四国遍路第13話(交響曲サンライズ瀬戸)
18分で坂出。わずかの停車ののち21時44分に坂出発車。部屋の灯りをすべて消すと、窓の外に1本の光の筋が見えてきます。番ノ州高架橋です。列車は瀬戸大橋にさしかかります。
列車が予讃線から右に分かれるポイントを通過すると、さらに右へカーブし、先ほど見えていた光の筋の下に潜り込むように高度と速度を上げていきます。コンクリートの高架橋でできた線路を走る乾いた音が鉄橋を渡るずっしりと重く響く音に変わった瞬間、窓下には暗いながらも水面を確認することができます。これが最も長い南備讃瀬戸大橋。いま四国を離れ海上に出ました。
遠くに目を移せば、先ほどフェリーで通ってきた瀬戸内海が、街の灯りで島々の影とともにぼんやり映し出されています。点滅する灯台や本州側の街灯りも見え、多数の船がそれぞれの方向に光跡を残しながら動いています。天井に向けて大きくカーブした窓から目を空に転じれば、星も瞬いています。部屋の灯りを消して真っ暗にできる個室寝台、しかも2階ならではの楽しみ方です。
大きな陸地が近づきトンネルに入れば、8分足らずの交響曲も終わりです。
とたんに眠くなってきました。それもそのはず、今朝は4時半起きです。
車掌からシャワーカードを購入し、さっさとシャワーを浴びます。部屋に戻ると列車は22時22分岡山に到着。「サンライズ出雲」を後ろに連結するため11分停車。この間にスリッパのままホームに出て、ホームからバランタイン30年とカエルどもを撮影し、部屋に戻ります。
岡山22時33分発車。
JR四国完乗を、一杯のウイスキーで、カエルどもと祝いました。
一杯の酒で眠さは目一杯。窓から見えるはずの明石海峡大橋を見ることもなく、眠ってしまいました。
日付は変わって3月11日。湘南の海も眺めることなく6時45分横浜到着のアナウンスで
す。横浜を出ると23分で東京に着いてしまいます。ゆっくりはしていられません。
簡単に身支度をして部屋を片付けると多摩川にさしかかりました。汐留のビル群をゆっくり過ぎ品川を通過すると、回送の寝台急行「銀河」や新幹線とすれ違いながら、7時08分定刻に東京到着です。
首都東京の朝はもう始まっています。
(おわり)
(第48号)
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