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阿久根市長の障害者蔑視で思うこと

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長のブログ「住民至上主義」がまた、話題になっています。最近取り上げられているのは、11月8日付けの以下の部分です(原文のまま)。

高度医療のおかげで以前は自然に淘汰された機能障害を持ったのを生き残らせている。結果、擁護施設に行く子供が増えてしまった。

 この記述に対し、福祉や障害者関係の団体がそろって抗議、市長に記述の削除や謝罪を求めるといったことが報道されています。誰か公人がこのような“失言”をするたび繰り返されていることです。
 私は、こうした定番の騒動に疑問を感じてしまいます。今回の件で書かれていること自体は、表現にこそ問題あれ、事実そのものだと思うからです。

 竹原市長は、その事実自体が問題だという認識のようなので話にはならない(だからそれが問題にもなっている)のですが、問題はその事実ではなく、その事実を踏まえて社会や人々がどうあるべきか、ということにあるのではないでしょうか。言い換えると、そういう事実が現にあるのだから、そうなってしまった人たちを支える福祉が社会に必要だということです。なのに、わたしたちの社会では、福祉はもちろん人々の理解も決して十分とはいえない。こちらが問題(の本質)なのです。
 そうなってしまっている問題の直接の責任は政治(立法や行政)にあります。「高度医療のおかげで‥‥増えてしまった」ことへの対応は政治がしなければなりません。問われるべきは、政治家としてこの事実を認識した竹原氏の政治手腕なのです。
 しかし、竹原市長によると、この問題は、いまや謝罪を求める側との「戦い」なのだとか。それでは、問題がこのブログ記述そのものとなり、記述全体の趣旨からして暴言暴走と非難されても仕方ありません。
 竹原市長は、要するに、NICUで生き残り重度重複障害を抱えた私の二男のことを述べておられるわけです。この記述が政治ではなく障害者へ悪意を持って向けられているのだとしたら、私は許しません。誰も好きこのんで障害を抱えているわけではありません。今日の健常者だって、明日は障害者かもしれないのです。「住民至上主義」をかかげる竹原氏。障害者も同じ住民であることを忘れてはなりません。

 思うに、問題発言やいわゆる差別表現を社会の表面からだけ消して、それがいったい何になるというのでしょう。
 その場しのぎで言葉だけを消してしまおうとするから、問題が社会に存在しないものとされ、いつまで経っても問題自体の改善や解決が図られないのではないでしょうか。問題発言だけが取り上げられ一人歩きをして、本質であるべき問題は置き去られ人物だけに注目が集まる繰り返し。問題発言が続く背景には、社会にその問題が存在する裏返しでもあるのです。隠そうとすればするほど差別が助長されているように思えてなりません。

 障害者の表記をめぐる議論についてもそうです。「障害者」を「障がい者」と書いたところで、障害者が抱えている「害」はなくなりません。
 すでに70カ国以上が批准している障害者権利条約が国連で採択された2006年、日本では障害者自立支援法が施行されました。障害者が自立しようとすればするほど負担が増えるようになったいまの日本は、この条約を批准できる環境にありません。障害者へのバリアフリーは、人の内心や制度といったソフト面において進まないと意味がないのです。竹原氏がうわべだけの謝罪をして問題が沈静化したところで、それは障害者問題の本質には全くつながらないと私は考えます。

(第291号)

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コメント

管理人さん、はじめましてです。

私は政治を政治家だけに任せてる市民にも責任があると思います。市民も普段から監視の目を怠らずにいれば、出直し選挙で再度、竹原市長を選ばなかったのではないでしょうか。
竹原市長が良い悪いは別にして、これを機会に市民の政治参加が進んでいけばいいですね。

投稿: さとし | 2009年12月22日 (火) 01時59分

 さとしさん、コメントありがとうございます。
 ご主張は概ね同感です。ただ、広く市民に責任を求めてしまうと、竹原市長を選ばなかった「少数」にも責任があることになってしまいます。この点が気がかりです。
 市民が政治参加をするとしても、多数決が絶対ではない。多数、すなわち選挙で信任を得た者であっても、法の支配や基本的人権を侵してはならないといった近代国家の基本原理を共通の理念としていることが大前提です。

投稿: 鉄まんアトム | 2009年12月23日 (水) 09時23分

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