史著「尾瀬植物手帳」(JTBパブリッシング)
*関連記事 約20年ぶりとなる尾瀬沼へ(第366号)
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(第365号)
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コメント
ドラやきの代りにあんパンを持参したのが失敗かも。どこでもドアやタケコプターが使えず、体力不足をカバーできませんでした。(^-^;
投稿: 同行者 | 2010年7月 4日 (日) 21時11分
もしかして、ねずみも弱点の御方ですか?(^^)
どら焼きだとお茶が必要ですね。次回は、道具一式かかえて弥四郎清水で茶の湯と洒落込みますか。できれば尾瀬沼経由で。
ところで、食べていたアンパンは御主の顔の一部だったとか。それで「力が出ない~ジャムおじさんに知らせて~」になってしまったのでは(はひふへほー!)。…冗談はさておき、お疲れ様でした。
投稿: 鉄まんアトム | 2010年7月 5日 (月) 15時16分