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川越市役所庁舎移転問題

Dashisoroi_2007
 上の写真は,当事務所の窓から撮影した昨年の川越まつり”山車揃い”の模様です。正面に映る大きな建物が川越市役所本庁舎です。いま,この市役所庁舎の移転が議論されています。その方向性によっては,この風景があと数年で見納めとなるかもしれません。

 川越市役所の移転問題は,同市の舟橋功一市長が2007年9月,市議会で「市役所を川越駅西口に移転する」と表明,その構想が公のものとなったことで,一気に現実的な問題となりました。
 市が公表している,「川越駅西口に新しい市庁舎を建設することについての考え方」によれば,【1】現庁舎の問題点として,1)構造耐震指標IS値が0.5~0.6程度で震度6強程度の地震に耐えられないこと,2)建築から35年以上が経過して老朽化が著しいこと,3)近隣市庁舎と比較しても狭隘化が否めないこと,の3点を挙げ,これらの問題を解決するために新庁舎の建設が必要であることを説き,【2】住民の利便性,交通の事情,他の官公署との関係等を考慮のうえ,川越駅西口に県と市が共同で「西部地域振興ふれあい拠点施設(仮称)」の整備を進めていること,また,財政的な面も考え合わせた結果,新庁舎建設の場所は,「川越駅西口市有地が最良」と結論づけています。
 この「考え方」を前提に,市は,5000人の市民を対象にしたアンケート調査をはじめ,2月15日から市のホームページでも意見の募集を行うことになりました。一方,2月12日には,現庁舎周辺の12自治会長が市の計画に反対する意見書を連名で提出するなど,市民の中には,唐突ともいえる市長の意見表明に対する戸惑いも広がっているように感じます。

 私のこの問題に対する考え方を結論からいいますと,【1】の問題はそのとおりであるのでこれには基本的に賛成,【2】の選択は最悪ともいえるので反対,という立場です。言い換えますと,市庁舎の新築や移転には賛成しますが,川越駅西口という場所には絶対反対,ということです。

 川越市は,市のグランドデザインをどのように考えているのでしょう。
 川越市内の多くの公共機関は,ここ最近,庁舎の移転新築を行い,市の中心部から引っ越していきました。税務署,法務局,警察署,保健所など,これらすべてが四方八方に移転したため,市民はもちろん近隣住民も多大なる不便を強いられています。現在,市の中心部に残るのは市役所と裁判所であり,市役所が川越駅西口に移転してしまいますと,川越の”無定見な”お役所立地は決定的なものとなります。市中心部の空洞化も避けられない状況です。
 市役所に用事のある人は,たいてい,市役所だけではなく他の官公署の用事も抱えています。平日に仕事を休んで,金融機関やお役所の”ハシゴ”をしているわけです。いくら市役所が駅前にあったとしても,他の官公署が駅から離れ,バスの便も不便な場所に位置していては,結局,クルマでの移動を余儀なくされてしまいます。だから,川越の場合,市役所が駅前にできても,多くの人はクルマで来庁することでしょう。
 川越駅周辺は,商業施設も集中していて,現状でも交通渋滞が激しい状況です。そういう場所に市役所を持っていき,人やモノの集積をさらに高めてしまいますと,この状況に拍車がかかることは容易に想像できます。また,予定地は,30万都市の市庁舎を建設するにしてはあまりに狭すぎ,十分な駐車場の確保も難しいことがハッキリしています。そういったことから,川越駅前市有地に市役所の立地をすることは絶対に避けるべきだと考えています。
 このあたり,西武線所沢駅から1つ隣の航空公園駅周辺に公共機関を集中させている所沢市とは実に対照的です。所沢での”お役所用務”は非常に便利です。なので私は,よほどのことがない限り,所沢には電車で行きます。少しはこのまちづくりを見習ったらどうでしょう。
 それなのに,この問題での市の進め方は,川越駅西口に新庁舎ありき,という感が否めません。
 多くの一般市民にとって,それほど頻繁に利用するわけでもない市役所が,駅前の一等地に位置する必要性はまったくありません。そのような土地が眠っているのなら,ただでさえ保育所への待機児童が多く,”川越”という街から子育て世代を遠ざけている現状を解消すべく,不足している保育所をこの地に建設し,出張所の機能を併せ持たせてはどうでしょう。それができないなら,そういう過剰な資産は売却してしまったほうがいいのではないでしょうか。

 これらのことを踏まえますと,市庁舎の移転新築の検討は,すべて白紙からやり直すべきだと思います。
 個人的には,行政地域と商業地域が別々に位置することで相互の機能や価値が高まり,公共交通と自動車の両方の利便が調和するような場所があると思います。具体的にいえば,西川越駅を中心として,川越西郵便局や保健所の周辺を候補とすべきと考えますが,現庁舎の正面にある駐車場と裏側にある市民体育館跡地を利活用する現在地再開発でもいいのではないか,とも思えて簡単には結論を出すことができません。
 こうしてみても,候補地だけでも議論は尽きないと思いますが,市は,どうして他の場所はダメで「川越駅西口市有地が最良」と結論づけたのでしょうか。また,どうして建て替えありき,なのでしょうか。まずは,そのあたりの市役所内部での議論の経過を,具体的な数値を示しながら,明らかにしてほしいと思います。
 まもなく引退する市長にとっては,何の心配もないことかもしれませんが,駅前の一等地の狭い土地に市役所を建て,駐車場を地下に持っていったりしたら,結局,その維持費=コストは,高い税金となって市民に跳ね返ってきます。
 さて,33万市民の皆さんは,どのようにお考えでしょうか。

(第28号)

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コメント

検索したらこちらを見つけました。
私は川越市の構想では便利になる”はず”の西口方面の在住者ですが、西口移転は反対です。
第一に、あの周辺の道路は駅利用者と買い物と市役所利用者の全ての需要を賄うだけの容量がないからです。
現在の市役所も、通過交通と買い物と観光客と市役所利用者の全ての需要には遠く及びませんが、今からわざわざその程度のレベルの場所に建てるのは余りにも先読みが足りません。
第二に、現在の自転車置き場の代替をどうするのか?という問題です。その問題には全く説明がないことに利用者の一人として不安を感じます。
また、付け加えて言えば本庁舎は仮にそれで良いとしても、PFIで建てられた東庁舎はどうなのでしょうか? 一定期間家賃が入ると思って庁舎を建てた企業に違約金を払う必要は生じないのでしょうか? この問題も解決しなければならないと思いますが、法律のプロ弁護士であるはずの市長はこのことについて何か説明したという話は聞いておりません。
マンションは嫌だ。市役所が来るのはよい。だけどマンションと抱き合わせは嫌だ、というレベルでしか考えられない駅前の住民の見識はともかく、また適地に関してはもしかしたら見解を異にするかもしれませんが、広田様の「移転賛成、西口反対」論には賛成であります。

投稿: 市内在住者 | 2008年3月 8日 (土) 19時49分

 市内在住者さん、当方の意見にご賛同いただきありがとうございます。
 3月4日付けの朝日新聞西埼玉版では、3日の市議会答弁で舟橋市長が、現在行われている市庁舎に関するアンケート結果で「移転に過半数の反対があれば、移転をやめる」と明言した旨の記事が掲載されていました。
 西口移転に反対の市民の皆さん。14日までに市に意見を送りましょう。市の公式ホームページでもアンケートは受付中です。
 私も忘れずに送らないと。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年3月12日 (水) 20時55分

市庁舎移転問題について、広田様の記事を拝読し大いに賛同いたしました。 私も耐震や狭隘化については何らかの対策が必要なのはよく理解できます。 しかしこの時代に簡単に建て替えと決めてしまって良いのでしょうか?まして移転する、しかも市内でも一等地の川越駅西口に...。エコや税金の無駄使いが問題になっている中であまりにも安易な計画にびっくりです。
川越には京都駅のような失敗はしてほしくない。
今も昔も政を司る今の土地で 川越らしい庁舎を建設してほしい。歴史が息づく現代の川越城を。

投稿: deny | 2008年3月14日 (金) 15時46分

既に飽和状態の現在地にこだわってどうするのでしょう。
ただでさえ来庁者が多い時期や時間帯にはなかなか駐車場にたどりつけない状態なのに。
今の場所は昭和29年までの川越町~旧川越市の規模に釣り合うキャパシティしかありません。それでもあの場所に拘泥するのは単なる面子かそれとも過ぎし日への郷愁でしょうか?
また、現在地ということであれば建て替え間の業務をどこですればいいのでしょう。
元町でも川越駅西口でもない、アクセスの便や駐車場も含めた一体のシステムとして構築できる最適地を探すべきだと思います。

投稿: 市内在住者 | 2008年4月 6日 (日) 11時16分

 市内在住者さんのコメントでは、”私が現在地にこだわっている”かのように読めてしまうのですが、私だけでしょうか。私が現在地にこだわっていないことは、当初の文章を読んでいただければ分かると思います。
 そのうえでのコメントとして、仮に「現在地で建て替え」となった場合の建て替え期間中の業務ですが、仮庁舎はどこでもいいと思いますけど(現在地建替という選択肢の大きな阻害要因にはならないということ)。
 規模は全然違いますが、西入間警察署は若葉駅前の仮庁舎で、さいたま地方法務局坂戸出張所は鶴ヶ島市にいったん仮庁舎を建て、現在地にて建て替えをしています(西入間署は実施中)。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年4月 7日 (月) 17時29分

これは失礼いたしました。私のコメントがもし管理人さんのコメントに対するものにしか読めなかったとしたら、それは私の配慮不足と言う物です。
これは主に直上にコメントされた方の「今も昔も政を司る今の土地で 川越らしい庁舎を建設してほしい。歴史が息づく現代の川越城を。」という部分に反応したものです。
読んでいて、他サイトで報じられている旧十ヶ町地区の自治会長たちの意見書に載ってそうな内容だと感じたものですから。
世襲の藩主ではなく住民が投票で市長を選び、世襲の武士でなくても受験資格のある人が試験に受かりさえすれば誰でも市職員になれるご時勢に今更「現代の川越城」でもないだろうと思うのですがいかがでしょうか。
むしろ現在地建て替えの阻害要因は敷地の狭隘さと民家と近すぎて近隣住民のプライバシーが守りにくいことと駐車場の容量過少と市内他地域からのアクセスの悪さ、の4点でしょうね。

投稿: 市内在住者 | 2008年4月 8日 (火) 02時33分

 市内在住者さんへ。それはこちらとしても読み込みが足りず失礼しました。
 denyさんのコメントにある「現代の川越城」というのは、”器”、もっといってその器のデザインや基調にある考え方のことを指しているのであって、市の統治機構のことではない、と私は理解しております。京都駅のことを例に出していることからも、そう理解して間違いないと思います。
 また、新たに「旧十ヶ町地区の自治会長たちの意見書」に触れていますが、「載ってそうな内容だと感じた」という書き方からすると、それをお読みにはなられていないようですね。私もそれを読んでいません。公表されているなら読みたいとは思います。が、読んでいないので、現時点でのコメントは不可能です。
 さらに、現在地建て替えの阻害要因として4点あげられていますが、一方で市は、「川越駅西口に新庁舎建設が最良」と結論づけているわけです。当然、こうした阻害要因を検討検証した上で結論を出したのでしょうから、その議論の経緯経過を明らかにしてほしいというのが(当初からの)私の意見です。

 建て替えか補修か、現在地か新天地か、議論をすることは大事です。しかし当ブログは、議論の場として相応しくはありません。ですので、今回のコメントに関するやりとりはこれにて仕舞いにすることでご容赦ください。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年4月 8日 (火) 10時36分

 5月20日、今年2月15日から3月14日までの期間にて実施された「川越市役所庁舎に関する市民アンケート」の集計結果が公表されました。
 同日付の朝日新聞の埼玉版にて報じられていましたし、川越市の公式HPにてダウンロードできますし、市役所で配布もされています。一度ご覧になってはいかがでしょうか。

 アンケート結果で注目すべきは、現在の市庁舎までの主な交通手段として51.5%が自家用車と回答、市庁舎を川越駅西口に移転した場合に電車を利用するかとの問いに、52.6%がしないと回答していることです。しかも、市庁舎の利用頻度として年に数回が42.6%、ほとんど訪れないが48.3%で、市民にとって市役所にふだん用はない、というのが実情でしょう。
 市民にとってその程度の利用頻度の施設を、1日19万人が乗降する川越駅前に造るメリットは、費用対効果の観点から少ないと思います。むしろ、人や車が駅前により集中し、それに伴う混乱が生じることになるのではないでしょうか。

 後日公表予定とされる報告書に記載される自由意見を読んで、また考えてみたいと思います。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年5月22日 (木) 11時18分

 5月29日の朝日新聞西埼玉版に,「住宅兼庁舎案に批判」という見出しにて,26日の市議会市庁舎建設特別委員会で,ほかの候補地の調査や住宅併設に伴う問題点の洗い出しを求める意見が続出した旨の記事が掲載されました。
 記事では他の自治体の庁舎移転例を紹介,東京都豊島区,山梨県甲府市,山口県下関市,新潟県長岡市の例を挙げ,川越市の候補地を1箇所に限定する手法を「全国的に見ても異例」と言い切っています。

 先般行われた市民アンケートでも,庁舎予定地に関する設問は「川越駅西口がよいと思いますか」だけでした。市民の意向を聴取するためのアンケートなら,こんな誘導尋問みたいな設問は避けて,「庁舎を移転するとしたらどの地域がよいと思いますか」として自由に地域を書かせるか,せいぜい数カ所を挙げて選ばせる方法でやるべきではないでしょうか。

 私は,舟橋市長の「西口ありき」の姿勢に疑問を感じています。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年5月31日 (土) 19時26分

 6/4、「えまのん」と名乗る方からのコメントがありました。
 申告されたメールアドレス宛てにメールを送りましたが、「The following addresses had permanent fatal errors」で返ってきてしまいます。従いまして、頂いたコメントは削除のうえ、公開をお断りすることといたしましたのでご了承下さい。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年6月 6日 (金) 10時33分

 6月6日の朝日新聞西埼玉版に、「川越市の舟橋功一市長は、5日の定例会見で、川越駅西口近くにある市有地への市庁舎移転構想について『市民アンケートで賛成が得られた』として、早急に基本構想を策定することを表明」した旨の記事が掲載されました。これによれば市長は、「川越駅西口の市有地以外への移転は考えていない」とのことです。

 ”しゃべるだけしゃべってまだかと思うほどよくしゃべる一方、人の話には全く耳を貸さない”
 市長に対するそんな批判を各方面から耳にしますが、そんな態度は、義理で呼ばれた会合での来賓挨拶だけに留めてほしいものです。

 同じ紙面には、埼玉県内の今年4月1日現在の保育所待機児童数が1216人いることが報じられています。うち川越市には108人もいるそうです。この状態を解消するプランを市は描いているのでしょうか。学童保育だって綱渡りの状態。ダイイチ、市庁舎が耐震上問題があるといいますが、市立小中学校や保育所の耐震化はどうなっているのでしょう。
 市庁舎の移転建設は、それよりも先にすべきことをしてから検討しても遅くないはずです。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年6月 6日 (金) 14時25分

 5/24と6/9、「川越太郎」と名乗る方から相次いでコメントがありました。
 コメントの内容に、特定の個人に関する確認できない事実の記載があったため、5/24のコメントは全部削除し、川越太郎さんにはその旨お知らせ頂いたアドレス宛にメールでご報告しました。
 6/9に再び同様の内容を含むコメントがあったため、当該部分を削除してその余の部分の公開でよいかどうか尋ねるメールを送りました。
 しかし、本日になってもお返事を頂けませんでした。そのため、頂いたコメントはすべて削除することにいたしましたのでここに告知する次第です。ご了承下さい。

投稿: 鉄まんアトム | 2008年6月20日 (金) 14時11分

お久しぶりです。
アンケート締め切り後も市のHPを定期観測していたら、報告書ができたと書かれていました。既にご存知でしょうか。
HPからはPDFファイルで読めます。また、「次の場所で報告書の閲覧および概要版の配布を行っています。 ・本庁舎4階新庁舎建設準備室、東庁舎1階情報公開窓口(閲覧のみ)、出張所、連絡所、本川越駅証明センター、公民館、図書館」
とも書かれていましたので、紙ベースでも閲覧できるようです。5/22のコメントで「後日公表予定とされる報告書に記載される自由意見を読んで、また考えてみたいと思います。」とお書きになっていましたが、ぜひお読みいただいて再度記事にしていただけたらと存じます。

投稿: 市内在住者 | 2008年8月29日 (金) 00時43分

 市内在住者さま
 ご指摘のとおり、8月25日に「報告書」(全294ページ)は市の公式HPに公開されました。同日付の広報川越にて告知されています。さっそく全部ダウンロードしましたけど、ファイルが分割されページ数も多いので、まだプリントアウトしていません。目を通せるのは少し先になりそうです。
 なお、HPの場所が分かりづらいのでリンクを張っておきます。
http://www.city.kawagoe.saitama.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1219035521751&SiteID=0000000000000&FP=whatsnew

投稿: 鉄まんアトム | 2008年8月29日 (金) 10時42分

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