地方の足消え新幹線に巨費
当ブログ記事の「加津佐の風、昭和の薫り」(2008年3月31日)に付した私自身のコメント(4月3日00時10分)を改編し朝日新聞「声」欄へ投稿したところ、採用されました。
4月7日付けの朝日新聞東京本社版朝刊の「声」欄に、「地方の足消え新幹線に巨費」というタイトルで掲載されています。タイトルは朝日新聞によるものです。
地方の足消え新幹線に巨費
司法書士 広田 博志
(埼玉県川越市 38)
先月末、長崎県を走る島原鉄道に乗ってきた。車窓には雲仙岳や有明海が広がり、旅情豊かなローカル線として知られている。しかし、噴火災害などで利用客は減り、05年度の赤字は約1億7千万円という。80年余も地域を支えてきた景色のよい南半分は県や沿線の市が支援を断念し、先月末で廃止された。
同じころ、九州新幹線長崎ルートの武雄温泉―諫早間約45・7㌔の着工が認可された。総工費は約2600億円。このうち長崎県は297億円を負担する。新幹線開業後の並行する在来線は、20年で約34億円の赤字と試算する。博多―長崎間の所用時間の短縮はわずか26分にすぎない。
長崎県は、島原鉄道を支援せずに廃線にする一方、新幹線には巨費を投じ、並行する在来線を赤字路線にまでして支援するというのだ。
新幹線の建設費で、島原鉄道が1529年間走る勘定になる。人口が減って高齢化する中で、今ある物を次の世代にどのように引き継いでいけばいいのだろうか。政治家はもちろん私たち自身にも問われている。
(以上、文字数428+空白4)
掲載された紙面(8ページ)の該当部分は次のとおりです。
(割り付けを一部変更し、他の投稿者による掲載部分は省略しました)。
伝えるべき必要最小限を踏まえ、趣旨を変えずに文章を削る。
これがなかなか難しく、500字以内という投稿の起案では苦労するところですが、さすがはプロ。こちらが削りに削った文章をさらに削るんですから。今回のケースでは、当初より2割弱も減量しつつ、それでいて文章全体の趣旨は維持されています。
字数制限のないブログでも、「文字数」を意識しながら執筆したほうがいいかもしれません。
なお、編集段階で朝日新聞側が付け加えた「所用時間」というコトバは、「所要時間」とするのが正しい表記です。この件については、朝日新聞の編集担当者からお詫びのメールを頂戴していることを申し添えておきます。
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<投稿した原文は以下のとおりです>
長崎県を走る島原鉄道に先週乗ってきた。車窓には雲仙岳や有明海が広がり旅情豊かなローカル線として知られていたが、噴火災害による利用客の減少などで、同鉄道の05年度の赤字は1億7千万円に及んでいた。県や沿線自治体が支援を断念したたため、先月末、とりわけ景色のよい南側半分の区間が廃止された。
同じ時期、九州新幹線長崎ルート武雄温泉-諫早間45.7kmの着工が認可された。総工事費は約2600億円で、このうち長崎県が約300億円を負担する。新幹線開業後の並行在来線は赤字となり、試算では年間1億7千万円も生じるという。これによる博多-長崎間の時間短縮効果はわずか26分に過ぎない。
長崎県は、島原鉄道の赤字を支援できないといって廃線にする一方、新幹線にはその赤字額の180倍もの巨費を負担し、並行在来線を島原鉄道と同じ赤字を生み出す路線にして支援するというのだ。
新幹線1年分の建設費で、80年以上も地域を支えてきた島原鉄道を今後152年間走らせることができる。人口が減少し高齢化する中で、新しい物を作るばかりではなく、いまある物を次の世代にどう引き継いでいくか、政治家はもちろん私たち自身にも問われている。
(以上、文字数498+空白4)
(第54号)
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