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都立小児病院を守る最後のチャンス

 私は、これまでこのブログで、都立清瀬小児病院の存続を求める意見表明を行って参りました。都議会への請願署名を呼びかけ、多くの方のご賛同ご協力も頂きました。その節は、本当にありがとうございました。
 しかし、都議会は2009年3月27日、清瀬小児病院、八王子小児病院及び梅ヶ丘病院の3病院を廃止する条例改正案を、自民、公明両党の賛成多数で可決成立させてしまいました。同じ日、病院存続を求める3件の請願(当ブログで署名を呼びかけたものを含む)は、上記両党に加え民主党も反対していずれも不採択に終わりました(*1)。

 このまま行くと、来年3月には3病院とも廃止され、跡地も処分されてしまいます。一度廃止が実行されてしまえば、医師や看護師をはじめとするスタッフは散り散り、あとになって復活させることは極めて困難となります。3病院は長い年月をかけて地域と共生しており、単に建物を建てるだけで運営していけるものではないのです。

 では、条例も可決されてしまったいま、いったい何ができるというのでしょうか。その答えになるのが、7月の都議会議員選挙。改選後の都議会で存続条例を成立させる道があって、これが残された最後で最大のチャンスです。
 一貫して3病院の統廃合に反対してきた共産党に加え、これまで自公両党とともに「廃止賛成」の立場を取ってきた民主党が、ここにきてようやく「廃止反対」に大きくカジを切ってくれたのですから、病院存続の光は完全に消えてしまったわけではありません(*2)。

  (参考) 朝日新聞東京本社版2009年6月22日付け夕刊 (その他コメント欄参照)

 廃止を確定させるのも、廃止を食い止めることができるのも都議会しかありません。そして、都議会の議員を選ぶのは、都民の皆さんひとりひとりです。今度の都議選の結果で3病院を守ることができなければ、この流れは他の都立病院にも及ぶことになりましょう。地域に根ざすみんなの病院を、どうにかして守る一票を切に希求します。
 繰り返しますが、これが都立小児病院を守る残された最後のチャンスです。
          *          *          *
(*1) 平成21年第1回都議会定例会 会議録第六号
 http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2009-1/d5219601.html
(*2) 平成21年第1回都議会定例会で3病院を廃止する条例改正案に「3病院存続」を明記する修正案を、都議会民主党が提案(同案は、自民公明の反対多数で否決)。詳細については、都議会民主党のHPにて。
 http://www.togikai-minsyuto.jp/teireikaihokoku/post_192.html

*関連記事
都立清瀬小児病院をなくさないで(第87号)
NICU増床計画における私の視点(第171号)
※2010/1/15追記 都議会民主党の“裏切り”については、コメント欄をご参照下さい。

(第234号)
          *          *          *

 なお、2009年3月27日に清瀬小児病院を守る会ほか3会が共同で出した「都立清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ヶ丘病院の廃止条例の採決を強行した自民党・公明党に対する抗議声明」を掲げます。以下をクリックしてお読み頂ければ幸いです。
pdfはこちら  ※テキストは以下の“続き~”をご参照ください)

都立清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ヶ丘病院の廃止条例の
採決を強行した自民党・公明党に対する抗議声明

 東京都は、第一回定例都議会に都立清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ヶ丘病院の廃止条例を提案し、自民党・公明党の賛成で可決強行しました。私たちは、清瀬、八王子、梅ケ丘の3つの小児病院の廃止条例提案が明らかになった時点で「撤回」を求め、予算特別委員会、厚生委員会の開会日及び都議会最終日に8回にわたる座り込み行動、厚生委員会で諾否が決まる前日には600名の集会と700名の都庁包囲のデモ行進を行い、都民に訴えてきました。

 この間、各小児病院の「守る会」は、3小児病院を現地で建替え・存続と小児医療体制の拡充をしてほしいと言う強い要望を受け署名行動に取組み、東京都知事、都議会議長に対し請願・陳情を行ってきました。その結果この間の「廃止反対」署名は、50万筆を超え、今も都民の署名が集中しています。
 都議会厚生委員会では、都民・患者の声を反映して「廃止条例」反対が6対7と1票差と僅差の可決でした。

 多摩地域は東京都の人口比で約3割を占める地域ですが、NICUは東京全体の2割程度、区部に比べて大きな格差があります。周産期医療をめぐる東京の医療実態からもNICUは特に多摩地域に不足しており、緊急の拡充策が必要です。八王子小児病院移転後は、東京医科大八王子医療センターと東海大八王子病院が小児ベッドを6床ずつ増床することになっていたが、東京医科大八王子医療センターでは、医療収益悪化に伴って増床を延期することになり、八王子小児病院の移転の条件である小児ベッドの増床は不可能になり、住民との約束が反故にされています。清瀬小児病院も、その代替医療を多摩北部医療センターが担うとされていますが、小児科医師の確保が不十分で清瀬小児病院の代替医療機関にはなりません。

 東京都はこの間、都立産院を廃止してきましたが、東京都の周産期医療の都立の受け入れ件数は1999年39.9%から2005年26.8%と13.1%も激減しています。

 子どもの心の専門病院として全国小児精神科病床の4分の1の病床をもつ、梅ヶ丘病院は、50年以上の年月をかけて、地域の皆さんとともに子どもたちが安心して療養できる環境をつくり上げてきました。「小児精神医療には独立した施設がいるのです。」「梅ヶ丘病院の施設は、小児精神医療を必要とする子どもたちのことだけを考えてつくりました。」(藤原豪、元院長)と移転統廃合の撤回を求めています。3小児病院の廃止統廃合では、医療水準が大きく低下し、「医療崩壊」を加速させるものとなります。

 東京都は、都民の願いに反する3小児病院の統廃合について、都民の声を真摯に受けとめ、その地域での存続と拡充に転換すべきです。

 私たちは、石原都政と自民党・公明党の暴挙に対して強く抗議を行うとともに、引き続き3小児病院の統廃合に反対し、その地域で建替え・存続と小児医療体制の拡充を求め、廃止条例撤回のため奮闘することを訴えるものです。

 2009年3月27日
東京の保健衛生医療の充実を求める連絡会 代表 四谷 信子
清瀬小児病院を守る会 会長 小野 幸子
八王子小児病院を守る会 代表 矢代美知子
梅ヶ丘病院の存続を求める家族と都民の会 代表 池崎 吉次

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コメント

本文に関する新聞及び雑誌等の記事で、ネットで見られるものを紹介しておきます。

・都立病院の再編―小児病院廃止は誤り《特集・自治体荒廃》 東洋経済オンライン 2009.3.3
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/a3c9bb3edcac912cc6f67fea86750ba3/

・都立の小児病院 統廃合しかないのか 東京新聞(TOKYO Web) 2009.5.4
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/09togisen/rensai/CK2009050402000180.html

・遠ざかる小児病院 朝日新聞(asahi.com) 2009.6.14
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000906150002

・清瀬など小児3病院、統廃合 かすむ、身近な命 毎日jp 
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090704dde041010042000c.html

投稿: 鉄まんアトム | 2009年6月26日 (金) 15時23分

 本記事を書いている頃から、二男の体調がよくありませんでした。この週末には熱を上げ、きょう(29日)、とうとう今年初の入院となりました。
 昨年7月末以来続いてきた「入院しない最長記録」は、あと少しのところで満1年に達せず、また振り出しに戻ってしまいました。

投稿: 鉄まんアトム | 2009年6月29日 (月) 13時48分

 20時を過ぎて気になって都議選の開票速報に見入っていました。さきほど23時47分,NHK総合テレビの速報字幕にて,自民公明以外の野党の獲得議席が過半数を超えました。
 本記事に共感して広めてくださった方々に感謝します。いまは一日も早く,都立小児3病院の存続が決まることを期待しております。

投稿: 鉄まんアトム | 2009年7月12日 (日) 23時58分

 都議会民主党は,今年7月の都議選での公約を破り,都立3小児病院廃止容認へ転換しました。都立清瀬小児病院の存続は絶望的となりました。
 3病院存続という民主党の方針を確認し,都議選で同党への支持及び投票を(も)呼びかけましたが,あっさりと裏切られた形です。

11月19日付け「しんぶん赤旗」
都立3小児病院廃止容認へ転換 都議会民主 公約どこへ
『 都議会民主党は18日の総会で、第4回定例都議会(12月1日開会)に東京都が廃止を決めた都立3小児病院(清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院)を存続させる条例案を提出せず、廃止を容認する方針を確認しました。』
 記事の続きは,しんぶん赤旗HPにて
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-11-19/2009111904_02_1.html

11月30日付けMSN産経ニュース
都立小児3病院の存続求める請願不採択
『統廃合が決まった東京都立清瀬小児病院など都立3小児病院について、都議会厚生委員会は30日、存続を求める都民の請願や陳情計3件を賛成少数でいずれも不採択とした。』
 記事の続きは,MSN産経ニュースHPにて
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/091130/tky0911302039017-n1.htm

12月1日付け東京新聞
都立3小児病院 存続請願など不採択 都議会厚生委
『 都立清瀬、八王子、梅ケ丘(世田谷区)の三小児病院を移転統合し、府中市に新病院「小児総合医療センター」を整備することをめぐり、都議会厚生委員会は三十日、地元住民らが提出した三病院の存続を求める請願と陳情を、不採択とした。廃止に反対していた民主党が「われわれの要請に、都から一定の回答が得られた」と廃止を容認したため。』
 記事の続きは,東京新聞TOKYO Webにて
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20091201/CK2009120102000049.html

投稿: 鉄まんアトム | 2009年12月 5日 (土) 09時07分

都立八王子小児病院を守る会の代表をしている矢代と申します。
ダウン症の息子が31歳ですが都立ならばカルテがある限り障害者は見て貰えると安心感をもって生活してきたところ9年前石原知事になり統廃合になりました。青島知事の時代に府中にできても3小児はサテライトで残すという案があり青写真もできていました。高尾駅の近くに移転拡充される予定でした。
1分1秒を争う新生児、子供の命は身近にあるからこそ助かります。八王子では10数年前(数字は正確ではありません)にドクターカー、NICUができてから障害が軽減され重度障害児が減ったと重度のグループの職員さんが3年前に話して居ました。それが府中になれば救われる命が危険にさらされます。私は63歳ですので遠くにいくのは障害者を抱え、電車、バスに乗り換えていくのは大変です。
若いお母さんに八王子小児病院を守る会のHPをさくせいしてもらい今みていたところこのHPを知り初めて投稿させて頂きました。実は学生時代ウランちゃんというあだなだったのでアトムのネーミングに親近感をもち投稿したと言うこともあります。
民主の裏切りにはあきれました。今週金曜に八王子駅で署名をしましたが1時間で388名集まり存続の市民の強い意志を感じました。民主が存続を掲げ2名も当選したのに4年後は投票しないという方がいました。3月議会に4回目の請願署名をだし、抗議の意志を表します。2月1日発売の週刊ポストにも記事がのるのでごらんください。

(※管理者の判断で、適宜、改行しました)

投稿: 矢代美知子 | 2010年1月31日 (日) 10時34分

 矢代美知子さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

 アトムはたいてい呼び捨てですが、ウランちゃんは必ずちゃん付けで呼ばれ、うらやましい限りです。ちなみに、当方のあだ名とアトムは無関係です。最近ではアトムも省略され「鉄まん」と呼ばれたりもします。まあいいんですけど、別に(^^ゞ)

 教えて頂いた週刊ポスト(2月12日号)を買って読みました。記事の論点としては既出のもので、目新しさは感じませんでした。取り上げてくれないよりはマシですが、いまさらの感はどうしても否めません。
 「清瀬」がそうですから「八王子」も同じだと思いますけど、2月になって、廃止される病院は事実上機能を失いつつあります。なのに「府中」は、まだ始動しておりません。多摩の小児医療の空白は、もう始まってしまっています。

 ところで私は、記事の次の部分に注目しました。
 -ある都庁職員も声を潜めて、こう語る。
「清瀬市や東村山市、東久留米市などの地域の子供の拠点病院となってきた『清瀬小児病院』は、そこが空白地帯にならないよう、東京都保健医療公社が運営する『多摩北部医療センター』がカバーすることになっています。しかし、同センターは、医師数や病床数、外来患者数も清瀬小児病院の10分の1ほどで、とても代わりにはなりません。その地域では、休日の全夜間に小児救急を行なっている病院が減っており、『清瀬』がその多くを受け入れている。これがなくなると、行き場を失う救急患者が生まれかねない」

 以上、引用終わり-

 どうしてこの現実があるのに病院廃止は進んで行ってしまうのか。記事では「石原都知事はいま一度、患者の親たちの声に耳を傾けるべきだ。」と結ばれています。しかし、私は、いまここで彼にそんな呼びかけをしても無意味だと思っています。
 そんなことよりも、問題を認識している都庁職員が、なぜ「声を潜めて」物言う必要があるのか。どうして都議会与党の民主党が、公約を反故にし再び病院廃止に転じたのか。こちらの方を追究した方が、合理的であるように思います。

 都議選の争点の1つでもあった以上、病院廃止を容認する民主党都議はみな、直ちに辞職すべきです。民主主義における公正と信義が、あまりにも軽んじられている現状を憂慮しています。

投稿: 鉄まんアトム | 2010年2月 1日 (月) 14時06分

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