頼れるイワコクに頼ってみる
また国語辞典を買ってしまいました。
買ったのは、最も標準的な語釈だとされ定評の「岩波国語辞典」。10年ぶりの改訂となる第七版が発売されることを先月、新聞広告で知りました。書店に立ち寄った際ふと目に留まり、とりあえず辞書は足りているのに、つい買い求めてしまいました。
文章を書くときのマメな辞書引きは、最近ではすっかり習慣となりました。事務所には「新明解国語辞典」第六版を、自宅には「三省堂国語辞典」第六版を、それぞれ机の上の手の届くところに備え置いています。
両者うまく棲み分けてきましたが、買ってしまった「岩国(いわこく)」をどちらに置くかで悩むことになりそうです。岩国とは対極の感がある「新解(しんかい)」が押し出されるか、現代語辞典としての使いやすさで定評ある「三国(さんこく)」に取って代わるか、はたまた岩国が両者に阻まれ“参入”を断念するか。
最新版岩国のセールスポイントは、『頼れる「岩国」最新版』。
書店で並ぶ岩国には、こう書かれた目立つ黄色の紙が巻き付けられていました。調べたら、この紙のことを「帯」「帯紙」「腰巻」などというそうです。ためしに、「帯」を三国で引くと、「本の表紙や箱の下のほうに巻きつける、宣伝文などを印刷した紙。腰巻き。おびがみ。」とありました。帯紙や腰巻の語釈でもこれを参照しているため、3語いずれを引いても辿り着けるよう工夫されています。新解(第四版)でも同様です。
では、岩国はどうでしょうか。‥‥‥なんと、岩国には、3語のいずれにも“この黄色の紙”を説明した語釈が載っていません。自らの存在を形づくっている、その一部品の説明ができていない辞書。岩国は、ほんとうに「頼れる」のか、頼っていいのか!?
ちなみに、岩国には「頼れる」もなく、三国には載っていました。ニオイは岩国のほうが好みなんですけど…。
*関連記事 執筆環境(第10号)
(第293号)
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コメント
日記見させていただきました。
私は旺文社の国語辞典を持っていて愛用しているのですが
「頼れる」は載っていませんでした。
広辞苑で調べても載ってなかったのですが、よく見たら
「頼る」を調べると、岩波にも最後のほうに、
活用法の説明で、下一段活用として扱われていました。
よかったら見てみてはいかがでしょうか。
とても内容の濃い日記です。これからも運営がんばってくださいね
投稿: 国民 | 2010年2月 2日 (火) 21時27分
国民さん、はじめまして。コメント(+励ましのお言葉)ありがとうございます。
ご指摘の点をさっそく確認してみました。動詞の活用法の説明で下一段活用というと、岩国第七版ではp1636になりますでしょうか。当方の見方が悪いのか、辿り着けませんでした。
ところで、「頼る」を調べ直すと、五段活用の他動詞と説明されています。う~ん、困った…。そこで見方を変え、「れる」を調べてみました。自発・可能・受身・尊敬を表す助動詞で下一段活用だと。なんか答えに近づいてきたような…。
話を戻し、では、「頼れる岩国」とは何を意味している表現なのだろう? 考えていくと、「れる」が表す4つ全部あてはまってもおかしくないように思えてきました(頭の中は大混乱)。でも、まさか、“尊敬”なんかじゃないですよねえ(^^ゞ)
この時点で1つのことに気付きました。私の文法の理解は小学生レベルだし、辞書も全然使いこなせていないなあ、と。ちなみに、文法は大の苦手分野で、国語の成績は常に低位でした。
*p.s. 大辞林第三版によると、「頼る」の語釈の中に可能動詞として「たよれる」が載っていました。「可能動詞」も立項されていて、「五段(四段)活用の動詞が下一段活用に転じて可能の意味を表すようになったもの。例えば,「読む」「書く」に対する「読める」「書ける」などの類。命令形をもたない。近世江戸語に発生し,明治以降次第に普及した。」そうです。
投稿: 鉄まんアトム | 2010年2月 3日 (水) 11時10分