京都司法書士会内に自民党支部の事務所を発見!
当ブログにおいて、日本司法書士政治連盟(日司政連)の政治資金収支報告書の虚偽記載問題について取り上げています(第236号ほか)。また、司法書士会における政治資金規正法違反の疑義も取り上げています(第272号ほか)。これに関連して、今回は京都府について取り上げてみます。
京都に関し当方宛てに寄せられた情報によれば、京都府には司法書士関連の政治団体に加え、政党支部(政治資金規正法上は政治団体の一つであり、政党に分類されます)もあるのだそうです。その情報を裏付けるため調査した結果、
・「日本司法書士政治連盟京都会」(日司政連京都)
・「自由民主党京都司法書士職域支部」(自民党京都司法書士支部)
以上2つの団体がたしかに存在していることがわかりました。そこで、知人を通じ、京都府選挙管理委員会から両団体の政治資金収支報告書写しを取り寄せ確認しました。そうしたところ、なんとその両方が、主たる事務所を「京都市中京区柳馬場通夷川上る五丁目232番地の1京都司法書士会内」と定めていることが判明しました。
報告書(※末尾参照)によれば、両団体とも、少なくとも2006(平成18)年から2008(同20)年までの3年間、経常経費(人件費、光熱水費、備品・消耗品費及び事務所費)の支出はすべてゼロ。両団体の報告書に記載された「事務担当者」はすべて同一人物で、京都司法書士会の事務局職員。政治団体に加え政党支部の事務所までもが司法書士会から無償で提供されている驚愕の事実も明らかになりました。
この場合、経常経費相当額の全額が京都司法書士会による寄附にあたりますから、1)両団体とも、この事実を報告書に記載していないので「不記載」にあたり規正法12条違反となります。自民党京都司法書士支部は、独立した政治団体ではなく、自由民主党という政党の一部組織ですから、その違法行為は自民党本部にも影響を及ぼします。
また、2)京都司法書士会及び日司政連京都は、政治団体以外の団体から政治団体への寄附を禁止する規正法21条にも違反することになります(注:自民党京都司法書士支部は「政党の支部」にあたるため、規正法21条4項に定める区域を単位として設けられたものであれば、同支部分については21条違反になりません)。
このような事務所一体化は、新潟の件(当ブログ第276号)で指摘したように、規正法の観点からのみならず、思想及び良心の自由(憲法19条)の観点からみて深刻な問題です。最高裁判所(最三小判平成8年3月19日)は、強制加入団体が政治団体へ寄附を行うことができないと判断していますし、大阪高等裁判所(大阪高判平成20年11月12日)も、行政書士会が政治団体に対する金員の寄附と同視しうる行為が行政書士会の目的外行為として違法・無効だと判断しています。
にもかかわらず、京都司法書士会内には、政治団体に加え、政党支部の事務所まである。そのうえ、ヒト・モノ・ハコが全部タダ・・・。要するに、京都司法書士会は、最高裁判決を無視し、大阪高裁判決も省みず、政治資金規正法にも違反する行為を繰り返しているわけです。
京都司法書士会のホームページには、「∵となりの司法書士はたのもしい法律家」というキャッチフレーズが掲げられています。しかし、法を無視する集団が、果たして「法律家」と呼べるのでしょうか。いまの状態では、自ら法律家を名乗るだけでもじつに僭越、頼もしいなどと口が裂けても言えません。現実は、さもしい限りの実態なのです。
京都府の司法書士は、この問題をどのように考え対応するのでしょう。事実上相手方の存在しないこの問題は、自分自身だけで解決できます。言い換えれば、京都司法書士会が自ら解決するかしないか、だけです。京都司法書士会の「たのもしい法律家」ぶりを注目して見ていくことにしましょう。
ちなみに、京都同様の事例は、ほかにもあるという情報の提供をいただいております。追って、稿を改め取り上げることになるでしょう。新潟同様、この記事も“小括”にすぎません。
* * *
*参考資料(pdf)
「日本司法書士政治連盟京都会」の政治資金収支報告書写し
平成18年分(656.5K) 平成19年分(722.0K) 平成20年分(637.7K)
「自由民主党京都司法書士職域支部」の政治資金収支報告書写し
平成18年分(274.1K) 平成19年分(268.5K) 平成20年分(279.7K)
*関連記事日司政連による収支報告書虚偽記載問題の要点整理(第288号)
日司政連の政治資金収支報告書に虚偽記載(第236号)
司法書士関連の政治団体による事務所無償使用問題(第258号)
岩手県司法書士会に政治資金規正法違反の疑義(第272号)
新潟県司法書士会にも政治資金規正法違反の疑義(第276号)
続・京都司法書士会内に自民党支部の事務所を発見!(第280号)
山口県司法書士会内にも自民党支部の事務所を発見!(第281号)
(第277号)
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コメント
教えていただき、ありがとうございます。
今時間がないのですが、この問題は再度ブログで取り上げようと考えていましたので、時間を作ってきちんと拝読して、内容をじゅうじつっせていただこうと思っています。
今後も、報告書の紹介を含めて、じっくり拝読させていただきます。
投稿: 上脇博之 | 2009年11月19日 (木) 23時04分
上脇先生、コメント頂きありがとうございます。
本件記事は、今年6月、毎日新聞が報道し、先生がブログで取り上げた件(※下記参照)と同様の問題です。法律に基づき設立された強制加入の公益法人である司法書士会において、政治団体や特定政党支部との一体化懸念は大問題だと考え、公表した次第です。
当ブログ記事の引用はご自由になさっていただいて構いません。お役に立てればむしろ幸いです。
「石川県志賀町役場が政党支部の事務所として届出されていた!」
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51195888.html
投稿: 広田博志 | 2009年11月20日 (金) 10時51分