障害児の親縛る医療ケア体制
私たち家族が抱える問題を、一人でも多くの人に知ってもらいたい。その一心で朝日新聞「声」欄に投稿しました。思いは記者に通じ、標記題名をまとい、新聞紙上に468の文字となって羽ばたいていきました。まずは、掲載された文章をご一読願います。
障害児の親縛る医療ケア体制
司法書士 広田 博志 (埼玉県川越市 40)
6歳の次男は肢体不自由児で、食事や水分は鼻からチューブを入れて補給する経管栄養が必要だ。私たち夫婦は共働きで日中は次男を市立の保育所に預けている。保育所ではチューブの抜き差しを看護師がしてくれる。こうした市の支援で、勤務を短縮しつつも共働きを続けてこられた。
しかし来春、次男が埼玉県立の特別支援学校へ進学すると、共働きの継続は絶望的だ。
そこでは医療的ケアが要る児童のため看護師の教員が複数配置されている。ところが県のガイドラインで、看護師は経管栄養の中でも、チューブ装着を確認し栄養分を容器に注入する限定された行程にだけ携わる。チューブの抜き差しは親に任され、少しでもチューブが外れると親が呼ばれて処置する運用だ。親は終日待機も余儀なくされる。時間のかかる注入ケアは認め、チューブの抜き差しはダメでは何のための看護師配置か。
障害児の親が社会に出て働くことには経済的・精神的に大きな意義がある。学校に看護師が常駐し医療的ケア体制を整えると親の負担の軽減効果があったと指摘する文部科学省通知もある。県は通知に沿う運用に改善してほしい。
(朝日新聞東京本社版4月27日付け朝刊12面「声」欄、拙稿は上部中央)
医療の進歩によって救われるようになった命。一方で、生かされた命を支える仕組みが整っていない社会。両者がもたらすシワ寄せは家族だけに押し込まれ、家族がその重荷を何十年にもわたり背負っていくしかない現実は、やはり変えていかなければならないと思います。
いくら家族といえども、自分たちの力でできること、できないことがあります。
親にとっての“一度しかない人生”【quality of life】が、日々、特別支援学校の控室で踏みつぶされていっている実情。子どもに保障されているはずの、医療従事者による適正な医療を受ける権利が蔑ろ(ないがしろ)にされている実態。こうした現実を多くの人に知ってほしい。そして、考えてほしいのです。
もし、あなたが、子どもの通う学校から、「毎日子どもと一緒に学校に来て、授業が終わるまで別室でただひたすら座って待っているように、用があれば呼ぶから」と言われたら、どうしますか?
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コメント
明らかに障害児の世話をしたくない言い訳ですよね。全く同情できませんよ。
【社会】共働き夫妻が障害児の入学断念 常時付き添い求められ
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1298988777/
投稿: りか | 2011年3月 2日 (水) 01時26分
りかさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
ご指摘の件は、そのような見方もあるとは思います。率直に受け止めます。
なお、ご紹介頂いた掲示板のすべてに目を通すことは、時間的制約もありできないかもしれません。その点はどうかご容赦ください。
報道等では、私の言いたいことがそのとおりに書かれているわけではありません。また、このブログ等を通じても、前提の事実や背景の事情などのすべてをご紹介することもできていません。日常生活一般については、楽しそうな様子ばかり書いていますから、誤解を受けることもあるかもしれません。
そういったことを踏まえ、今回の報道を見て気になったことは、私が強く特別支援学校への入学を求めたかのような伝え方がなされている点です。私が最初に求めたのは、「就学猶予のうえ保育所での保育をすること」なのです。これは主治医の診断に基づくものです。
一方で、6歳を迎えた子どもの親には教育を受けさせる義務(子どもには教育を受ける権利)があり、今回、教育委員会からは県の特別支援学校への就学を強く求められました。そういう経緯の中で、結論の部分を客観的に見て「断念」という受け止め方で報道がなされたのだと思います。この点、申し添えておく次第です。
投稿: 鉄まんアトム | 2011年3月 2日 (水) 09時54分
2011年3月2日13時44分にコメント投稿頂いた「ねむねこ」様へ。
ご忠告のコメント、ありがとうございます。
ご指摘のとおり、私の拙さゆえ、現状を正確に伝えることができていないかもしれません。至らぬ点もあると受け止めています。
ただ、今回ご投稿という形でお知らせいただいた、ネット上にあるとされる「意見」については、私が公開者としての責任を持てない表現が含まれていると考えます。
よって、本コメントの公開は差し控えることとしました。誠に申し訳ございませんが、ご了承ください。
※なお、お申し出のアドレス宛てに上記趣旨をご連絡するメールを送信しました。しかし、不存在を理由に返戻されましたので、こちらにてお返事する次第です。併せてご了承ください。
投稿: 鉄まんアトム | 2011年3月 2日 (水) 18時30分