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東京駅からブルートレインが消え去る日

 来年3月、東京駅からブルートレインの姿が消え去ります。
 JR各社から来年3月14日にP1020170実施されるダイヤ改正の内容が発表され、同日をもって、東京駅発の寝台特急で、大分行き「富士」と熊本行き「はやぶさ」の2列車の廃止が明らかとなりました。
 かつて両列車は、東京駅から東海道・山陽本線を通り関門トンネルを抜け、「富士」が日豊本線(宮崎回り)、「はやぶさ」が鹿児島本線(熊本回り)を経由して、ともに西鹿児島(現・鹿児島中央)まで直通していました。実際の走行距離は1500キロにも及び、「富士」の所要時間はなんと1日24時間をまたぎます。鹿児島はやはり遠いところです。

 しかし時代は移り、長距離の移動は新幹線や航空機に主役を明け渡します。
 1980(昭和55)年に「富士」は宮崎止まりとなり、1997(平成9)年にはさらに大分までに短縮され、同時に「はやぶさ」も熊本で運転を打ち切られました。これに先立つ93年には食堂車の営業も取りやめ、その後は、熊本・長崎行き「みずほ」、博多行き「あさかぜ」、長崎・佐世保行き「さくら」が相次いで廃止されていきました。九州ブルートレインに限ったことではなく、ここ10年で夜行列車は衰退の一途をたどり、いまや絶滅寸前です。
 東京-九州間のブルートレインは、2005年の「さくら」廃止以降、「富士」と「はやぶさ」だけが辛うじて残っていました。2列車は東京-門司間を併結Fujibusa_ticketして走るため、事実上は1日1往復。それでも毎日走る定期列車としては、距離も時間も日本最長を誇る列車で、その列車番号は栄光の「1」。とはいっても、九州内では後発の特急に追い抜かれてしまうという冷遇ぶりです。車両も製造から30年を超え満身創痍。そんな孤高の姿も、あと数ヵ月で見納めです。

 青い車体が夕方のラッシュで喧噪のホームに放つあの独特の閑寂感。それが東京駅から完全に姿を消してしまうかと思うと、時代の流れや人々のニーズとはいえ、寂しい気持ちで一杯です。

 それにしても、とにかく最後にもう一度だけ、乗りたいなあ~。

               *          *          *
*写真の説明
(上) 下関駅に停車中の下り「富士・はやぶさ」。この駅で関門トンネル用の機関車に付け替えられます。
(下) 2年前に鹿児島で開かれた「全国クレサラ交流集会」に参加するため、行きは「富士」、帰りは「はやぶさ」に乗った際の寝台券。東京から鹿児島への所用で、こういう芸当もできなくなってしまいます(できたとしても普通の社会人はしない、というツッコミはなしです)。

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*本記事のコメント欄もぜひお読み下さい。現実の利用客数を検証してみました。

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コメント

 わたし、この記事を書き上げてから今日の新聞を読み直しました。
 各紙とも、「利用者の減少」「需要の減少」を廃止の理由に挙げていますので、具体的に計算をしてみました。
 まず、「富士」「はやぶさ」のそれぞれの列車の定員(=満員)は160人です。上下1本ずつありますから1列車の定員は倍の320人になります。
 つぎに、実際の利用者数ですが、日本経済新聞(12月20日西部朝刊社会面)が詳しく報じていて、2007年度の「富士」の利用者が1日平均158人だとしています。他各紙が「平均乗車率約4割弱」と報じていることと概ね重なります。
 そこで、「富士」の年間利用者数は、1日158人×365日=57,670人という計算が成り立ちます。博多を経由する「はやぶさ」の方が利用率が高いのですが、単純に同じ程度としても、2列車併せて年間11万5000人以上の人が利用していることになります。

 果たしてこれで「利用者が少ない」といえるのでしょうか?

 あのボロボロの車両と二世代ほど前の設備やサービス、それに加えて邪魔者扱いされている運行ダイヤ。そのような悪条件にも関わらず年間10万人以上もの人が現実に利用している事実。
 私には、利用者が少ないのではなく、JRが(廃止したいがために)利用させないようにしているとしか思えません。毎日満員の乗客を乗せて走ったとしても、年間23万3600人しか利用できないのですから。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年12月20日 (土) 14時10分

 『それにしても、とにかく最後にもう一度だけ、乗りたいなあ~。』

 ということで、家族のお許しをもらい、乗る決心を固めました。
 ふだんはこれで、あとは日程を決め、1カ月前の10時に列車の予約をすればいいのですが、今回はどうしても切符が取れません!
 駅や旅行会社で、「10時打ち」という予約開始と同時の発券処理をお願いしているのですが、もう何度挑戦しても取れません。しかも、個室ではない一般的なB寝台もろとも1秒と経たず売り切れてしまう状況です。

 個室寝台の照明を落とし、極上のウイスキー片手に車窓を眺めることがこのうえなく好きで個室を狙っていますが、今回ばかりは難しいかもしれません。
 というわけで、現在、2月から3月上旬のスケジュールがまったく組めない状況です。

投稿: 鉄まんアトム | 2009年1月20日 (火) 15時15分

 個室は相変わらず、入手がほぼ不可能な状況が続いています。
 ところで1月中の平日でB寝台なら、けっこう空きのあることを先週確認。仕事を調整して(たぶん最後となる)乗車を果たしました。「17番上下」という車端の区画を確保し、長男にも寝台特急列車を初体験させました。追って、記事にしようと思いますのでお楽しみに。

 これから切符を求める方、大変でしょうけど幸運を祈ります!
 運良く乗車がかなう方は、心ゆくまで最後の「九州特急」の旅を楽しんでクダサイ!

投稿: 鉄まんアトム | 2009年1月30日 (金) 17時30分

鉄まんアトムさん、お帰りなさい。
最後の「九州特急」の旅の記事、楽しみにしてます。

投稿: 末吉 | 2009年1月30日 (金) 22時09分

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