岩手県司法書士会に政治資金規正法違反の疑義
当ブログにおいて、日本司法書士政治連盟(日司政連)の政治資金収支報告書の虚偽記載について取り上げてきました(第236号ほか)。
この調査を進めていくと、全国各地の司法書士政治連盟や司法書士会で、政治資金規正法に抵触しているのではないかという疑いある事実が次々と見つかっています。今回は、岩手県について取り上げてみます。
まず、岩手県司法書士会について。
岩手県司法書士会の平成19年度決算書では、「助成金」として「500,000円」が支出されており、摘要欄に「政連岩・岩青司他」と記載されています(平成20年度も同様)。
平成19年度 決算書 支出小科目
(当初公開されていた岩手県司法書士会ホームページの該当部分をPDF化したもの)
以下は、「政連岩」が「日本司法書士政治連盟岩手会」の略称であることを前提にして話を進めます。
つぎに、日本司法書士政治連盟岩手会について。
日本司法書士政治連盟岩手会の平成19年分政治資金収支報告書には、「法人その他団体からの寄附」の記載は全くありません(平成20年分も同様)。
http://www.pref.iwate.jp/~hp0736/19syusihokokupdf/pdf/sonota/0/575.pdf
(岩手県のホームページに移動)
上記のとおり、岩手県司法書士会から支出されたとされる50万円のうち、いくらが「政連岩」に対する「助成金」であるのか内訳は不明です。しかし、たとえ1円でも、「法人その他団体からの寄附」があれば報告書に記載する義務があり、「不記載」は政治資金規正法12条違反となります。
では、記載をすれば違法でないかといえばそうではなく、たとえ1円でも金銭の授受があれば、司法書士会も政治連盟も、政治団体以外の団体から政治団体への寄附を禁止する政治資金規正法21条に違反することになります。12条違反は25条で、21条違反は26条で、それぞれ刑罰が定められています。
強制加入団体である司法書士会から、政治団体に「助成金」が交付されているとすれば、政治資金規正法違反だけではなく、思想及び良心の自由(憲法19条)の観点から強制加入団体は政治献金や政治団体への寄附を行うことができないとした南九州税理士会事件の最高裁判所判決(最三小判平成8年3月19日)に明らかに背く行為です。なお、憲法上の問題点については、東京司法書士会が上記判決後に政治家の資金管理団体へ寄附をしていた事実を確認しましたので、追ってその問題を取り上げる際に稿を改めて論じることにします。
さて、話は助成金だけでまだ終わりません。
日司政連岩手の平成20年分政治資金収支報告書によると、事務所所在地及び事務担当者の電話番号は岩手県司法書士会と同一で、司法書士会内に事務所を置いていることが伺えます。なのに、同報告書「事務所費63,980円」の内訳は通信費・雑費・印刷費のみで、賃借料・使用料等の支出はゼロ。報告書の記載は、当ブログで既に報じた大阪司法書士政治連盟の件(第258号)と同様、岩手でも政治団体の事務所が司法書士会から無償で提供されている事実を裏付けるものです。この場合、賃料相当額が寄付の授受にあたり、両者とも完全に違法です。
このように違法な寄附の授受が複数なされている実態。岩手県の司法書士は、これらの問題をどのように考え対応するのでしょう。全国青年司法書士協議会(全青司)のいまの会長は岩手の司法書士。全青司は、「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与する」ことを目的とする任意団体です。全青司会員3000人の法的感覚にも注目しましょう。
(第272号)
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