暗号化の件
少々変則的な登記事件の依頼が2月にありました。登記先履行の特約があったり、事情があって急ぎのオンライン申請をしたり。ここに来てようやく最終の決済が終了し、山を通り過ごしてホッとしています。
私のデスク正面には、小学校の桜の木が窓一杯に見えます。まだ若い小さな2本の桜ですが、1本は他よりも早く咲き、もう1本は他より遅れて咲きます。ちょうど目線の先にあって、仕事をしながらも、桜にうつつを抜かすことができるようになっています。
こうしてホッとしたのも束の間、法務局から補正の連絡アリ。
委任状に「暗号化の件」の記載が漏れている、とのこと。…ありゃりゃ、ま~た、やっちまったよ…。
一般の方には??だと思うので、少し説明します。
売買による所有権移転の登記をする場合、売主は、「登記済証(いわゆる権利証)」を添付します。05年の法改正後は、順次「権利証」が廃止され、それ以降に不動産を取得した人には、替わって「登記識別情報」が通知されるようになりました。登記識別情報の通知を受けた人がその不動産を売る場合には、通知された登記識別情報を法務局に提出することになっています。
登記識別情報とは、例えば【5T7-PEY-F9G-MBH】とかいう意味不明な12桁の記号番号です。法務局への提出方法は、窓口申請の場合、登記識別情報が記載された紙を封筒に入れ、人に見られぬよう封をして申請書に添付して提出します。オンライン申請の場合には、【 】内の文字列を所定のソフトで暗号化して、処理済みの暗号ファイルを申請データに添付して送信しなければなりません。
問題は、この暗号化をすることが、「登記申請に関する一切の件」には含まれず、個別の委任事項(=委任状に書かないとダメ)だという法務局の取扱い方です。
窓口申請でもオンライン申請でも、個別の委任事項なしに登記識別情報そのものを提供できるのに、なぜ暗号化だけ個別の委任が必要なのでしょう。暗号化は手段にすぎず、あくまで登記識別情報の提出(=登記申請)という目的のためだけにすることなのに…(しかも暗号化することは強制されている)。
法務省がオンライン申請を本気で普及させたいのなら、「登記申請に関する一切の件」に「暗号化の件」も含まれていると解釈して欲しいものです。……自分のミスを人のせいにしてしまいました。ごめんなさい。以後、気をつけます。
川越の桜はもう、葉桜です。窓の向こうの桜も、今日までにほとんどが散ってしまいました。そう言えば桜餅、まだ食べてないなあ。
(第335号)
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