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石川県知事谷本正憲のたわごと

 2009年11月1日付け朝日新聞東京本社版朝刊のオピニオン面“耕論”欄に、「地方空港の生きる道」特集が組まれていました。そのうちの1つに、谷本正憲石川県知事のインタビュー記事が掲載されていました。
 採算が取れず必要性にも乏しいといわれる地方空港の問題がクローズアップされる中で、能登空港はその筆頭格であるにもかかわらず、むしろ“優等生”として取り上げられることが多いようです。“利便性高め「地域の拠点」に”という見出しのついたこの記事も、また同様でした。
 しかし、私は、この見方にいつも疑問を感じますし、マスコミでの取り上げられ方にも不満を感じています。能登に空港を誘致したのが谷本知事なら、能登の鉄道を引き剥がしたのも谷本知事だからです。

 さて、今回の新聞記事から気になる部分を抜き出してみます。

(1) 03年開港の能登空港は、1日2往復、166人乗りの全日本空輸機が羽田空港との間を行き来する小さな県営空港だ。定期便はこれしかない。県内に小松空港があるのに、金沢から1時間半もかかる能登半島の真ん中に、なぜ空港が必要なのか。そんな疑問は、陳情先の国からも出た。「航空需要があるのか」。私は「地域活性化の拠点づくりなんだ」と反論した。

(2) 当初の交渉相手だった全日空…は1往復を主張したが、これでは首都圏から日帰りできない。空港は乗客に見捨てられてしまう。客が減ると、航空会社は減便する。不便になって客はさらに減る。この悪循環は何としても避けたかった。

(3) 搭乗率を上げるために、空港の利便性を高める工夫をした。タクシー会社にジャンボタクシーを用意してもらい、通常は和倉温泉まで1万5千円程度かかるところを、1人1300円の定額にした。

(4) 乗客数はピーク時の年間16万人から、今は15万人に減っている。もちろん空港経営は赤字だ。建設費239億円の45%は県が負担し、維持費に年2億円かかる。でも、地域に果たす役割と経済効果を考えれば、お釣りがくるのではないか。

(5) 両者(注:自治体と航空会社)が同じ船に乗り、努力しあうことが大切だ。

 まず、(2)。谷本知事は、のと鉄道(能登線穴水〜蛸島間61km)の運行本数について減便に減便を重ね、その悪循環がもたらす乗客減少を口実に能登線廃止の結論を導き出した張本人です。谷本知事は、能登線減便の理由、その減便がもたらした廃止という結論を、いま、どのように説明するのでしょうか。
 (5)のような視点をもつ谷本知事は、1994(平成6)年からずっと石川県知事であり、のと鉄道株式会社の取締役会長(すわなち、どちらもトップ)の地位にあります。

 つぎに、(4)について。のと鉄道株式会社の平成17年3月期有価証券報告書(有報)によれば、「能登線穴水・蛸島間については、利用客が少なく鉄道の特性を発揮できないことから…廃止しました」と書かれています。以下は、能登線廃止前2年間の輸送人員です。
   種 別    平成15年度    平成16年度  (単位:人)
  普通利用客   203,649    247,409
  定期利用客   500,400    441,540
   うち通勤    (49,680)    (45,900)
   うち通学   (450,720)   (395,640)
  合    計   704,049     688,949
   ※数値は、前出の有報より抜粋

 つまり、能登線の利用客は、年間70万人前後ということが読み取れます。
 一方、能登線の年間赤字額は、県議会や各紙報道によると「約2億円」でした。
 年2億円。空港も鉄道も維持するにはどちらも年2億円。同じお金をかけて、15万人が利用する1日2便が東京を往復する空港を維持するのか、70万人が現に利用している1日8便が地域を結んでいる鉄道を維持するのか。「地域に果たす役割と経済効果」はどちらの方が高いのでしょうか。
 この択一を迫られたとき、県知事が守るべきはどちらなのでしょうか。谷本知事は空港という答えを出し、石川県民の多数はその谷本知事を選挙で支持しました。残念ながら、このことは、いまの石川県民の鉄道に対する執着のなさを裏付ける事実でもあります。

 それにしても、(1)の意気込み、(2)の認識、(3)の施策、(4)の経済感覚、(5)の視点。これらの素養や見識が谷本知事に備わっていながら、知事は、どうして能登線では、いきなり全線もろとも廃止としてしまったのでしょうか。
 有報を見て読み取れるのは、能登線の利用者の過半は通学に利用していた生徒児童、そのほかは車を運転できないお年寄りたちです。まさに地域で暮らす主役の人たちです。その大半は、観光、すなわち空港とは関係のない生活をしています。
 谷本知事は、地域住民が日常生活に関係のない山の中の能登空港に県の出先機関を集め、そこに300人の職員を配置したことを力説し、空港が「地域の拠点」になると。しかし、地域住民が容易にアクセスできず、また、アクセスする必要もない山の中に県の機関を集めて、どうしてそこが「地域の拠点」になるというのでしょうか。
 私には、いまでも、能登空港が「地域活性化の拠点づくり」にどうしても必要だという理由がわかりません。地域を結ぶ60キロ以上に及ぶ鉄道と天秤にかけ、能登線という鉄道を放棄してまで空港を選び取らねばならぬ意義も理解できません。谷本知事のいう「地域」とは何を指すのでしょうか。次から次へと深い疑問が湧いてきます。

 記事の(1)部分のあとには、「能登は自然が豊かで食材が豊富、それに人情も厚い」と続いています。おらが鉄道めくられても選挙で票を入れる能登の人たち。そりゃあ、さぞかし“人情も厚い”と有り難がられることでしょう。
 朝日新聞には、赤字地方空港の救世主のごとく谷本知事を片面的に取り上げるだけでなく、谷本知事がその豊かな自然に巨額のコンクリートを流し込み、それでできた空港と引き換えに地域で生活している人の足を奪い去ったことも、忘れず漏らさずきちんと報道してほしいものです。

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 荒れ果てた故郷の駅のホームに立つ。右手前の建物は放置されたままの駅舎。かつて駅員が配置され急行が停まった駅だが、見る影もない。のと鉄道能登線鵜川駅跡にて2009年9月20日撮影。

(第269号)

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コメント

痛烈な谷本県政批判、気分爽快です。

投稿: 中井 正信 | 2015年11月16日 (月) 16時12分

中井正信さん、コメントありがとうございます。
もう6年も前の文章ですので読み返してみました。奪われたもの失ったものの大きさを改めて感じます。

投稿: 鉄まんアトム | 2015年11月20日 (金) 15時14分

※お知らせ

2016年7月12日午後7時51分頃、本記事にコメント投稿がありました。
投稿されたコメントの本文(全27文字)それ自体は一般的な事柄で異論はないものの、内容が本記事とは全く関係しないものであり、かつ、本記事と関係する余地のない不特定多数向け匿名掲示板のURLが入力されているため、本記事の読者に無用な誤解や混乱を生じせしめる恐れが否めないものとお見受けいたします。

よって、当該コメントの公表は差し控えます。悪しからずご了承くださいませ。

投稿: 鉄まんアトム | 2016年7月13日 (水) 12時22分

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