通りゃんせ
朝日新聞には「be」という8ページものの別冊があります。
5月10日付けの赤いbeでは,連載記事「うたの旅人」に,わらべうた「通りゃんせ」を取り上げ,三芳野神社を中心に川越のことが紹介されていました。
川越は,「小江戸」と呼ばれる城下町です。その川越城(別の名を初雁城といい,日本100名城の一つです)の本丸御殿すぐ近く,木立に囲まれたところに三芳野神社はあります。市教育委員会の立て札によれば,平安時代の初期に成立したと伝えられる,とされています。この三芳野神社が通りゃんせの発祥地とされているのですが,諸説・異論もあるそうです。詳細は,図書館などで記事をお読みください。
そんな観光地の中核にありながら,辺りは公園の一画のようで訪れる観光客はまばらです。私の事務所からは歩いても5分ほど。昼食の帰り道,缶コーヒー片手に境内のベンチに腰を下ろし,しばし読書をすることもあります。
この風景は18年前,切手にも描かれています。また,つい先日(5月2日)には,「時の鐘」も切手の題材になっています。時の鐘は川越のシンボルともいうべきもの。いまも1日4回,蔵の街に時を告げていて,事務所の窓を閉め切っていても鐘の音色が伝わってきます。
(左が1990年発行のふるさと切手「ふるさとの童謡シリーズ」埼玉版で,当時の関東郵政局管内でしか発売されていません。右は2008年発行のふるさと切手「ふるさとの風景第1集」で,解説帳とともに全国販売されました。第1集10地域の一つに選ばれたのは光栄ですね。)
いまではすっかり全国区の観光地となった川越は,年間550万人ものお客様が訪れる街となっています。旅番組や雑誌での紹介は当たり前となり,今度はNHKの連続ドラマの舞台にもなるそうです。市では年間の観光客数の目標を1,000万人としているそうですが,そうなったらライトレールでも走らせないと,それだけの人を招き入れるのは無理でしょうね。
埼玉ではここだけの伝建地区(国選定の重要伝統的建造物群保存地区)なのに,その中心を貫く県道の車の往来や,押し寄せる多くの観光客の喧騒で,蔵づくりの町並みが醸すせっかくの風情は消え去りそうです。ツアーバスが連なるとき,時の鐘の音色はかき消され,そこには通りゃんせの歌声ではなくエンジンの音が響き渡っています。
(第67号)
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