四国遍路第11話(画竜点睛)
~魔の宇多津トライアングル~
鳴門駅到達をもってJR四国全線完乗を果たしたことは、前話でお話ししたとおりです。
”帳簿上”はまちがいなく全線を走破したのですが、現実には通過していない区間のあることが判明しました。
一般に「瀬戸大橋線」と呼ばれる区間は、岡山-茶屋町-児島-宇多津-坂出-高松の全長71.8kmを指す愛称です。瀬戸大橋線の正式な路線名と会社は以下のとおりとなります。
1.岡山-茶屋町 宇野線(JR西日本)
1.茶屋町-児島 本四備讃線(JR西日本)
1.児島-宇多津 本四備讃線(JR四国)
1.宇多津-坂出-高松 予讃線(JR四国)
なお「瀬戸大橋」とは、全部で10の橋からなる全長13.1kmの橋の総称で、うち海上を跨ぐ橋は合計6つ9.4kmにも及ぶ世界最長の鉄道・道路併用橋です。
このように本州から橋を渡って来ると、四国最初の駅が宇多津ということになっているのです(第5話掲載の地図を参照)。が、”建前の上では”そうなっていても、宇多津駅付近の線路は”実際には”三角形に敷かれていて(左上の地図及び右の写真参照)、坂出・ 高松方面の列車は宇多津駅のホームは経由せず、同駅構内(という名目)の短絡線を経由しています(地図の緑字のア-イ)。
時刻表では、駅を通過する記号は「レ」で、他の区間を経由する記号は「∥」で記されます。宇多津”通過”の証拠に、本州から瀬戸大橋を渡る「サンライズ」や「マリンライナー」など高松行きの列車はア→ウ→イと進まず、実際は宇多津駅を通らずア→イと進むのに、宇多津は「∥」ではなく「レ」で記されています。
これまで四国には、「サンライズ」や「マリンライナー」で入り、サンライズで出ているので、三角形に敷かれた線路の一辺であるア-イ(児島-坂出)しか通っていないということになります。宇多津-坂出の一辺(ウ-イ)と宇多津-児島の一辺(ウ-ア)には、実際には乗っていないのです。
建前と現実は、どちらが正しくどちらを優先するべきなのか。これが原因で完乗したことにならないなどということになっては一大事。そうなってから”建前”を声高に主張しても屁理屈の極みであることは決定的なので、高松からいったん宇多津まで行き、宇多津から橋を越えて児島まで行っておかなければなりません。そうでないと、乗りつぶしテツとしての沽券が下がります。
ちなみに、ここまで土讃線から予讃線へ、予讃線から土讃線へと乗ってきたので、多度津-宇多津間が未乗という半ば意味不明な状況にもこのとき初めて気が付きました。結果的には、土讃線から多度津を通過する列車に乗っていて、しかも丸亀で降りなかったため救われていましたが(第9話参照)。う~ん、薬王寺のおみくじ恐るべし、です(第4話参照)。
そんな次第で、宇和島から列車に乗りっぱなしですが、ここまで来ると意地のようなものです。勝瑞で飛び乗った「うずしお16号」が14時32分高松に着くや、14時39分の「いしづち19号」松山行きに乗り継ぎます。宇和島を5時半に出て9時間が経過していますけど、不思議と腹もへりません。
A地点からの写真(左)を撮りつつ宇多津14時57分着。15時21分発特急「しおかぜ20号」岡山行きでB地点からの写真(右)を撮りながら瀬戸大橋を渡り、児島15時35分着。これで”宇多津トライアングル”の三辺すべてを制覇し、名実ともに四国完乗となったのでした。
みんなに自慢してやりたいところですが、この三角形の話をすれば私の社会的評価には三角がちらつくこと必定でしょうから、好きな人にだけ読んでもらうようブログに書いてガマンするとしましょう。
さて、この時刻なら”四国遍路”を仕舞いにして、今日中に余裕で東京まで帰れます。しかし宇野線を乗り残していますから、迷わず宇野に向かうことにします。四国完乗を果たしておきながら宇野線を残しては画竜点睛を欠いてしまいますから。
児島で後続の「マリンライナー42号」に乗り、茶屋町にて宇野行き普通列車657Mに乗り換え、宇野に16時33分到着。別段の感動はありません。改札をぬけ駅舎を出ると目の前は宇野港です。日はもう傾き、影が長く伸びています。
(第12話へ続く)
※本話に挿入の地図は、国土地理院「電子国土」が出典です。2万5千分の1地形図「丸亀」の一部分に相当します。瀬戸大橋に関する記述は、「ブリタニカ国際大百科事典・小項目電子辞書版」及び「百科事典マイペディア・電子辞書版」を参考にしました。
(第46号)
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コメント
「完乗とみなす」ではなく、正真正銘の「完乗」のために、この努力! 「テツの道」とはこんなにも険しいものだったのですね。感服。
投稿: 末吉 | 2008年3月22日 (土) 19時06分
競争ではなく趣味ですから、自分で決めたルール次第ですね。したがって、その改変や解釈も基本的に自由。スポーツでタイムやスコアをごまかしても意味がないように、乗りつぶしで乗っていない区間を乗ったことにする意味はありません。
ちなみに、私の対象は「国鉄全線」。
過去に国鉄線であった路線、国鉄線として計画・建設された路線及びJR新線で、定期旅客列車が走る線区を対象としています。すでに廃止されている路線は、手段を問わず鉄道ルートを辿ることにしています(但し、線路改良によるルート変更分は原則除きます)。
以上を大前提に、あとは明るいうちに乗車するようこころがけているほかは、細かいルールを決めてはいません。なので、テツの中ではどちらかといえば軟弱な部類ではないでしょうか。
一口に「乗りつぶし」といっても、なかには、全駅下車、普通列車限定、(昔あった”チャレンジ20,000km”みたいに)起終点で写真を撮る、などといった細かいルールを実践されている人、また、私鉄も含む鉄道全線をめざしている人もいます。
制約が多い方が楽しい場合もありますが…ね。まあ、その人次第。人はそれぞれです。
投稿: 鉄まんアトム | 2008年3月23日 (日) 22時55分