去りゆく尾瀬の秋風景(前編)
行ったばかりなのに、また行きたくなる。尾瀬はそういうところです。
10月4日に行ったものの時間の都合で尾瀬ヶ原に降りられず、今年はもうそれでお仕舞いと思っていながら、それから1週間もたたない10日にまた行ってしまいました。家族はおろか、自分自身でも驚くほど今年は尾瀬に熱を浮かされています。
わずか6日間でも紅葉は進み、“過去10年で最強”という台風も通り過ぎていきました。紅葉は最盛期を過ぎたようで、木道には落ち葉が折り重なっていました。
この日の朝は氷点下。霜が降り、濡れた落ち葉と相俟って木道は大変危険な状態に。半歩ずつのへっぴり腰でしか前に進めません。軽アイゼンが必要なレベルで、前後で転倒する人が続出しました。鳩待峠から山の鼻へ下る登山道の紅葉は見事でしたが、足下に気を遣うと紅葉は見られず、紅葉に目をやると途端に滑る。山の鼻まではふだんの倍以上もの時間がかかりました。
なんとか無事、山の鼻に辿り着いて一服。すっきりとした青空に尾瀬ヶ原へと進みたくなるのをガマン。午後は天気が崩れるという予報なので、先に研究見本園をまわっておくことにします。
研究見本園にある池塘に行ってみると、そこには、これまで写真でしか見たことのない尾瀬の秋風景が広がっていました。一面の草紅葉、落葉して白い幹を見せるダケカンバの林、樹林帯の紅葉に抜けるような青空。…人がいなくなるのをじっと待ち、ローアングルにて“逆さ至仏”を狙いました。広角一杯24mmにしても画面から溢れてしまうほどの雄大さです(山の鼻にある尾瀬植物研究見本園にて)。
尾瀬ヶ原に歩み出てみると、もう空には雲が広がってきていました。雲の切れ間から太陽が出るスキを狙っても、その瞬間に行列がやってきたり思うようなタイミングで写真が撮れません。そんな私を嘲笑うかのように、カモは思いのまま気持ちよさそうに泳いでいます(尾瀬ケ原上田代の池塘にて)。
尾瀬ヶ原を東に進むと、湿原に突き出るよう丘が近づきます。ふだんは池塘ばかりに目がいき、気にもせず通り過ぎている場所ですが、今日は違って見えました。錦織り成す丘はどの時期よりもカラフルで、尾瀬の風景の豊かさを実感します。写真では湿原に陽があたらず、くすんで見えてしまうのが残念ですけど(尾瀬ケ原上田代の牛首付近にて)。
牛首分岐からヨッピ道へ進むと、人が少し減りました。池塘越しに景鶴山を臨むポイントで立ち止まり、景鶴山と湿原の両方に陽があたるのを待って撮影しました。ヒツジグサの紅葉はここがいちばん見事でした(尾瀬ケ原中田代のヨッピ道にて)。
ヨッピ橋に着く頃には燧ヶ岳が雲に隠れ見えなくなりました。竜宮へ向かう途中、後ろを振り返ると景鶴山の方からも雲が降りてきました。すると、あっという間に雨が降り出しました。
竜宮に着く頃に雨はいったんあがったものの、それからは降ったり止んだりの天気になってしまいました。山の鼻への引き返しで、牛首を過ぎ上ノ大堀川を渡ると雨はいよいよ本格的に。このあと鳩待峠まで天気は回復せず、見納めの尾瀬ヶ原は雨の中でした。
前編(湿原編)は以上です。
よろしければ、ぜひ後編(樹林編)もお楽しみ下さい。
*写真は、すべて2009年10月10日にLUMIX DMC-LX3で撮影
*そのほかの尾瀬関連記事は、カテゴリ「尾瀬」をクリックしてご覧下さい。
(第262号)
| 固定リンク
コメント
記事の中で「見納めの尾瀬ヶ原は雨の中」と書きました。確かにそのとおりだったのですが、麓の片品村戸倉まで下りてきたら晴天でした。戸倉と鳩待峠をピストン輸送しているバスの運転手さんに尋ねたら、「戸倉は降っていない」とのことでした。
忘備録として、尾瀬の天気についてコメントしておきます。
尾瀬は、群馬・福島・新潟の3県にまたがる地域です。天気予報の区分でいえば、それぞれ、群馬北部・福島会津・新潟中越ということになります。尾瀬ヶ原の西半分以上は群馬県片品村なので、ついつい群馬北部の予報を見がちですけど、これがあまり参考になりません。これまでの経験からいって、新潟中越の予報を参考にした方がいいようです。この日もそうで、群馬北部の予報は終日晴れ、新潟中越の予報は午後から雨でした。
もっとも、尾瀬は山岳地帯ですから、天候はめまぐるしく変わります。当日朝の予報ですら平気で外れます。予報を過信せず、雲の動きや形、風のようすなどを見極めながら、その場で“もしや”を基準に判断することが大切なのかもしれません。
ちなみに、私が行った翌日(11日)、至仏山と燧ヶ岳に初冠雪が見られたそうです。去りゆく秋を追うように、尾瀬に雪氷たちが迫っています。
投稿: 鉄まんアトム | 2009年10月13日 (火) 08時42分