« 川越城本丸御殿大修繕 | トップページ | 能登線追憶(1) »

登記簿の数字表記について雑感

 ふだん仕事で登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)を見ていて,これでいいのか? と疑問に思うことがあります。
 何かというと,登記簿に記入される数字の表記法についてです。不動産登記簿の権利部の事項欄には,誰が所有者や権利者で,どういう割合で,いくらの担保が設定されているかが記載されています。数字で記載される主なものは,住所の番地,金額や利率などの数値,共有持分割合などがあります。これらの具体的記載例を挙げると,つぎのような表記が一般的です。
(1)住所の例 「川越市元町一丁目1番1号」
(2)金額等の例 「金1億2,300万105円」
   利率の例 「年14・5%」
(3)持分の例 「持分5万6789分の1万234」
 上記の例で登記申請書に「元町1丁目1番1号」と記載すると「一丁目」に訂正するよう求められますが,金額を「金1億2300万0105円」「金123,000,105円」「金壱億弐千参百万壱百五円」と記載しても,利率を「年14.5%」「年14.5パーセント」と記載しても,そして持分を「持分56789分の10234」「持分5万6789分の1万0234」と記載しても,申請人の意思にかかわらず,いずれも上記具体例のように勝手に登記されてしまいます。このことについて,以下順を追って考えてみたいと思います。

 まず,住所の~丁目ですが,これは,「~丁目」までが1つの地名=固有名詞だと考えられているので,漢字で表記するのが正解です。これが行き過ぎると「壱丁目」とやりがちですが,これは正しくありません。~丁目の数は文字であって番号ではないのです。京都の「三条通」を,「3条通」とか「参条通」と書かないのと同じことです。
 数字を「1,2,3,…」ではなく「壱,弐,参,…」という縦書きの多画文字で紙に登記していた時代でも「一丁目壱番壱号」と記載していたのは,こうした意味によるものです。なのでこの登記簿の記載例は真っ当なものです。
 つぎに,金額等についてみてみます。金額の表記でもっとも一般的なのは「千進法」,いわゆる3桁法で,千の位でカンマ(,)を入れて区切る方法です。財務諸表や会計帳簿などはこの表記の方が格段に見やすいと思います。一方,文章などで表記をするときは「兆,億,万」で区切って表記する「万進法」の方が読みやすいのではないでしょうか。横書きの文章は左から右へ読み進めますが,千進法で表記した場合,数値が大きくなればなるほど,数字のところでつまずき,いったん右から左に「いちじゅうひゃくせんまん…」と位取りしないと数値の把握ができない場合がほとんどです。
 しかし,登記簿の表記は,万進法と千進法を両方とも取り入れてしまっていることが判ります。おまけに,千の位のゼロが削除されています。登記簿が紙で縦書きの時代には,金額は「金壱億弐参〇〇万壱〇五円」とせず,「金壱億弐千参百万壱百五円」と記載されていました。この漢字表記の億と万と円の間をバラバラに数字化すると上記具体例のようになるのでしょう。また,利率の表記で小数点の区切りを一般的なピリオド(.)ではなく中点(・)で表記していることも,特殊といえば特殊です。これも,おそらく紙の時代の名残なのでしょう。「年壱四・五%」というように,縦書きでは小数点を「・」で表記するのが一般的だからです。
 それから最後に,持分の表記です。持分の表記には,金額とは違って,一見,万進法のみを取り入れているように見えます。持分表記が万進法になったのは,紙の登記簿をコンピューター処理に移行してからのことで,縦書きの時代には「持分五六七八九分の壱〇弐参四」などと記載されていました。これがいまでは上記例のように記載されているのです。こちらも金額と同様,単純に「万」を入れただけでなく,計数上は不要となった「0」を意図的に削除しています。

 さて,ここまでお読みいただいて,登記簿の記載における金額と持分表記には統一性がなく,しかも,ある問題が潜んでいることにお気づきになったでしょうか。
 登記簿をコンピューター化するには,紙の登記簿に記載されている大量の登記記録をコンピューターに入力,移記しなければなりません。正確にコンピューターへ入力するには,全国統一ルールで処理する必要があります。だから,極力,紙に書かれている文字はそのままでコンピューターへ入力することにしたのでしょう。
 そうすると,利率の「・」が維持されたことは理解できるような気がします。実験台ともいえるコンピューター化第1号となった東京法務局板橋出張所では,当初,住所の番地や金額,持分などはもちろん,地番や地積まですべて漢字で紙の情報のままに移記されていました。
 これが読みづらいと判断されたのか,その後のコンピューター化の全国展開では,漢数字はアラビア数字に置き換えられていきます。しかし,金額と持分については「そのまま移記」の原則に反する処理をしていくのです。問題はこの処理をする際のルールに統一性がなかった,ということだと思います。持分の移記方法については”危険”だともいえます。結局,これが現在の登記簿にも影響を与えてしまっているのです。
 金額の表記方法では,上記の金額を例にとると,
(ア)金1億2300万0105円
(イ)金1億2,300万0,105円
(ウ)金123,000,105円
という3通りが考えられます。ところが,登記簿の記載方法はこのどれにも当てはまりません。統一性どころか法則性もない,ということです。

 私は,登記簿に記載される金額や持分は(ア)の方法により,「金1億2300万0105円」や「持分5万6789分の1万0234」と表記されるべきだと思っています。
 金額についてはそれだけで完結し,しかも末尾に「円」が入るのでまだ何とかなるのですが,どうにもならないのが持分です。持分が「10001/20000」の場合,登記簿には「持分2万分の1万1」と記載され,「1」以降が空白になっています。すると,最後の1が千の位でほかに続くのか?といった疑念を生じることになって非常に分かりづらいのです。「持分2万分の1万0001」と書いた方が分かりやすくありませんか。
 共同人名票が廃止されたいま,数十人単位で共有されている私道などの登記簿は,このような持分表記と相俟って最悪な状態です。

 結局のところ,1つの文書で無方針に併用しなければ,万進法でも千進法でもどちらでもいいと思っています。そして,登記簿にかかわらず,5桁以上の数値を表記するときは,全部入力して億と万で区切るだけにする(ア)の方法か,単純に3桁おきにカンマを入れるだけにする(ウ)の方法かのどちらかに統一すべきです。それがもっとも読みやすいですし,誤りの余地もなく分かりやすいのです。何より大切なのは,読み手にとって読みやすいかどうかなのです。
 折衷策として双方のいいとこ取りをしたかのような(イ)の方法は,間延びしていて実際には読みづらいものです。だから,その(イ)をさらに改悪したような現在の登記簿の表記は,もっとも避けなければならない表記方法であるといえます。万進法でも千進法でもないうえに,さらに判読に支障を来すような数字の省略などすべきでないことは,もはや自明です。
 登記簿の持分表記については,のちのち悪影響を及ぼすような気がしてなりません。

(第118号)

|

« 川越城本丸御殿大修繕 | トップページ | 能登線追憶(1) »

コメント

どうなんだろうね

http://blog.goo.ne.jp/xxxxxxx1234567/

投稿: みうら | 2008年11月 5日 (水) 21時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 登記簿の数字表記について雑感:

« 川越城本丸御殿大修繕 | トップページ | 能登線追憶(1) »