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日司連が日司政連に事務所格安提供

Img_0941_1 全国の司法書士会を束ねる日本司法書士会連合会(日司連)は、新宿区本塩町9番地3の「司法書士会館」(以下、会館―写真右)に本部がある。会館は日司連と東京司法書士会の共有だ(登記簿によれば日司連持分は4分の3)。
 政治団体の日本司法書士政治連盟(日司政連)は、会館のうち日司連の専用部分である4階の事務室1室に入居。広さ34.27平方メートル(約10.36坪)の同事務室を、日司連は、日司政連に対し、日司連会館管理運営規則に基づき共益費・光熱水費込み月額8万8千円(坪単価約8494円)にて賃貸している(面積及び賃料は日司連電話回答による)。1998年竣工の会館は外堀通りに面し、四谷駅から徒歩約3分。共用ロビーやエレベーター2基を備え、受付警備員も常駐する“優良物件”だ。
 一方、不動産業者より入手した複数の物件情報によれば、同等水準の近隣賃料相場は、共益費込み(光熱水費は別)で坪単価1万8千~2万円前後だった。日司政連事務室の賃料は相場の半額以下だ。総務省政治資金課の見解では、相場との差額は寄附にあたる。日司連は、日司政連に対し、毎月10万円を下らぬ寄附を継続していることになる。日司連から日司政連への寄附は、政治資金規正法(会社等の寄附の制限)に違反するうえ、最高裁や大阪高裁判決により法人の目的外行為として民事上も違法無効である。

 以上の事実から、日司連は、日司政連に対し、累積している相場との差額=違法寄附相当額の返還請求が必要だ。回収不能ならば、現在及び過去の役員らが連帯して同額の損失を補填する必要もある。また、賃料を相場相当に見直しても問題は残る。賃料相場は動くから、差額発生による違法寄附の疑念は付きまとい、一時凌ぎに過ぎないのだ。
 結局のところ、公益法人運営における透明性や適法性確保の観点から、日司連が今後も政治団体への賃貸を継続するかについては慎重な判断が求められることになろう。

          *          *          *
 余談であるが、約3千人の司法書士で作る全国青年司法書士協議会(全青司)が2月28日、三重県内で定時総会を開いた。全青司は、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与する」ことを目的とする任意団体である。
 同総会には埼玉の有志7人が、日司政連による一連の規正法違反や、司法書士会から政治団体への違法な利益供与実態の各報道を受け、「司法書士会に政治団体との関係の峻別を求める決議案」を提出。全青司が各司法書士会に対し、政治団体への利益供与一切の中止を含む関係峻別を求める提案内容であったが、否決された(賛成者は指の数ほどのごく少数だった)。
 決議案には、議題として取り上げること自体にも異議が出される有様で、何をか言わんや。羊頭狗肉を地でいく全青司は、もはや解散することでしかその目的を達成できまい。

*追加関連記事
日本司法書士会連合会に対する公開質問状(第316号) ※本件問題に関する質問状です。
司法書士会と政治団体、関係の「峻別」求める(第317号) ※本件問題に関する法律新聞掲載の論考です。

*関連記事
日司連が日司政連に寄附した300万円のゆくえ(第287号)
日司政連による収支報告書虚偽記載問題の要点整理(第288号)
司法書士関連の政治団体による事務所無償使用問題(第258号)

(第311号)

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コメント

余談の全青司に関する記述について一言

当該議案には修正案も提出されました。
議案としては、各地の事情や是正状況にも配慮した
修正案のほうが秀逸であったように思われます。
個人的な評価ですが。

現に、当日の原案及び修正案をあわせれば過半数の
(延べ)96票が賛成の意思を示していましたが、
その多くは修正案賛成者でした。
事実の一部だけを取上げて批判するのは好きじゃない。

議案に賛成しなかった者の理由に耳を傾けていますか?
賛成しなかった者は違法行為を放置することを是として
いるとでも思っているのですか?

今までは貴職らの活動には大変な敬意を表していましたが残念です。

投稿: 通りすがり | 2010年3月 9日 (火) 18時02分

 通りすがりさん
 はじめまして、コメントありがとうございます。

 ところで、私は、全青司(青司協)の会員ではありません。ましてや議案を提出した者でもありません。
 なので、不賛成の理由の傾聴とか、不賛成者の前提事実に対する内心を私に問われても、答える立場にありません。部外者の私には、全青司が定時総会で原案を否決した事実以外を考慮する必要もありません。始めにそのことをお断りした上で、通りすがりさんの意見や質問にご返答いたします。

 さて、本文で否決を報じた原案たる「司法書士会に政治団体との関係の峻別を求める決議案」に対し、修正案(※趣旨全文は末尾参照)が提案されたことは本文公表時に承知済みです。通りすがりさんは、この修正案が『各地の事情や是正状況にも配慮』していることを挙げ、『秀逸』だと評価されているようにお見受けします。
 しかし、私は、この考え方に全く共感できません。修正案は、いわゆる『骨抜き』だからです。原案を他に例えるなら、「赤信号の無視が横行しているので、信号を守るよう違反者に求める」というもの。一方の修正案は、「信号を守る必要性を強く認識しつつ、信号無視の実態を見直すための協議を行うよう違反者に求める」ものです。
 修正案が如何にふざけた内容か、もうこれ以上の説明は必要ないでしょう。なぜに『各地の事情や是正状況にも配慮』をせにゃならんのでしょうか。日本国憲法や政治資金規正法は、全国一律に適用されているはずです。

 もう1点、付け加えます。
 司法書士界における一連の政治団体との癒着問題は、多数決で処理される問題ではありません。協議で見直すかどうか議論すべき事柄でもありません。また、コトが犯罪であれば、何人を問わず、即刻その是正を求めるのは当然ともいえます。
 なのに、修正案の提案理由の1つは、「全青司が全国一律に各単位本会へ何らかの行為を請求することは、組織論として相応しくない」のだそうです。この点からも、こんなものを『秀逸』などと評価することは、私にはできません。憲法感覚を疑われます。
 結局のところ、原案否決にしろ、修正案可決にしろ、結論は同じ。どちらにせよ、私の全青司に対する羊頭狗肉という評価に変わりはありません。

          *          *          *
※ 修正案の提案趣旨(原文引用)
 提案の趣旨を「全青司は、強制加入団体である日本司法書士会連合会及び各司法書士会と各政治団体との関係を峻別する必要性を強く認識し、日本司法書士会連合会に対し、関連する政治団体と各司法書士会との関係につき見直すための協議を行うことを求める。」と修正する。

※※ 参考までに…原案の提案趣旨(同じく原文引用)
 「全青司は、各司法書士会に対し、司法書士会が政治団体との関係の峻別を図り、金員の寄附は無論、事務所や労務の無償または低額での提供など実質的に寄附と同視される一切の利益供与を行わないよう求める。」以上のとおり決議する。

投稿: 広田博志 | 2010年3月 9日 (火) 22時30分

 全青司定時総会後の週刊法律新聞最新号(3月5日付け第1843号)に、本文記事で付言した峻別要求決議案否決について、「一部会員から落胆の声」の見出し付きで報じられていました。一部引用してコメントしておきます(太字が記事引用部分)。

――この問題での取り組みに全青司が積極的な姿勢を示せなかったことに対しては、一部会員から「司法書士会と政治団体の関係の違法状態を組織として是認したと解釈し得る」などとして、落胆する声が出ている。
 私が同じように受け止めていることは、すでに書いたとおりです。
 全青司に良識ある会員がいるとすれば、さぞかし落胆しているでしょうね。決議案(原案)に賛成しない人間が、内部でしか通用しないような屁理屈をいくら連ねて論難しようとも、世間での評価は記事のとおり(=違法状態を組織として是認)なのですから。

――また、ある会員は今回の決議否決の背景として、各地の青年司法書士協議会も各地の司法書士会から助成金交付を受けている事例が多数あるほか、政連に加入している会員も多いことから、「資金援助者を批判したくない意向や青司協との政連の密接な関係があるのではないか」と指摘している。
 これがそのとおりだとすると、もう救いようのない事態です。「各地の事情や是正状況にも配慮した修正案のほうが秀逸」などという意見が出てくるのは、このような素地もあるのでしょう。まったく“法律家ごっこ”もいいところです。

投稿: 広田博志 | 2010年3月10日 (水) 14時40分

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