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日司政連による収支報告書虚偽記載問題の要点整理

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 当ブログにおいて、日本司法書士政治連盟(以下、日司政連)の政治資金収支報告書(以下、報告書)に虚偽記載のあることを今年7月公表(第236号)。それからすでに5カ月以上が経過。この間この問題については、日司政連宛てに公開質問状を送付したり(第259号)、週刊法律新聞に2度にわたって報道されたりもしました。しかし本日現在、日司政連は、報告書の訂正はおろか、未だ事実の公表すらしていません。
 一方、日司政連の虚偽記載に気付いてから、ほかの司法書士の協力を得ながら、都道府県の選挙管理委員会を通じて、全国に計50あるとされる単位司法書士政治連盟(以下、単位司政連)の過去3年分の報告書をすべて取り寄せ、このほど集計が完了しました。
 今回、2009年12月12日付け日本経済新聞(東京本社版朝刊)での報道を受けて、この問題の全容を俯瞰して把握できるよう集計データのごく一部を公開し、“要点整理”しておくことにします。
 なお、この問題の背景には、単位司政連による各司法書士会事務所の無償使用や事務職員の無償労務提供といった重大な問題もあります。その全容については、時期を見ながら、別稿にて“論点整理”する際に取り上げる予定です。

【表】 司法書士政治連盟の過去3年分政治資金収支報告書の集計概要
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※表をクリックすると拡大表示されます。保存してA4印刷も可能です。
※集計及び表作成 渡辺昭孝司法書士(埼玉司法書士会)

flair表の解説、表にアルファベット等で付した注釈などは、以下のとおりです。

          *          *          *
0. はじめに <日司政連会費は法律上すべて寄附であるという大前提>
 0.1. 表の解説に先立って、政治資金規正法(以下、規正法)における「会費」と「寄附」、この2つの用語の定義付けと両者の関係を簡単に整理しておく。
  0.1.1. まず、「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう(規正法4条3項)。
  0.1.2. つぎに、「党費又は会費」とは、いかなる名称をもってするを問わず、政治団体の党則、規約その他これらに相当するものに基づく金銭上の債務の履行として当該政治団体の構成員が負担するものをいう(規正法4条2項)。
  0.1.3. そして、「この法律の規定を適用するについては、法人その他の団体が負担する党費又は会費は、寄附とみなす。」とされている(規正法5条2項)。
 ゆえに、単位司政連(日経報道では「地方組織」と表記、以下同じ)の日司政連への“会費”は、日司政連という政治団体の規約に基づき政治団体である単位司政連が負担する金銭上の債務の履行であるから、法律上すべて寄附として扱われることになる(扱わねばならない)。
 0.2. また、同一の寄付者からの寄附で、その金額の合計が年間5万円を超えるものについては、その寄附をした者ごとに名寄せして、報告書にその者の氏名、住所及び職業(団体にあっては、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名)並びに当該寄附の金額及び年月日を具体的に記載しなければならない(規正法12条1項1号ロ)。
 0.3. であるにもかかわらず、日司政連報告書の「法人その他の団体からの寄附」又は「政治団体からの寄附」とも金額が「0」と記載され(D、E)、もちろん、「0」なのだから内訳の記載もない。
 0.4. 以上が本件問題の入口であり、理解の大前提でもある。

1. hについて <無届け単位司政連の発覚>
 1.1. 2009年10月1日付けの日司政連宛て「公開質問状」に対して当方宛に届いた、日司政連渡邊繁俊事務局長名の「質問状の件」(平成21年10月21日付け日司政連発第091009号)には、日司政連が『現在の…全国50の単位司政連を会員とする組織になりました。』と明記されている。
 1.2. しかし、各地の選管に政治資金規正法に基づき政治団体の届出をしているのは、平成18年は44会、平成19、20年は45会のみで50に満たない。愛知、福島、秋田、函館、札幌、釧路の6会が無届けであった。
 1.3. その後、平成19年10月に愛知が、平成21年7月に福島が、同年9月に函館が相次いで設立届出をする一方、先月(平成21年11月)末時点で、秋田、札幌、釧路の届出は未だ確認できない状況である。
 1.4. この事実をどう見るか。日司政連は、自ら「全国50の単位司政連を会員とする組織」だと称しており(→1.1.)、これら無届政治団体からも会費を受領していたものと考えられる。その場合は「政治団体からの寄附」(E)に記載が必要である。
 1.5. また、政治団体は、規正法6条による届出がなされた後でなければ、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができない(規正法8条)。
 1.6. 単位司政連が6条届出前に日司政連に金銭を支出した場合、
  1.6.1. 規正法8条違反となり、当該単位司政連の役職員等は、23条により五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金。
  1.6.2. また、政治団体以外の団体から寄附を受領した場合には、規正法22条の2違反となり、26条により一年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金。
  1.6.3. さらに、規正法22条の2違反で受領した寄附は、28条の2により没収。
 のそれぞれ対象となる。

2. A、e1、e2、x1、x2について <年間4000万円以上の寄附を「個人会費」と装う>
 2.1. 日司政連には個人の会員が規約上存在しないので、Aは本来ゼロであるべきだ(日司政連規約には、第5条で「本連盟は、単位司政連をもって組織する。」としか書かれていない)(→4.5.)。
 2.2. 一方、各届出済み単位司政連(以降、断りのない限り、単に「単位司政連」と記す)の報告書には、平成18年に延べ132回、平成19年に延べ131回、平成20年に延べ128回にわたり、日司政連の「会費・負担金」として日司政連に支払われたことが明記されている。その総額がe1である。(→2.4.)(日司政連による“仕訳違い”抗弁について→4.1.4.3.4.4.
 2.3. e1に、「会費」とは別に寄附として支払われた文字通りの「寄附」(e2)を加えたのがx1である。(→5.1.
  2.3.1. x1は、単位司政連が、日司政連に対し、「寄附」として収め、報告書に記載した額の合計である(x2は推定を含む合計額)。
  2.3.2. 前記0.のとおり、日司政連が単位司政連から受け取った「会費」「負担金」「拠出金」「カンパ」「寄附金」などは、規正法5条2項により、名目を問わずすべて「寄附」とみなされる(→0.1.1.0.1.3.)。
 2.4. ゆえに日司政連は、本来これを「政治団体からの寄附」として内訳を明記して記載する必要があるのだが、すべて「0」と記載しているのだ(E)(→0.3.4.5.2.)。
 2.5. これは虚偽記載にあたり規正法12条違反となり、25条により五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金の対象となる。
 2.6. 日司政連は、こうした事実を当然に把握しているはずで、政治活動の公明と公正を確保する規正法の目的を無視した悪質な違法行為であるといえる。

3. a、f、gについて <足りない分を足しても…>
 3.1. 一部の単位司政連報告書にみられる、非明記(仕訳の誤記や虚偽記載とみられる)分の日司政連に対する会費を推定計上したのがfである。報告書が未提出であったり、提出が遅れているため未公表である分を推定計上したのがgである。
 3.2. e1(明記会費)+f(非明記会費)+g(推定会費)=aで、単位司政連が日司政連に納めたであろう推定を含む会費等の最大限とみられる額である。推定を含む計算は、日司政連にとって最も有利になる(合わない金額が少しでも減る、後記4.を続けて参照してほしい)。

4. P、Qについて <入手経路が不明な400万以上のカネ>
 4.1. 前記3.2.のとおり計算しても、a(単位司政連から日司政連に支払われた「会費」「負担金」の推定を含む合計)は、A(日司政連の報告書に収入として記載された「個人会員の会費」の総額)と一致せず、しかも大幅に少ないことがわかる。Qはその差額(約400~500万円前後)を示している。
 4.2. また、各単位司政連に会費を支払ったとされる単位司政連報告書記載の人数をすべて合計しても各年1万1000人前後(b)であり、日司政連報告書に記載された「会費を納入した人の数」約1万8~9000人(B)の6割前後でしかない。
 4.3. 日司政連は、Eに記載されるべき収入金額がAに記載されている理由について、前掲「質問状の件」で『報告書についても、個人会員の会費から、単位司政連からの寄附へと記載変更すべきであったところ・・・・従来からの報告書の仕分項目をそのままにし、現在に至ってしまったものと考えます』と述べ、単位司政連からの寄附を個人会員の会費と仕訳項目を誤って記載した趣旨の主張をしている。
 4.4. その主張(→4.3.)に立脚すれば、少なくともAとe1、Bとbが完全に一致して、PとQはゼロであるはずなのだ。提出された報告書だけで計算すればPの金額はゼロにならず、前記3.2.のとおり日司政連にとって有利になるよう推計分を加えたQでもゼロにならない。
 4.5. 日司政連に個人の会員は存在しない(→2.1.)。会員が個人で組織されていた設立当初(昭和44年)から昭和55年頃までは、規約に会費規定はなく、当時の日司政連の収入は寄附で賄われていた。この点に鑑みると、「質問状の件」に書かれている『個人会員の会費』という概念提示(→4.3.)には強い疑問が残る。
 4.6. 日本経済新聞の新聞報道にも、日経の取材に対する日司政連会計責任者の話として「昔からの慣例で意図的に改ざんしたわけではない」として、“過失”を主張しているようである。この点については、稿を改め論じることにしたい(→cf.2009年11月13日付け週刊法律新聞第1830号p4)。
 4.7. PとQは、日司政連の報告書がまったくのデタラメであることを示す象徴的項目なのである(前記2.も参照)。

5. b、E、e2について <700万円以上の寄附もゼロで届出>
 5.1. 平成18年分の単位司政連報告書によれば、同年、19の単位司政連から総額701万4000円もの「寄附金」(e2)が、日司政連への「会費」(e1)に加え、会費(e1)とは明確に区別して支払われていたことが判明した(これらは、「商業・法人登記開放阻止」と名目も明記されているものが多い)。
 5.2. ところが、同年分の日司政連報告書には、「政治団体からの寄附」は「0」と記載されている(E)(→0.3.2.4.)。
 5.3. この悪質な虚偽記載は規正法12条違反となり、25条により五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金の対象となる。
 5.4. さらに沸いてくる疑問もある。
  5.4.1. 平成18年分日司政連報告書には、「個人からの寄附」が「会費」とは別に1849万円以上もあったとされ、その備考欄に「会員個人(18、083人)」と記載されている(C)。
  5.4.2. この人数は、この年に会費を納めた員数(B)と同じで当時の全司法書士数に近いが、ほぼ全司法書士から寄附を受けていたとは到底考えらない。
  5.4.3. 上記(→5.2.)のように、政治団体からの700万円以上の寄附をゼロと偽って記載していることからして、「個人からの寄附1849万円」という記載も真偽が問われるであろう。
 5.5. 日司政連は、「行政書士に対する商業・法人登記開放阻止」運動で、日本司法書士会連合会(日司連)と深く「連携」し、国会議員・政党・省庁等に対し活発に働きかけをして、最終的に両団体の連名で確認書を交わしていた。
 5.6. この運動に関する収支状況の不透明さをめぐっては、今後、日司連と日司政連両者の会計帳簿等を検証していくことも必要になるであろう。

6. 小括 <集計表から見えてくること>
 6.1. 日司政連による報告書の虚偽記載は、単純な記載ミスや仕訳項目の誤りなどといった形式的な違反ではなく、
  ア 無届政治団体からの違法な会費(=寄附)を受領していること
  イ 単位司政連からの会費ではない出所不明の収入金のあること
 などを、不特定大多数による「個人会員からの会費」とみせかけ隠蔽するものであり、極めて悪質だといわざるを得ない。報告書には、個人の党費又は会費の明細は一切不要とされており、現行規正法の盲点が悪用された形だ。
 6.2. 各単位司政連の報告書からは、各司法書士会が日司政連の構成員である単位司政連(無届けも含む)に対し、事務所の無償提供を筆頭とする違法な利益供与を多数おこなっている実態も浮かび上がった(当ブログ第258号第277号など参照)。
 6.3. 司法書士会と政治団体とのズブズブの底なし沼へと通じる扉を開ける鍵は、日司政連報告書という“パンドラの箱”に眠っていたのである。もっとも、箱に“悪”を閉じ込めたのは神ではなく司法書士で、司法書士が悪を放置したまま再びフタを閉じても、そこに希望など残っていないであろう。
 6.4. “常に法を拠り所として、犯罪や不正をにくみ正義をつらぬく”。近ごろ映像化された「坂の上の雲」の名場面として語られたセリフであるが、この立場に立脚するのが法律家の基本ではなかろうか。日司政連という集団には、その姿勢がまったく見受けられないのである。

(本文及び表の記載については、2009年11月30日現在での公開情報に基づいております。)

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▲相次いで報道された日司政連収支報告書の虚偽記載問題。日経の取材に対し日司政連は、「今後収支報告書を訂正するための調査を始め、正すべきところは正したい」としている。今年7月にすでに問題を認識しているはずなのだが…

*参考資料
日本司法書士政治連盟の政治資金収支報告書写し
平成18年分(670.7K) 平成19年分(794.3K) 平成20年分(767.9K)

*関連記事
日司政連の政治資金収支報告書に虚偽記載(第236号)
日司政連幹部らを政治資金規正法違反の疑いで刑事告発(第298号)
 そのほか、右サイドバーに「司法書士界における憲法と政治資金をめぐる問題に関する記事一覧」を掲げています。
・上脇博之氏(神戸学院大学大学院教授)のブログ「ある憲法研究者の情報発信の場」にも関連記事があります(→http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51284295.html

*参考文献
「逐条解説政治資金規正法」第二次改訂版、政治資金制度研究会編、ぎょうせい(2002-8)
「政治資金ハンドブックQ&A」第五次改訂版、政治資金制度研究会編、ぎょうせい(2009-6)

(第288号)

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コメント

これは凄い調査・分析ですね。
じっくり拝読させていただきます。

投稿: 上脇博之 | 2009年12月12日 (土) 17時19分

 上脇先生、コメントありがとうございます。

 今回のような調査分析を可能としたのは、政治資金規正法の改正により、2009年1月から、従来の「閲覧」に加えて、収支報告書の写しの交付を請求することが可能になったからです。

 それでも、要旨公表日から3年間分に限られていたり、各自治体ごとに取扱いがバラバラであることなど、改善すべき課題は多々あるように思います。おおむね千円以下の手数料納付を、自治体によっては、自治体独自の収入証紙や現金書留に限る取扱いをしているなどの公開方法に関する疑問も感じました。
 総務省所管団体分のように、インターネット上で公開されるのが理想です。自治体職員にも負担がかからず、政治資金規正法の立法目的や基本理念にも適うのではないかと思います。政治資金の透明化がいっそう進むことを期待しています。

投稿: 広田博志 | 2009年12月13日 (日) 16時25分

 記事公開後、内容の正確性を高めたり読者の理解に役立つよう、記述を改めた部分があります。事実関係に影響を及ぼさない補訂は、個別に通知をせず今後も行うことがあります。利用にあたっては最新の記事をご使用下さい。

 なお、記事で紹介した日本経済新聞の記事の一部は、「NIKKEI NET」で3カ月間読むことができます。記事のリンクは以下のとおりです。

 司法書士政治連盟、寄付を「個人会費」と記載 傘下組織拠出
 http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091212AT1G1103D11122009.html

 ただし、「NIKKEI NET」の記事はかなり要約されていますので、新聞本紙をご覧になることをお薦めします。日本経済新聞社にお問い合わせいただくか、各地の図書館でご覧いただけると思います。図書館によっては、検索が容易な「日経テレコン21」を利用できるところもあります(日経テレコン21で記事のpdfを確認済み)。

投稿: 広田博志 | 2009年12月13日 (日) 16時26分

政治資金収支報告書の入手に手間と費用と時間がかかることは、私どもも痛感している問題です。地方分もインターネット公表されるよう、これまで法律改正を求めてきましたので、コメント中のご主張には同感です。

なお、私のブログには、ある人物が私を批判するコメントを2度書き込んでいます。この人物は虚偽報告した当人でしょうかね?

投稿: 上脇 | 2009年12月16日 (水) 10時41分

 上脇先生、ご指摘のブログコメントを確認しました。
 彼が虚偽報告をした当人か否かについては、あれだけでは判断できません。ただ、批判や意見といった類のものではなく、幼児的な放言としか言いようがありません。引き合いに出した話も牽連性が皆無で、おっしゃるとおり文字通りの意味不明です。

 彼の主張は、善解するに「政治資金規正法ごとき違反は問題ではない」ということのようです。それが事実だという認識なら無知ですし、意見だとしてもあれでは説得力の“せ”の字もないように見受けます。唯一、『くだらんやつの言う事は無視したほうがいい』という「おせっかい」だけは傾聴に値しますが。

投稿: 鉄まんアトム | 2009年12月16日 (水) 15時46分

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