宇高航路がなくなる!
ことし開設100周年を迎える宇高航路(岡山県玉野市の宇野港と香川県高松市の高松港を結ぶ18km)。この全便廃止が2月12日、突然発表されました。この日、航路を運航している国道フェリー及び四国フェリーの2社が、四国運輸局に廃止届を提出。両社は3月26日をもって撤退し、同航路は廃止されることになりました。
宇高航路は、国鉄連絡船として1910年に開設。1988年の瀬戸大橋開通により連絡船は廃止されたものの、瀬戸内海における主要航路の1つとして、また国道30号線の海上区間として維持されてきました。現在でも日中25分おき(深夜は40分おき)の24時間体制で、両社の船が交互に本州と四国の間を行き来しています。
100周年を迎えるのは6月12日。この記念すべき節目を目前にした撤退は、関係者にとって無念であるとともに、地方の公共交通が直面している状況の深刻さを浮き彫りにしています。航路廃止の直接の原因は利用客の減少で、その背景には、燃料費の高騰や世界同時不況という景気の落ち込みがあります。そこにとどめを刺したのが『千円高速』や『ETC割引』などの高速値下げだ、というのが多くの一致する見方です。乗客減少が景気要因でもあったのに、『景気対策』によって航路が廃止に追い込まれる事態は、じつに『皮肉』なことです。
わが国の交通政策は、自動車や道路ばかりを過度に優遇。不必要な空港や航空会社の維持にも巨額を投入する一方で、利用者数や身近さでは空路とは比べものにならないのに、地方の航路や鉄道は完全に見捨てられてしまっています。配慮がないだけでなく、著しいほどバランスを欠いています。
千円高速が始まった昨年3月からのわずか1年足らずで、航路廃止はこれで6社7航路目。また、この10年間での鉄道廃止は30路線635kmにも及びます。東京−新大阪間をはるかに上回る距離の“地方の足”が失われているのです。国の公共交通機関に対する無策は、一体いつまでどこまで続くのでしょうか。
無策の極みともいえる千円高速は、6月にようやく廃止予定。でもそのときには、もう戻るべき“道”がなくなっているという事態。これを『皮肉』の一言で片付けてしまってはいけないのだと思います。宇高航路は、国の責任において存続させるべきです。
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写真は上下いずれも、2008年3月10日宇野港にて撮影。
航路廃止は、本州四国間の移動の足を奪われる問題だけにとどまりません。フェリー会社は従業員解雇の方針を表明して新たな雇用問題が生じていますし、フェリーによって支えられていた港湾施設を今後どう維持していくか、といった問題も生じてきます。
*関連記事 四国遍路第12話(宇高航路)(第47号)
(第307号)
*【その後、廃止撤回】 3月11日までに両社とも廃止届を取り下げました。宇高航路は、当面、存続されることになったのです。ただし、1年以内に存廃の再判断をすることになっており、中長期的な存続は予断を許さぬ状況です。
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