能登線追憶(4)
能登線珠洲駅。能登線の終点蛸島まではあと2駅。ここ珠洲市は能登半島の先端部に位置します。
時刻は18時40分過ぎ。能登線の果て、蛸島に向かう下り列車は、次の19時04分発が最終。一方の上り列車も、次の19時35分発が最終。それも途中の宇出津止まりで、その先は穴水にすら今日行く列車はもうありません。
珠洲駅には駅員がいて、待合室にはストーブが焚かれていました。しかし、列車を待つ人はなく、着いた列車から降り立った人も足早に駅をあとにしていました。外の雪は降ったり止んだり、時折、目の前の視界が遮られるほど吹雪いたり。待合室の扉1枚向こうは、除けても除けても降り積もる雪模様です。
それでも雪の合間を見ながら、駅員さんは駅構内をていねいに除雪していました。そして、たった一つの小さなストーブが無人の待合室を暖めています。来てもわずか数名という乗客のために。
このストーブでどれほどの旅人が暖をとり汽車を待ったのでしょう。一人待合室のベンチに腰をかけ、こうしてぼんやり炎を眺めていると、この空間だけ確実に時間は止まります。
*写真は、のと鉄道能登線珠洲駅にて 2005年2月11日撮影
(第162号)
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