ヤマドリゼンマイ燃ゆる初秋尾瀬ヶ原
みたび尾瀬に行ってきました。
9月中旬のごく短期間だけというヤマドリゼンマイが黄や橙に染まるようすを、一目みたいと思って訪れました。この日、尾瀬の最低気温は4℃。すでに尾瀬ヶ原の草もみじは始まっていて、今年は、例年に比べ秋の深まりも早いようです。
きょう目指すのは、中田代のヨッピ橋と竜宮十字路を結ぶ“ヤマドリゼンマイロード”。この道の両脇にはその大群落が広がっています。雨のち曇り時々晴れ一時にわか雨で強風という天気の中、雨具着用で尾瀬ヶ原を東進します。
山の鼻から2時間、つい1カ月前には緑一色だったゼンマイロード周辺は、緑、黄、橙、赤、茶がパッチワークのごとく広がる風景に変わっていました。そこには、狙いどおりの色合いをしたヤマドリゼンマイも。この燃えるような秋景色の中を1時間半ほど行ったり来たり。訪れる人もまばらな9月上旬の平日、続く木道の先にも後にも人はおらず、しばし尾瀬をひとりじめです。
ただ…。
こうして色とりどりの黄葉を楽しめるのはいいのですが、ヤマドリゼンマイの勢力拡大は、一方で尾瀬ヶ原の乾燥化を意味しています。乾燥化の原因の1つに考えられるのが、戦中戦後のどさくさに紛れて工事がなされ、いまに続く尾瀬沼からの発電用取水です。取水により、沼尻川(ぬしりがわ)を経て尾瀬沼から尾瀬ヶ原に流れ込んでいた水は確実に減っています。「環境に影響を与えない」はずがないと思います。
いまこそ「誇りと責任を持って」、取水の中止や尾瀬における水利権の放棄といった英断を、「尾瀬での自然保護の取り組み」を大々的に宣伝している東京電力には期待しています。
さて…。
行きに雨だった下ノ大堀の景色をまた見たくなり、帰りはヨッピ道経由ではなく来た道を引き返しました。周囲の山の木々は濃い緑をしているのに、下ノ大堀でも草紅葉やヤマドリゼンマイの黄葉が広がり、ヤマウルシや池塘のヒツジグサの葉は赤く色づいています。初秋の尾瀬の何とも印象的な光景です。
尾瀬ケ原中田代 下ノ大堀の白樺林と景鶴山(右上端)
尾瀬ケ原中田代 下ノ大堀川近くでのヒツジグサとヤマドリゼンマイ黄葉の競演
*写真は、すべて2009年9月10日にLUMIX DMC-LX3で撮影
今年は、7月から月ごと尾瀬に足を運びました。毎回ほぼ同じ場所を歩いても、それぞれ景色は異なり移ろう季節を感じてきました。いまは、上質のウイスキーを口に含んだときのように、深く、そして長く続く余韻を楽しんでいます。
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(第254号)
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