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四国遍路第4話(日和佐薬王寺)

 ~四国第23番霊場・薬王寺~

 私たちを乗せた「サンライズ瀬戸」は、東海道を走り抜け、山陽道へ進みます。6時過ぎ、定刻どおりの岡山到着を告げる朝一番の車内放送が流れ、目を覚ましました。東京駅からここまでいっしょに走ってきた「サンライズ出雲」号を切り離し、列車は岡山駅をあとにします。
 顔を洗うなどするうち、列車は、本州最後の駅・児島を発車し、鷲羽山トンネルを抜けたあと瀬戸大橋を渡り始めます。大小の島々が点在する瀬戸内海をわずか7~8分で渡り終え、四国に上陸しました。
 実は、四国上陸は二度目。昨年、どうしても四国の地を踏みたく、瀬戸大橋を渡り最初に停まった坂出駅に降り立ちました。駅前のサティで足早に食料を買い込み、上りの「サンライズ瀬戸」で折り返しています。四国で坂出サティ以外には行ったことがなく、実際上の四国旅行は今回が初めてとなります。
 定刻7時26分、高松駅に到着。今回の四国訪問の目的地・高知へ向かうには、土讃線の列車に乗り継ぐのがふつうですが、”乗りつぶし”のために、これから逆の方向をめざし、徳島、そして室戸岬を経由します。大変な大回りです。

 次の徳島行きは、8時20分発の特急「うずしお3号」。発車まで少し時間があるので、駅から歩いて数分の波止場まで行きました。「鬼ヶ島」に行くというフェリーが目の前にあり、どんなところか気にはなりましたが、そんなことをしていては今日中に高知に着かなくなりますので、あきらめて駅に戻ります。朝食は、駅の立ち食いで讃岐うどんをいただきました。
 「うずしお3号」は5両もつないでいて、空いていました。1時間ほど乗って9時31分、徳島に着き牟岐線の列車に乗り換えます。
 徳島駅のホームの屋根は木造で、県庁所在地の駅にしては、ずいぶんと趣があります。ホームにはツアー客とおぼしきたくさんの人がいて、9時47分発の牟岐行き特急「剣山4号」(始発は阿波池田で徳島線を経由し、終点の牟岐から普通列車の海部行きになる)の到着を待ちます。
 ホームに入ってきた「剣山4号」は、なんとたったの2両。しかも禁煙の自由席は、うち1両の半分に過ぎません。ただ、ホームにいたツアー客は自由席でなく指定席に座ったので、自由席はゆうゆうと座れました。

 「四両のディーゼルカーは退屈な山の中を走り、由岐のすぐ先きの、夏だけ停車する仮乗降場田井ノ浜でちらりと清潔な砂浜と透明な海を見せると、また山の中に入る。一時間半ほど乗って17時29分、日和佐に着く。
  …(中略)…
 四年前の一月二日に牟岐線に乗ったときは、列車は超満員で、そのほとんどがこの日和佐で下車した。ここには薬王寺という霊場があり、女厄坂三三段、男厄坂四二段、男女厄坂六一段があり、一段ずつ硬貨を置きながら願いごとを唱えて上るとご利益がある。正月には高松から臨時列車が出ていたほどであった。」
(宮脇俊三著「時刻表2万キロ」p208~、河出書房新社、1978.7.10初版)

 乗りつぶしの旅も、ただ乗りつぶすだけではつまりません。ましてや、”鉄”でない同行者を道連れしていますので、それなりの配慮は必要です。当初、室戸岬でいったんバスを降りて観光することにしていたのですが、私は、この本の記述を思い出し、この寺を訪れることにしました。文字どおりの四国遍路です。
 10時41分、日和佐に着きました。指定席に座っていたツアー客もみなここで降りました。どうやら目的は同じようです。日和佐は無人駅ですが、隣にある「道の駅日和佐」の物産館には人がいて、ここで荷物を預かってもらいました。
 駅から歩くこと数分、薬王寺に到着です。大ワラジのある山門をくぐり、しばらく行くと女厄坂にさしかかります。ここで持参した1円硬貨100枚を取り出し、一段一段一枚ずつ置きながら上っていきます。
 続く男厄坂を登りきると本堂があります。今年の正月、小吉と凶をひいた2人です(当ブログ2008年1月13日付「初詣~川越大師喜多院」参照)が、ここで改めておみくじの引きなおしをすることにしました。
Img_0476  元小吉の同行者は、めでたく大吉を引き二階級特進達成。一方の私は、…、また凶です。昇進も昇給も見送り。慈覚大師さまにつづき、弘法大師さまにも厳しい審判を受けることになりました。
 そんなことはさておき、本堂の右奥にある男女厄坂をさらに上ります。持参した1円玉も足りなくなり、仕方がないので、数段おきに置いて上りきると、駅からも見える塔が目前に現れます。これは「瑜祗塔」と呼ばれ、西暦814年に弘法大師が四国八十八箇所霊場を、翌815年に高野山をそれぞれ開創して1150年になることを記念し、1965年に建立されたもの。真言宗所衣の経典である瑜祗経の教理(世の中のものみな二つの相対したものからできているが、これが一つになることによって世界の平和や家庭の幸福の基礎がある、との説)を形にあらわしたもの、だそうです。

 さて、この塔の上の展望台からは、日和佐の町が一望できます。 牟岐線の列車を入れて写Img_0467真が撮れたら最高でしょう。
 そう思いながら下山すると、なんと列車の音が聞こえてきます。時刻表には乗っていない臨時の団体列車で、「ゆうゆうアンパンマンカー」をつないでいました。めちゃめちゃ残念!塔の前で般若心経でも唱えていれば、撮影に成功したかもしれません。
 ちなみに、凶を示したおみくじにはこのように書かれていました。

 ”鳥を見て矢を失ふが如し”
 此鬮(このみくじ)の人は鳥を見て取らんとするに矢を失い其鳥をとること能ざるに等しく何事も意の如く運び難かるべしされば予て注意を怠らず機会を失はざる様心がくべし

 いくら何でもあんまりです。
 時刻表にない列車にまで注意を怠らないよう調べ上げようものなら、駅やJR関係者にとって迷惑以外のなにものでもありません。
 しかし、このおみくじを読んで思いました。立場を置き換えて物事を考えることが大事です。鳥の立場になってみれば、修行が足らない不届者のおかげで命拾いしたわけですから。命の大切さを説く仏教のおみくじImg_0473としては、例えが悪いと思うのは私だけでしょうか。
 薬王寺も修行半ばだな。そんなバチあたりなことをけして声には出さず、日和佐12時21分発の海部行きに乗るため、昼食のおにぎりをコンビニで買って、駅に戻りました。

 (第5話へ続く)

(第38号)

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